愛媛1-3. 河辺川(その1)平成25年4月15日(月)晴れ

 

愛媛の川歩きを再開する。いつもより1本遅い特急しおかぜに乗っていると、伊予西条駅の手前で春にもかかわらず石鎚山がはっきりと見える。冬の空気の澄んでいる時でもなかなかその姿を見せてくれない特徴のある山容が車窓から見える。

 

 01.今日は石鎚山が良く見える

 

今日は肱川の三番目の支流として「河辺川」を目指し伊予大洲で下車。本流遡行時にたどった鹿野川まで宇和島バスに駅前から乗車。懐かしい川沿いの国道197号を進み、本流と河辺川が合流する鹿野川バス停で下車。数分でやってくるはずの大洲市営バスがなかなかやって来ずやきもきしていると7分遅れで到着。ここの市営コミバスも目立たないワゴン車で見過ごしてしまいそうになる。宇和島バスもこの市営バスも1日4便しかなく、歩く距離と宿の位置を考え今日は最上流部までバスの乗継で先行することにした。

 

 02.7分遅れで大洲市営バスがやって来た

 

旧肱川町から旧河辺村に入り、河辺支所前が終点。支所の近くには診療所、派出所、郵便局、農協、雑貨店が有り、ここが村の繁華街である。支所前には河辺村内を走るやや大きい市営バスが待っている。車体の後ろ側面には「無償 河辺」と大きく描かれている。この旧村営バスは何所まで乗っても無料なのだ。これまでも2回無料バスに乗ったが、車体にはっきりと無償と描かれたバスは初である。こんな山奥に来る外部の利用者は少なく、お金をとってもしれた額なのでお金の管理の面倒を避けて無料にしたのであろう。有り難く乗車する。村民にとってはお抱え運転手付きのマイカーのような存在である。

 

 03.河辺支所前に並ぶ市営バス2台

 04.旧河辺村内のバスは無償

 

乗客は自分を含め2名で発車。お婆さんは知人の家の前で降り、「帰りのバスに乗るので着いたら知らせてヨ」と言って下車。バスは川に沿った県道55号を登って行く。25分ほどで今宵の宿の入口の橋際で止めてくれ下車。市営バスでもこのバスでも珍しい外部モンなので運転手が話しかけてくれ、遡行の話をする。今日はバスを3台乗り継ぐ大旅行であった。未だ3時であるが少し上流部を調べ直ぐに民宿に向かう。入口の橋のコンクリート製の高欄には苔がぎっしりと付いている。鋼製の橋げたは山奥の橋にしては珍しく塗替え塗装が最近されたようでピッカピカである。うーんこの村はやるな!

 

 05.今宵の宿は民宿「あまごの里」

 06.高欄には苔が一面に

 

この民宿は川魚を養殖しており、イワナ、ニジマス、アマゴの3種類を池で育てている。大きな水槽には大型の岩魚と虹鱒が、小さい方にはアマゴが入っている。宿の庭には真っ白な桜が咲き、のんびりとした気分にさせてくれる。

 

 07.養殖池には虹鱒、岩魚が

 08.真っ白な桜が咲いている

 

今宵の料理はさしみ、焼き、フライ、甘露煮とこの川魚のフルコースである。これで5,500円はお値打ちである。宿で知ったがこの河辺村は坂本竜馬の脱藩の道が通り、いまどき珍しい木製屋根付き橋が8橋も有る所である。明日の歩きが楽しみである。

本日の歩行距離:0.5km。調査した橋の数:2。

総歩行距離:5,814.5km。総調査橋数:9,372。

 

愛媛1-3. 河辺川(その2)平成25年4月16日(火)快晴

 

帰りのバスのダイヤの関係で今朝はゆっくりとし、8時半に宿を出る。御主人と竜馬の脱藩の道と屋根付き橋のことを教えてもらう。昨日バスで上がってきた県道55号を歩き20km先の合流点を目指す。標高460mの一ノ瀬の早朝の気温は3度、天気予報の大洲の最高気温は25度。なんと温度差は22度もある。気温上昇を見込み薄着でやって来たが朝は寒い。

