徳島4-5.坂州木頭川(その1平成26年11月27日(木)晴

 

久しぶり瀬戸大橋を通過し阿波に向かう。岡山、高松、徳島、阿波川口と列車とバスを乗り継ぎ、春森上バス停で徳島南部バスを降り、直ぐ前で待っていた那賀町営バスに乗り換える。直ぐに南部バスに続いて町営バスも発車する。このバスは通常は四季美谷温泉行きであるが、予め予約申し込みをしておくと更に奥の岩倉まで乗車できる。1区間のみ両方のバスは重複しているが、分かれ道の出合にはバスがUターンし待機する場所が無いので、広場のある春森上が町営バスのターミナルとなっている。既に乗車していた1名が直ぐに下車し、ここから先は貸切運行となる。

 

 01.徳島南部バスから那賀町営バスに乗り換え

 

13時30分終点の岩倉に到着。家を6時20分に出てから7時間10分の長旅である。ここまでJRの運賃、料金がジパング利用で2,810円。徳島からの2度の乗継のバス賃が2,970円。鉄道はやっぱり安い。

渓谷の底から150m以上も上がった山の中腹の僅かな緩い土地に20軒余りの集落が固まっている。それにしてもこんな所にまでバスが有るのには驚かされる。早くも山影に覆われそうになっている集落の北側には青空に天神丸(H=1,631m)なる山が聳えている。阿波の主峰「剣山」から東に延びる1,500m級の山々の内に1座である。

目を東に転ずればこれから歩く「坂州木頭川」の渓谷が望まれる。この川は那賀川の最大の支流で、剣山の南面から東に流れる延長33km余りの清流である。剣山からは多くの川が四方に流れ出しており、西には祖谷川が、北には貞光川が、北東には穴吹川が、南には剣山の直ぐ南に連なる「次郎ぎゅう」から那賀川が、そして東にはこの川と四方八方に流れている。

 

 02.終点岩倉に到着

 03.標高820mの岩倉からは天神丸(右、H=1,631m)が見える

 04.ここから渓谷を東に

 

つづら折れの旧木沢村の村道を下ってくると三叉路にさしかかり、左からはスーパー林道が、右からは県道295号がやって来る。ここが県道の終点である。渓谷沿いの県道を東に向かう。今回は起終点の標高差が大きいので上流部から下るルートとした。(あんまりやると遡行記になれへんやないか。)

 05.県道295号、スーパー林道、村道の三叉路

 

南北の1,500m級の山々に挟まれた渓谷は深い。1車線の狭い道を通る車は少なく、夕方の4時半までの3時間に出会った車は10台そこそこである。

右岸側から左岸に渡る橋を越え数軒の民家が残る日浦集落を過ぎると再び家1軒も無い渓谷となる。大きな沢の彼方には平家平なる山(H=1,603m)が夕陽を浴びている。いかにも平家の落人が住み着いたような雰囲気の地域である。

 06.南には平家平(H=1,603m)が顔を出す

 

北からの川が合流する地点の川成集落も半分以上の家は無人状態である。ここからまた3kmほどは無人地帯となる。大きな堰の向こうの山は山面の杉が見事に伐採されている。川沿いの比較的緩い傾斜の木は伐採後の運搬が他に較べ楽なのかも知れない。狭い谷間は短い時間だけ陽が当たり、今は渓谷だけでなく山も高い山の日陰となっている。

 

 07.見事に伐採された山と堰

 08.早くも陽が陰りだした

 

今宵の宿の近くまで来ると県道の直ぐ近くに滝があるので横に入ると、水量は少ないが迫り出した大きな岩の上から水が滝つぼに落下している。新居田の滝でなかなか珍しい姿の滝である。旧木沢村の観光案内地図にはこの滝の説明が書かれている。

 

 09.新居田の滝は迫り出した岩から

 10.旧木沢村観光地図と滝の解説

 

県道に戻ると直ぐに対岸に今宵の宿の四季美谷温泉が現れる。廻りには建物の無い1軒宿で日帰り入浴施設も併設している。温泉の前の県道には四万十川で見られた木製の防護柵がここにも設置されている。この温泉が有るのがこの川の遡行のキーポイントであった。

 

 11.今宵の宿は四季美谷温泉

 12.木製防護柵の対岸に温泉宿

 

