広島-10. 成羽川(その6)平成25年8月15日(木)曇り一時晴れ
酷暑とお盆休みで控えていた遡行を再開する。成羽川最後の区間へのチャレンジが2回とも悪天候などのため叶わなかったが、3度目の正直が叶うものとしていつもの列車を乗り継ぎ東城駅に降りたつ。小奴可に向かう備北交通のバス停の時刻表を見ると、昨日と今日はお盆休みで運休と見にくい所にビラが貼ってある。2週間前には予告も無かったのだが、もっと早く出さんかい!二度あることは三度あり。仕方なく大枚をはたいて駅前からタクシーに乗車する。
ガラ空きの国道314号を快調に走り小奴可駅前に到着。昨日電話で予約していた道後タクシーに乗り変え道後山の麓の三坂地区には8時40分に到着。成羽川は東側の持丸川と西側の道後川が合流して成羽川となっており、どちらの川も甲乙つけがたい長さの川であるが、流域が広く名前もメジャーな道後川の方を成羽川の本流として最上流部にやって来た。広島県北東部の最高峰、道後山(H=1,271m)の南西山腹から流れ出した川の麓が今日の歩きのスタート地点である。標高700mの集落の中心の簡易郵便局の前で車を降りる。局は普通の住宅を利用した、らしからぬ佇まいである。目の前の神社は綺麗に整備され高い杉の木が誇らしげに立っている。image101.民家が郵便局を兼ねている

image202.郵便局の前は神社

標高が高いこともあり手元の温度計は22度。涼しいー。一足早い秋風とトンボの舞う道を川に向かう。最初の橋から北を望むが鳥取県境の山々は霞んでいる。直ぐの田圃の脇には早くもコスモスが咲きだし、ここは早秋の風情が漂っている。連日の猛暑から避暑気分を味わいながら川沿いの道を下流に向かう。小奴可から上流部にはバスは無く、西条駅からバスは有るが東側から来る者には利用が出来ない。

image303.朝靄のかかる高原の風景

image4 04.早くもコスモスが咲いている

高原の南側には雄大な姿をした猫山(H=1,195m)がドーンと鎮座している。北側斜面にはスキー場のゲレンデもある。尾道在住時に聞いた名前の「猫山スキー場」はここだったのだ。太田川遡行時に出会った恐羅漢山以来のスキー場である。道路を女子学生の一団が朝の散歩をしている。運動部の合宿のようで、すれ違い時にあいさつを受ける。

image505.雄大な猫山とスキー場

image6 06.太田川源流部以来のスキー場だ
酷暑の平地からこの高原に来ると別世界に来たようで、快調に田圃の間の道を進む。田植えの早い高原の稲は早くも稲穂を付け出し、頭を垂れている者もいる。
image707.稲穂も出出した高原の稲
やがて両側から山が迫り出し、渓谷の川から少し高い位置の2車線の広い道を南に向かう。東側の渓谷の彼方にはこれも姿形の良い鳶ノ巣山(H=1,143m)も望める。その更に奥には広島(備後)、岡山(備中)、鳥取(伯耆)の三国境に聳える三国山(H=1,129m)が有るが、ここからは見えない。同名の三国山はこの地区にはもう一つ有り、備後、伯耆、出雲境に有る。全国には多くの三国山が有るが至近距離に二つも有るのはここだけであろう。
やがて左側から持丸川が現れ、眼下の田圃の広がる谷間で合流している。ここから成羽川となり、旧西城町から旧東城町に入る。どちらも今は庄原市に合併されてしまった。左岸側の広い広域農道の日陰の続く道を下って行く。あばら家風のミニ小屋の前に来ると。この建物は地元漁協が運転する超ミニ発電所でビックリする。漁協ならぬギョギョである。

