広島―1.芦田川(その4) 平成23年7月18日(月)雨
先日と同じ時刻の電車の乗り継ぎで福塩線「新市駅」に8時に降り立つ。反対側のホームの上り電車は、通勤時間帯なので2両編成を二つ繋いだ4両編成と長い。
image1  01.4両編成の上り電車(新市駅)
天気予報では曇りであったが、福山近くから雨が降り出し日傘ならぬ雨傘を取り出して歩き始める。台風6号の接近の前触れの雨が断続的に降り、ノートへの橋の状況の記録がやりにくい。暑さも小休止で体には良いが、雨は暑さよりも歩きと調査の意欲を削ぎ、遡行本来の目的を揺るがす。
土手の上の道と河川敷内の狭い歩道を交互に歩く。旧新市町から府中市に入り、ここにも沈下橋がある。福山、新市、府中と芦田川の中流域の神辺平野には合計6つのそれぞれ長い沈下橋がある。沈下橋と云えば「四万十川」が有名であるが、ここ芦田川も有名になってもおかしくはない。中流域の道路は、土手上の道も含め東西方向が主で南北は従になっているので、このような幅の狭い線形の悪い沈下橋が多く残っているのだろう。
西方向の500m級の山が近づき、平野(盆地)が徐々に狭まり、山間部の入口が府中である。府中はかつての国府の所在地を言い全国各地にあるが、市ではここ備後の府中とかつて住んでいた武蔵の府中、町では安芸府中がある。JRの駅名では、ここが正真正銘の「府中」。武蔵は町の中心から外れているのに「府中本町」。京王線が「府中」。安芸の方はぐるりとまわりを広島市に囲まれ、ローマに囲まれたヴァチカン市国のような町で、駅名は「向洋」。
日本二大家具製造地は福岡県の大川市とここ府中市である。電動工具の「リョービ」、工作機械で有名な「北川鉄工所」、洋服の「青山」はここ府中が発祥の地であるが、福山に日本鋼管の製鉄所が出来てからは、ややネームバリュームが落ちてしまったようだ。福塩線が中国地方で最初に電化されたのも、この町が実力があったからだろう。
雨が止みそうもなく、府中駅が近い所にきたので今日はここまでとする。土手下に先日駅前で見たマンホールとはデザインの異なる、一応絵になる蓋を見つけ写真に撮る。特徴の無い絵であるが幾何模様よりはマシである。
image2  02.府中市マンホール
駅裏に「天満屋」があったので時間調整も兼ねて入るが、デパートではなく、専門店とスーパーの混在する店であった。名産の府中味噌と世羅梨のジャムを買って駅に向かう。
今日の歩行距離:6.6km。調査した橋の数:6。
累計歩行距離:229.6km。累計調査橋数:222。
使用した1/25,000地形図:「新市」(岡山及丸亀9号-4)、「府中」(岡山及丸亀13号-2)
広島―1.芦田川(その5) 平成23年7月21日(木)曇り
台風6号は、四国の玄関先でお前のくる時期じゃないと追い払われ、すごすごと退散した後で今日は曇天で涼しい。先日の中途半端な距離で終えた分を取り返すべく府中駅を出発。これより中下流部から上流部に入り、周りの景色は一変する。土手は姿を消し、川は谷間をS字状に大きく屈曲して流れている。国道486号(旧山陽道)は川の左岸側を、福塩線は右岸側を狭い谷間を仲良く分け合っている。
image3  01.府中から景色は一変、山間部へ

国道側では高い所から生じたがけ崩れの復旧工事が行われおり、わずかな距離での地形の急変を実感する。早くも吊橋が現れ、こんな市街地に近い所に最上流部にあるような吊橋がある。

image4 02.がけ崩れの復旧工事

image5 03.早くも吊橋が出現
二番目の大きな支流「御調川」が合流する地点で本流は南から東へ、更に北へと方向を変え流れる。国道は御調川に沿って西進し、これからしばらくは県道24号が左岸側を占める。御調川はこの辺りの郡名を冠し、日本史で習った「租庸調」が思い浮かばれる名前である。河原にはこの川のキャラクター「オオムラサキ蝶」の看板が見えるが、キロポストは山間部に入ってからは見当たらない。この先の八田原ダムまでが国の管理区間であるが、土手が無くなるとポストも無くなってしまった。早くも発電所が現れ、下流からいきなり上流にワープした感じである。
image6   04.芦田川のキャラクターはオオムラサキ蝶

image7 05.府中発電所

狭い谷間の県道に歩道を造るスペースがないからなのか、草が茂った道の端をひやひやしながら歩いていると、道沿いにキキョウの花が咲き誇り、ホットする。

image8 06.道沿いのキキョウ
道沿いにあった府中漁協の鮎の入漁案内が目についていたが、橋の下で投網を使って鮎を採っているお兄さんを見つける。夏の風物詩がここにもあった。今日の夕飯は鮎があれば塩焼きにしよう。
image9  07.投網で鮎を(橋上から)
谷がやや開けた所で福塩線は3度川を渡る。第4、第5、第6芦田川橋梁と続くが、府中を出て直ぐ渡る橋が第1であったので、第2と第3は何処に行ってしまったのかだろうか?かつて第1と第4の間で2度渡河していたのが、洪水で橋が流され線路変更して今の状態になったのではないかと推測する。第6に丁度数少ない列車が差し掛かかってきたので写真に収める。
image10  08.数少ない列車に遭遇
4時間半ほど歩いて限の良い河佐駅に到着する。久しぶりのおにぎりを食べているとほどなく12時57分発の府中行きが到着し乗り込む。府中、福山と乗り継ぎ帰路についたが、福山駅で山陽線を待っていると、福塩線ホームに珍しい軌道検査車の「キヤ141系」が入線してきた。この軌道検査車は軌道の狂い、ゲージ幅や信号、通信の状況の観測を、走行しながら行う気動車でどこにでも入線可能な車両である。
image11  09.珍しいキヤ141系
 今日の歩行距離:15.5km。調査した橋の数:27。
累計歩行距離:245.1km。累計調査橋数:249。
使用した1/25,000地形図:「府中」(岡山及丸亀9号-4)、「木野山」(岡山及丸亀13号-1)