500mも来ると最初の屋根付き木橋が神社の入口に架かっている。橋際の解説板によるとこの橋は明治19年に架けられたようで100年以上も持っている。屋根の役割は、神社の神様が通る橋であること、木製の橋本体を風雨から守ることとある。この村には8つの屋根付き橋があるが、この御幸の橋が最も古く、本体も木製で最も値打ちがある。屋根は何度も架け替えられているように見える。河辺川には6つの屋根付き橋が有るが、屋根だけが木製になっている橋も有るようだ。

 

 01.屋根付き橋の最初は明治19年生まれの御幸の橋

 02.天神社の参道に架かる信仰の橋

 03.橋の入口には解説板が

 

土佐藩を抜けだした坂本竜馬は裏道を通り抜け、伊予のこの神社の前から今の県道55号を通って行った。神社はうらびれた感じの神秘的な雰囲気が漂っている。境内の傍らには早くも石楠花が見事な花を咲かせている。

 

 04.竜馬はこの神社の前を通って脱藩して行った

 05.神社には石楠花が満開

 

直ぐの県道56号が分かれる三叉路に来ると、傍らに竜馬脱藩の道の案内板が建っている。川沿いは目立つため敢えて山の尾根沿いに歩いて瀬戸内の長浜を目指して行った。

川に架かる槌橋の橋名板を探すと手摺のわずかな狭い所に張り付いている。なんとか橋名を残す努力を感じさせる橋である。対岸には牡丹桜が一列に並んで咲いている。

 

 06.県道55号から56号を竜馬は進んだ

 07.小さな橋名板と牡丹桜

 

二番目の屋根付き木橋は帯江橋で、両岸から斜めに突き出た太い柱に屋根の梁が載った構造である。屋根は最近架け替えられたようで新しい。マディソン郡の橋が放映されてから今まで見向きもされなかった屋根付き橋も脚光を浴びるようになった。今や浪漫八橋として観光にも利用されている。神社前以外の橋は農産物の仮置き場、休憩所、コミュニケーションの場などに利用されている。

 

 08.帯江橋は方杖付きの木橋

 09.屋根は木橋を長持ちさせることが第一の目的

 

段々暑くなりセーターを脱ぎ県道を歩く。先ほど登って行った無償バスが折返し下って来て停車し「乗りませんか?」と声を掛けてくれる。有り難くノーサンキュウと言う。

三嶋地区まで下ると三番目の橋「三嶋橋」が現れる。今度は両岸から迫り出した柱の上に橋本体の梁が乗っかっている。分類は方杖付桁橋というところかな。更に下ると今度はPC桁の上に桧製の屋根、高欄と茅と杉皮で葺かれた屋根が載った贅沢な橋が見える。新旧混淆の橋である。橋の周りはふれあい公園として整備され、廃校になった小学校の校舎を改築した宿泊施設もある。2名以上なら1泊1名3千円!交通不便な地であるが河辺村は精一杯の努力をしている。屋根付き橋巡りと脱藩の道のハイキングは如何かな。

 

 10.三嶋橋は方杖の上に乗っかっている

 11.ふれあい橋はPC桁の上に木の屋根が載っている

 

施設の入口の横に架かる橋際に大きな3名の人物の像が建っている。真ん中が竜馬で左は同志の沢村惣之丞、右は道案内の那須俊平の像で三人合わせて飛翔の像となっている。川向こうには「脱藩之日記念館」が大洲市街の倉と同じ色の壁で佇んでいる。中に入り暫し見学し、大志を抱き決死の脱藩の旅を思いやる。

 

 13.脱藩3名の像

 14.脱藩記念館も有るぜよ

 

