徳島4-4.古屋谷川 平成26年10月23日(木)晴れ

 

愛媛の遡行を終え半年ぶりに阿波に向かう。岡山、高松、徳島、阿波川口と列車とバスを乗り継ぎ家を出てから6時間弱、ようやく古屋谷川が那賀川本流に合流する近くの小浜バス停に12時10分到着。今日は阿波最長の川、那賀川の4番目の支流を歩くことにした。小浜はかつての上那賀町の役場の有った所で、病院、郵便局、交番、中学校が谷間の狭い平地に寄り添っている。

バス停前のタクシーに乗るつもりでガレージに行くと、車はあるが応答が無い。国道の前の食堂の方に呼び出してもらうが、何処かに出かけたようで電話にも出ない。予定ではここからタクシーで今日の最上流部まで行き、そこから下ってくるつもりであったが設計変更し歩くことにする。国道195号を上流側に向かう。これから向かう古屋谷川沿いの県道36号の入口手前に「36号全面通行止」の道路情報が出ている。何処が通行できないのか分からないので、国道からの分かれ道の直ぐの小浜大橋に向かう。

 

 01.嫌な表示が出ているぞ

 02.県道36号の小浜大橋を渡る

 

小浜大橋を渡り対岸を西に進むと、直ぐに通行止め箇所隣りゲートで車は入れないようになっている。歩行可能なようなので防災工事中の現場を通り過ぎる。眼前の北側には迂回路となっている町道の吊橋とその奥に長安口ダムが見える。南からの古屋谷川が合流する地点で道に南に方向を変える。狭く深い渓谷が延々と続いている。同じ渓谷でも岡山の旭川などの渓谷は十両クラスで、ここは幕内級である。

 

 

 03.古屋谷川の合流点の奥に吊橋と長安口ダムが

 04.深い渓谷を古屋谷川は流れる

 

県道は直ぐに東側の右岸から西側に渡り、こちらの橋際にもゲートが設けられている。どうやらこの先は大丈夫なようである。深く狭い渓谷に吊橋が架かり、これぞ山の吊橋で良く似合っている。

川名になっている「古屋」地区に入る。バス停には1日1往復の時刻表が有るが、朝に下り夕に登る1便だけでこれでは当方には無いに等しくタクシーを計画した。

 

 05.渓谷では吊橋が当たり前

 06.バスは通っているがこれでは・・・

 

渓谷が続くこの谷間に人家はまれで、これではバスも入っては来ない。幾分緩やかな谷間となり県道は屈曲する川を3回渡り、再び右岸を南に向かう。少し開けた平地に遠くからも良く見える見事な樹形の樹が枝を広げている。渓谷のその他大勢の木々の中にその姿は主役である。

 07.樹形の見事な樹が有るでない!

 

深森地区に入るとまとまった集落が現れ、対岸に渡る橋もある。県道と川との間の狭い空間に集会所とお堂が建っている。お堂には急な石段があるがお参りは県道でするのが安全なようだ。

 08.窮屈な所にお堂が

 

古屋を過ぎると道は一段と狭くなり、行きかう車も無い。この先は人家もまれで県道は隣町の日和佐町まで曲がりくねった峠を越えて通じているが、ここを通る車は工事関係の車だけのようだ。

道を進むと大きな堰が現れ、西側に大きなトンネルが口を開けて川の水を飲みこんでいる。ここから長いトンネルで本流の長安口貯水池に水を廻しているのである。6万2千キロワットの発電のための応援水である。

9km弱歩き最後の集落のある「川俣」に到着する。ここは東からと西からとほぼ同じ長さの川が顔を合わせ合体して北に流れを変える地点で、まさに川俣である。ここからは何も無いので引き返すことにして、今宵の宿の近くにタクシーに迎えを頼む電話をする。今稼働中で45分ほどしたらこちらに迎えるとのことなので、ここで待っていてもしようが無いので来た道を戻ることにする。

 

 

 09.堰から長いトンネルで長安口貯水池に送られる

 10.川俣で東西からの流れが一つに

 

深森を過ぎたあたりで件のタクシーが登ってきて乗車する。車の中で遡行のこと、那賀川のこと、徳島の橋のことなどを話しながら国道を下って紅葉川温泉に向かう。本来なら5千円はかかる乗車距離であるが、45分ほど待たせたとのことで2千円でOKとのこと。助かるー。これまで2回宿泊した勝手知った道の駅併設の宿に入る。

本日の歩行距離:12.3km。調査した橋の数:7。

総歩行距離:7,549.4km。総調査橋数:11,214。

使用した1/25,000地形図:「長安口貯水池」(剣山10号-3)

 

 

徳島4-6.海川谷川 平成26年10月24日(金)快晴

 

今日は昨日以上の上々の天気。昨日の古屋谷川よりも更に本流の上流部で南から合流する海川谷川を目指す。こちらは海川地区の谷間を流れ下る川で奇妙な名前の川となっている。