image8  08.ここが道後川と持丸川の合流点

image9 09.漁業組合が行っている発電所

南北に細長い渓谷を抜けると小奴可の台地状の地形と盆地が広がる。広域農道から川沿いの細い道に入る。陽が高くなり、標高も570mまで下ってきたので忘れていた暑さがカムバックする。台地の上から北側を見ると猫山が霞んで見える。更に田圃の中を進み橋に向かうと誠に日本的な景色が見える。山、森、入母屋屋根の農家、田圃そして橋と。何時までも残しておきたい風景である。

image1010.猫山を南側から見る

image11 11.山、森、家屋、田、そして橋
川沿いには道が無く大きく迂回して盆地の外れに来ると巨大な観音像が建っている。お盆で多くの車が境内を埋めている。宗派は分からないが「見性寺」の聖観音像である。本堂からは読経の声が聞こえてくる。
 image12 12.見性寺の大きな聖観音像

田圃の中を進み橋に向かうと、橋名は「宮寺橋」とある。先ほどがお寺だったのでこの先に神社が有るのだろうと進むと、ピンポーン。有りました、「奴可神社」の鳥居と立派な社殿が現れる。山間部には珍しい綺麗に整備された立派なお社である。御祭神は天照大神とある。その他多くの有名な祭神も合併されており、ご祭神のマンションである。

image1313.宮寺橋のこちらは奴可神社

image1414.社殿は立派

国道314号に合流し南に進むとJAのミニスーパが現れ、自販機も有る。時刻も程よい頃なので店先のベンチで爆弾おにぎりのお昼とする。15分ほどの休憩を摂って歩きを再開する。駅を左に見やりながら南に向かう。国道を離れ川沿いの細い道に入り、汗をかきかき渓谷を進む。芸備線の鉄橋と町道の橋を診ながら笑田地区を過ぎると道は行き止まりとなる。これから先に川沿いの道は無く、線路のみが川に沿って伸びている。線路歩きをすると数キロの歩きになり、砕石の上の歩きは足元不用意で危険なので、ここから内名駅の先まではパスすることにする。いくつかの橋は帰りの列車の運転席の横から見ることにし、小奴可駅にUターンし来た道を戻る。
 image15 15.ここから先は道がナイ!
再びJAに立ち寄り帰りの列車まで時間はたっぷりあるので、冷房の効いた店内でクールダウンを図る。程よく冷え、のども潤したところで駅に向かう。
朝、タクシーを乗り継いだ小奴可駅はタクシーの車庫と事務室が主体となり、片手間で鉄道業をやっているように見える。ここでも30分程待ち、備後落合行き列車を待つ。この列車は落合ですぐ折返し新見行きとなるので、非冷房の駅で待つよりは冷房車で行き来した方が楽なので落合行きを待つ。人を怖がらない「ハクセキレイ」がホームと待合室の間を行き来して愛嬌を振りまいてくれる。

image1616.タクシーに母屋を取られた小奴可駅

image17 17.ホームと待合室を行き来する「ハクセキレイ」

やって来た備後落合行きは鉄ちゃんで満員の盛況。まさに盆と正月が一緒にやって来たような込み具合である。全国鉄道乗りつぶし以来の芸備線の奥深くを列車は進み、至る所にある超徐行区間を15kmの速度でそろりそろりと走る。備後落合では三次行きと木次線の宍道行きが接続しており、鉄ちゃんはどっと降り、ホームを右往左往しながら写真を撮っている。向かいのホームでは色違いの木次線単行車が待っている。三次からの列車が到着するとまたまた鉄ちゃんで車内は溢れる。これでは芸備線は鉄のために存在しているような状況である。

image1818.木次線列車にお久しぶり

image19 19.前後の駅名は有名な山
10分ほどの停車で新見行きとなった列車が来た鉄路を戻る。運転席横のかぶりつきで未踏査区間の橋の状況を診るが、この区間では徐行しないので目が廻るぐらい忙しく橋を見る。新見駅で小一時間待ち岡山方面三石行きの特等席に座り帰路につく。
 本日の歩行距離:13.0km。調査した橋の数:28。
総歩行距離:6,234.4km。総調査橋数:9.927。
使用した1/25,000地形図:「道後山」(高梁14号-2)、「小奴可」(高梁15号-1)