今日の歩行距離:11.2km。調査した橋の数:2。

総歩行距離:7,662.3km。総調査橋数:11,241。

使用した1/25,000地形図:「谷口」(剣山13号-2)

 

 

徳島4-5.坂州木頭川(その2)平成2年11月28日(金)晴のち曇り

 

帰りのバスの時刻から逆算して今朝は朝風呂にも入りゆっくりと過ごす。15名ほどの宿泊客で満室になるミニ宿である。一度申し込んで満室だったので延期した宿と遡行である。

9時前に宿を出て渓谷を東に向かう。県道の川側には名残りの紅葉の一群とその中に記念植樹の記念碑が建っている。中国の内モンゴルからやって来た教師の記念植樹で、柱にはモンゴル語らしき文字が書かれている。

 01.中国からの研修教師の記念植樹が

 

県道は川から20mほどの高さを保っている。渓谷の所々には赤と黄の落葉樹の紅葉が見うけられる。小さな沢に新形式の砂防施設が完成している。沢の両側岩盤の上にコンクリートアンカーを造り、その間にワイヤーを多く張り渡し、ワイヤーの間に鋼材を配置した構造である。不安定な沢の底に力を伝えるのでは無く、左右両端のアンカーに伝える面白い発想である。これを90度前に回転させれば山の吊橋である。

 

 02.紅葉の終わりの渓谷

 03.吊橋形式の砂防施設

 

直ぐ近くの対岸(南側)の沢は今年の11号台風の大雨で沢崩れが生じたままの姿をさらしている。巨大な岩が2個転がっている。降り始めからの雨量が1,000mm近くも降ったのだからたまらん!広島では山裾の多くの小さな沢に面した住宅が沢崩れに遭遇し多くの犠牲者が出た。

 04.右岸には台風11号の爪痕

 

川との距離が縮まった所の浅い淵の対岸は岩が川に迫り出し、川に覆いかぶさったような姿である。あの奥には水神さんか龍が潜んでいそうな雰囲気である。

 05.川に迫り出した岩の下には龍が?

 

やがて北からの流れ「沢谷川」との合流部に近づく。対岸から大岩が迫り出し川幅は極端に狭くなる。ここで坂州木頭川は沢谷川に方向を合わせ、東から南に流れの方向を変える。沢谷川に沿ってきた国道193号に県道は合流する。前回の海部川遡行時に歩いたあの国道193号である。三叉路の北側には多くの案内標識、電光掲示装置、看板が並び、これでは一時停止して見ないと判別は不可能である。よくぞこれだけ並べたものである。

 

 06.沢谷川との合流点の直前

 07.三叉路は標識類のオンパレード

 

三叉路から国道を北側に少し入った所に「大轟の滝」が有るようなので国道に寄り道をする。急坂を少し登ると直ぐに滝が現れる。階段状に落ちて来た水が最後に左右に分かれて滝となっている。今日は水量が少なく大轟では無い。それにしても国道の直ぐ眼前にこれだけの優美な滝が見える所も珍しい。

 

 08.国道から大轟の滝が見える

 

遊歩道が有るようなので狭く急な道に入る。普段の遡行では歩かない急坂の足元が不安定な道をゆっくりと登る。50mほど登った所で登りを諦め元来た道を国道に戻る。国道はつづら折れの急坂で一気に200mほど上がって行く。この先3kmほどには案内標識にも有った「大釜の滝」が有るのであるが歩きではむりなので川を下って行く。国道の滝を見る地点の防護柵はあの木製柵で滝との釣り合いがグー。

 

 09.風歩道が渓谷の奥に

 10.遊歩道から下を見る

 11.ここにも木製防護柵が

 

県道295号から国道193号に変わり、道と川は東から南に方向を変える。200mほど進むと道路の川側に真新しいトイレがこちらを招く。中に入ると何とウオシュレットトイレである。日本が誇る最新トイレがこの山奥にも有るのだ!徳島弁で「有るで無いでがダー」。南に下って振りかえって見ればトイレは絶壁の上に在る。これぞ厠である。

 

 12.立派な新しいトイレが有るでないでがダー

 13.トイレは絶壁の上に

 

道が90度左に曲がって行くと、東の彼方に山頂部が尖った山が現れる。左側の北側には西三子山(H=1,349m)の山稜も顔を出してくる。ここは渓谷だけでなく山々も特異な姿を見せてくれる。