8時17分、川口からのバスに乗り貸切状態で何度も通った国道を上流に向かう。長安口貯水池が尽きると更に上流の小見野々ダム池となる。この二つの池を利用して揚水発電が行われている。治水、利水、水力発電と那賀川は有効に利用されている。

ダム湖半ばの海川口でバスを降りる。本流遡行時に診た海川口橋を渡り海川谷川遡行を始める。一昨日までまとまった雨が降ったのでダム池は少し土砂が混じった乳青緑色をし、じっと見ていると妖しい感じが起ってくる不思議な色である。

 

 01.ダム湖に架かる海川口橋を渡る

02.土砂が混じり妖しい色に

 

ここからは県道296号となり行き交う車は殆ど無い。上流の海川地区にはこの山奥にしては珍しいまとまった集落があり、川口から上流部に向かうバスの一部は、本流から一旦離れて海川経由になっている。直ぐにダム池に架かる吊橋が現れるが、利用者がいないためか落橋寸前の荒廃した姿をしている。雑草に囲まれた橋の向こうには物の怪が居そうな雰囲気である。

 03.この先には物の怪が居そう

 

ダム池が尽きると広めの河原を清流が蛇行して流れている。満水状態になれば池になる高さなのだろう。中洲には鹿か猪なのか分からないが足跡がはっきりと残っている。

 

 04.広い河原の有る渓谷だ

 05.動物の足跡が残っている

 

紅葉のハシリのうっすらと色づいた木々の渓谷の白砂の中を水は滑らかに流れている。

 06.清らかな流れが続く

何度か蛇行した道を進むと渓谷から盆地となる。河岸段丘には今が旬の柚子が秋の陽を浴びて鮮やかな黄色に輝いている。鈴なりの柚子である。この辺りからの上流と高知県東部の山間部は柚子の最大の生産地である。寒暖の差が大きく日当たりのよい所が柚子の栽培に適しているようだ。今年は大雨の影響か小振りの柚子である。

 07.鈴なりの柚子が光を受けて輝く

 

海川地区の集落に入り、小高いところの集落の中心に向かう。今日はお昼の食べ物が無いので商店を探していると、バス停の前に万屋があり、80才以上のお婆さんが店番をしており、昼向きの食べ物が無いが長持ちのするパンが一つ有ったので購入し歩きを継続する。

 08.この店で長期保存パン1個を買う

 

海川で東側から国道193号が峠を越えて県道と合流し、ここからは国道を西に進む。改良された国道の歩道を歩くと一旦渓谷が狭まったが直ぐに河川段丘の上にやって来る。1日2往復のここを起終点とする上海川である。海川には、「海川」、「海川下」、「海川上」、「上海川」、「海川口」と数多くのバス停が在る。まるで旧浦和市内のJR駅のようである。徳島、高知の川沿いのバス停は、下流側から上流に向かって地名の下に下、中、上を付けている。

国道から段丘の下に有る橋に向かい、調査後再び国道に戻る。ここまで旧:上那賀町道の橋の塗装状態が他に較べ断トツに良い理由が分かった。電源立地の交付金を使用していたのだ。

 

 09.上那賀町の橋の良い状態はこれだった

 

上海川から国道は極端に狭い1車線の道となる。これから先20数キロに人家は無い渓谷と峠越えの隘路となる。これでも100番台の国道である。今やこの道を通る車は殆どないだろう。上海川から3キロ余りを往復したが、出会った車は工事用の生コン車が1台往復しただけである。よくぞ100番台の国道の認定が出たものである。

 10.これでも100番台の国道だ

 

右岸側の狭い曲がりくねった道を南に向かうと、薄水色の清流が流れている。折返し目的地の直ぐ手前に何故か堰が有る。夏にこの堰の下の淵に飛び込み泳ぎたいものである。

 

 

 

 11.この色が清流の証し

 12.合流点の直ぐ下に堰が

 

堰の直ぐ南に西俣に向かう林道の橋が架かり、橋の先は草茫々の状態である。国道は東俣に向かい、ここが昨日の古屋谷川の合流点と全く同じ東西からの流れが合体し、北に流れて行く落合である。林道橋の名前は落合橋だ。

 13.西俣(上)と東俣(下)が落ち合う

 

ここで折り返し海川バス停まで戻ることにする。バスまで時間が有るのでバス停近くの郵便局のソファに座らせてもらいパン1個を食べバスを待つ。客の来ない郵便局内で女性局員とあれこれ話をして時間をつぶす。13時56分、上海川からやって来た川口行きバスに乗り6時間弱の帰路につく。

本日の歩行距離:12.8km。調査した橋の数:7。

総歩行距離:7,562.2km。総調査橋数:11,221。

使用した1/25,000地形図:「阿波出原」(剣山14号-1)