脱藩記念館の見学をさっと済ませ歩きを再開する。今度は長いスパンの屋根付き橋の龍王橋が現れる。宿でもらったパンフでは木橋と書かれているが、このスパンでは木は無理でPC桁の横を木で覆った木橋を装った橋であろう。この橋も龍王神社への参拝路に在るが、平成9年に復元された新橋で屋根の下のベンチに丁度傍の畑の耕作者が座って一休みしていた。全国の川にこのような屋根付きベンチ付きの橋が在れば、昼の食事や休憩に大助かりなのであるがナー。川向こうの沢にも神社に通じるミニ屋根付き橋が見える。

 

 01.龍王橋もPC桁の上に屋根が

 02.橋際の解説板

 03.直ぐ奥の沢には屋根付きの秋滝橋も

 

広くはなく狭くもない谷には民家が点在しており、県道も過半が2車線ありまずまずの村の状況である。

県道に大きな看板が有るので見ると飛石橋の解説が有る。やや下流を見下ろすと大きな石が川に並べられ対岸に渡れるようになっている。これも橋と言うのか難しいところである。

 

 04.飛石橋は名前の通り、これを橋と言うのか?

暑さが増しシャツの袖をまくり半袖にしても暑い。植松地区に来ると狭い敷地に3階建ての河辺小学校が建っている。校庭が狭いので屋内運動場も有る。校庭では10名の児童が体育の授業中であった。

 

 05.河辺小の狭い運動場で授業中

 

昨日バスを乗り継いだ支所に入りトイレ休憩と観光パンフの収集をする。直ぐ西の県道に面した大きな雑貨店に入りおにぎりと100円の惣菜とペット茶を購入する。締めて420円なり。店の奥に行くとなんと卒塔婆を売っている。珍しいのでカシャ。今は用が無いので見るだけに留める。

店の前の診療所のベンチに座り昼を摂る。雑貨店の軒下には多くのツバメが巣を作り、元気に飛び回っている。ツバメがやって来たのだ。近くの旅籠の名前が「鷹の家」とあったので近づくと鷹の字にイが抜けている。字画が多いので省略したのかな。

 

 06.雑貨店ではなんと卒塔婆を販売

 07.旅籠の名前の鷹の字がおかしい

 

直ぐに旧河辺村と肱川町との境界の旧道の橋を渡る。川は大きく吹き出物のように湾曲している。その突出部の上にお寺と神社が鎮座している。本流にも鳥首なる湾曲部が有った。

 

 08.この橋のこちらは旧肱川町、あちらは河辺村

 

肱川町に入ると谷は狭まり道路も1車線となる。この山鳥坂(やまとさか)地区にはダムの計画が有り、ダム建設をするのかしないのかが決まらず、県道の改良もダムの決定待ちの状態と昨日の運転手さんが言っていたのを思い出す。

道の傍に清楚な綺麗な花が競って咲いている。帰宅して調べるとシャガの名のようで、白地に黄色と紫色の入った可愛い花である。山の中腹にある集落に登る道の分岐路には大きな神楽の案内看板が見える。四国にも神楽が有るのだ。

 

 09.シャガの花の群落

 10.凛とした清楚な佇まいの花

 11.山鳥坂地区は神楽の里

 

肱川町の中心である鹿野川地区に来ると道路沿いの民家に大きな房がいくつも垂れ下がった藤が出迎えてくれる。50cmは在りそうな長い房である。今日は珍しい花に出会えてラッキー。

 

 12.立派な藤も重たそうな花が

 

昨日バスを乗り継いだ鹿野川を通過し国道197号の道の駅に向かう。先日の本流遡行時にもバス待ちをした道の駅で小一時間を過ごし、同じダイヤのバスで大洲駅に向かう。運転手さんは昨日と同じ人であった。

本日の歩行距離:20.4km。調査した橋の数:27。

総歩行距離:5,834.9km。総調査橋数:9,399。

使用した1/25,000地形図:「伊予小田」(松山3号-4)、「惣川」(松山4号-3)、「鹿野川」(松山8号-1)