 

 14.東には阿波の槍ヶ岳が

 15.川の北側には西三子山(H=1,349m)の姿が

 

名古ノ瀬地区に入り橋に向かうと、塗替えの終わったピカピカの橋の彼方に西三子山がどっしりとした姿で鎮座まします。槍ヶ岳も眼前に迫り、槍の形が優しくなった。頂上には黒滝寺が有るのが地形図で分かる。ギリシャの岩山の修道院が連想され、修行には山の上が浮世を離れ良いのだろう。

 

 16.ピカピカの橋の彼方には西三子山

 17.山頂には黒滝山が有るが聳える

 

やがて地形図には載っていない長いトンネルの入り口が口を開けている。延長1,200m以上のトンネルで、峠でも無い川沿いのトンネルとしては異常な長さである。歩道は無く車道から一段高い狭い側溝の上を歩く。照明の届かない暗い足元を確認しながらそろりそろりと進む。歩行者だけの照明がほしいものである。トンネルを出て北側を振り返ると未だ通行可能な旧道が打ち捨てられている。あの先の短いトンネルに何か異常が有ったのかも知れない。

 

 18.旧道を打っ棄って長いトンネルで短絡

 

どんどん南に進み右岸から左岸に移ると坂州地区となる。川名の元になった地区で元木沢村の役場の有った所である。左岸側には平地も広がりようやくまとまった集落が現れる。昨日バスから見て目星をつけておいた食堂に入り親子丼を食す。遡行で真面な温かい食事は珍しい。直ぐ隣はこんな辺鄙な所では初めて見るコンビニである。元役場を改造し、JAと山崎が運営を始めたコンビニである。立ち寄り売り上げに協力して行く。

 19.旧役場はコンビニに大変身

 

対岸に渡る坂州橋は塗替え作業の真っ最中で、この橋も社会資本整備交付金で再生中である。

橋際には平成23年に国の天然記念物として指定された「坂州不整合」なる物の解説板が立っている。難しい解説が書かれているが肝心の不整合なる物がどういう物なのかさっぱり分からない。

 

 

 20.交付金による橋の塗替え工事が

 21.不整合とは何ぞなもし?

 

木頭地区に入ると那賀町木沢支所の新しい建物が斬新なスタイルを見せている。この木頭も川名の元になった地区名である。本流の上流部は元木頭村で、ここは木沢村であり地区名と村名が入り混じりややこしい。

 22.真っ新な木沢支所

 

再び平地の無い渓谷となり吊橋の向こうに発電所が見える。砂利の広がる間を川は流れ、流れの真ん中に在る岩が面白い役割をしているのを見つけ暫し流れを見る。

 

 23.吊橋の向こうに発電所が

 24.この岩の役割が面白い

 

道は少しずつ東に方向を変え、大きく曲がる角に十二社神社が道路沿いに展開する。境内には多くのミニ社が有りそうで12有るのだろうか?

 25.十二社神社には多くの社が

 

やがて河原に下流の長安口ダム湖に溜まった土砂を仮置きするスペースが広がり、ひっきりなしにダンプカーが往来する。交通量の9割はダンプカーで、少ない車に慣れてきた当方には困惑の道である。

本流との合流点が近づき、ダム湖となった広い水面が広がる。本流遡行時に通った狭い出合橋とその先のトンネルは交通のネックとなっているので、新しい橋とそのアプローチ部の工事が始まり、やがて大きなニールセンローゼ橋がこの湖面に現れる。

 

 26.那賀川と坂州木頭川の出合い

 27.新出合橋は間もなく上部工に取り掛かる

 

出合橋際のバス停で南部バスを待つこと10分で徳島行き連絡の川口行きがやって来て帰路につく。今日はきつい坂道の上り降りで普段使わない筋肉が悲鳴を上げている。

これで徳島の遡行は完了としたいのだが、県南端の海陽町に野根川がある。延長28キロの川の上流部15kmは徳島県を流れているが、下流部は高知県の東陽町を流れ、この川の扱いが悩ましい。県境を変な所に引くなー!

本日の歩行距離:13.8km。調査した橋の数:8。

総歩行距離:7,676.1km。総調査橋数:11,249。

使用した1/25,000地形図:「雲早山」(剣山9号-4)、「長安口貯水池」(剣山10号-3)