徳島-3. 勝浦川(その3)平成25年11月6日(水)曇りときどき晴れ

 

宿の部屋は勝浦川の直ぐ傍で、昨夜は川のさざめきが聞こえ何度も目が覚めた。部屋のベランダから川の状況を写真に撮っておく。ここは川が150度ほど屈曲する地点で、川は北北西から北北東の方向に曲がっている。立派な椎茸とコンニャクを土産に買い8時に宿を出る。

 

 01.宿の部屋から上流を見る

02.下流を見る、ダム湖はここまで

 

県道に出ると橋の袂に上勝町の観光案内板が目につく。近づくと北が下になっている。板を見た方向に合わせているがやはり北を上にした方が自分には分かりやすい。鉄道の車内の扉の上の路線図は電車の進行方向に合わせた地図が分かりやすく、南北にこだわらない方が良いが。今日は冷え込んでいるのか道路に設置された気温の表示は8度である。

 

 03.上勝町観光案内板は北が下に

 04.今朝は予想通りの8度だ

 

昨日と一転、今日の県道は川の直ぐ傍に仲良く並んでいる。緩い坂道を進むと傍らの川の淵は朝陽を受け青緑色をはっきりと見せてくれる。やはり川歩きはこれでなくっちゃ。

30分ほどで本流と支流の旭川が合流する落合に至る。県道16号は旭川沿いに西に向かい、本流は剣山まで行けるあのスーパー林道がお供をしている。この交通の結束点に町役場も有る。

 

 05.朝陽を浴びて青緑の川がお供に

 06.本流(正面)と旭川(左)が合流する落合

 

1日2往復の大北行き町営バスまで少し時間があるので落合集落をぶらぶらする。本流最初の橋の名前は「落合橋」。またまた出ました落合が。川は上流部では珍しい中之島を挟んだ橋で、島の橋際にはここにもお不動さんが鎮座まします。こちらは岩にレリーフ状に彫られた不動明王である。徳島にはお不動さんが多いでない。

 07.落合橋の中之島にもお不動さんが

 

大北行きバスが出る「落合東」のバス停に戻る。やがて先ず横瀬西からやって来た八重地行きが到着。直ぐに八重地から横瀬西行きも到着。そこへ広場にたむろしていた大北行きがやって来て3台の顔合わせとなる。2台からの乗継客は無く、自分一人だけが乗り込み3台は同時に発車する。やるでない!貸切なので運転手さんとあれこれ話をしながら上流に向かう。このバスの時刻が今回の遡行のハイライトである。橋を調べていると言うと橋の事を色々聞かれ答えていると、「勉強になりました」と言われる。これからは乗客に橋の説明をしていくのであろう。終点の大北バス停に9時10分到着。

 08.町営バスの終点「大北」で下車

 

暫し上流に向かう。左岸側の1車線の林道を進むと、丸く大きな岩が川の真ん中に鎮座している。数多くの大きな岩を見て来たがこれだけ丸い岩は珍しい。この岩の前まで来ると「丸岩、山犬嶽から落下した岩」と書かれた標識が有る。わざわざ解説が有る岩は珍しい。山犬嶽は渓谷の南に聳える標高997mの急峻な山である。山の北斜面は木々が鬱蒼と繁りそれらしき跡は見当たらない。相当昔に落下したのだろう。

 

 09.大きな岩がごろりと鎮座

 10.さすがにこの大きさに解説板がある

 

更に上流に進んだ百間滝の入口でUターンする。上流は渓谷の底に岩がうず高く重なり、まるで岩山のようである。川の源流までは8km余りあるがここを限度として川を下る。

 

 

 11.折返し点から上流はまるで岩山のよう

大北のバス停を過ぎ、バスで登って来たスーパー林道を東に向かって下る。この辺りの林道は辺鄙な山間部の三ケタ国道よりも道幅が広く立派!渓谷の木々は色づき今が最高の遡行シーズンである。下り道は楽ちんで昨日の歩きの影響はなんちゃないで。最初の林道が渡る大北橋は真っ赤なポニートラス橋で、トラス部材の間から川を見やる。

 

 01.今が遡行のベストシーズン

 02.ポニートラスから下を見る

 

道端に「人生、いろどり」の映画ロケ地の看板が建っている。地元が発起人となり制作された葉っぱビジネスに係わる、吉行和子、冨司純子、中尾ミエの3熟女が演じる映画である。町内のあちらこちらにポスターが貼ってある。最近は地方自治体などが地元を取り上げた自主映画の制作が盛んである。外に発信するとともに内を元気づける役割もありそうだ。

 03.この辺り一帯は映画のロケ地だよ

 

対岸に朽ち始めた大きな木製小屋が木々の間に見える。真正面に見える所まで来ると、「四国一小さな四電発電所跡」なる案内板がある。対岸に渡る狭い吊橋も有る。これから数多く作られるであろうミニ発電所のハシリの施設である。

 

 04.対岸の朽ち始めた小屋は発電所だって

 

北からの渓谷が一緒になると川は南に方向を変える。合流点の直ぐ下流に架かる吊橋も保守状態は良く、紅葉の木々と青緑の川と吊橋との相性は抜群である。急な狭い路を下り橋の上から渓谷を見れば、絶景かな絶景かな。ここまで来た甲斐が有るのである。

 

 05.幽谷に吊橋は似合う

 06.橋から見る景色は絶景!

 

林道に戻りやや広くなった渓谷を進むとなんとも味わいのある建物が建っている。近づくとなんと食堂である。こんな山奥に食堂は初めてでビックリである。建物の反対側にはこの建物は「人生、いろどり」の雑貨店としてロケに使用され、その後食堂として開業したと解説がなされている。

 

 

 07.こんな辺鄙な所に食堂が

 08.ここも映画のロケに使われた

 

道を南に進むと大規模な堰が現れ、二段の滝と魚道を水量豊富な水が豪快に流れ落ちている。この勢いでは魚も大変だな。

 

 09.大規模な堰と魚道に水があふれている

 

更に林道を南に進むと対岸にあばた顔の高い岩山が川に向かって醜悪な姿を見せている。清楚な川の美女に野獣が控えているような姿に思わずカシャ

 10.美女に野獣の景色

 

角屋地区まで下って来ると林道は右岸から左岸に橋を渡る。それにしてもここ上浦の鋼橋はみんな塗装状態は上々で、今までの遡行では最高の自治体である。対岸の橋の袂には、ここからがスーパー林道の起点である大きな木製標識が立っている。ここまで10台以上の車と出合い結構交通量は有る。

 11.ここから上流がスーパー林道だ

 

落合東のバス停に到着したが帰りのバスまで40分ほど有るので近くの町役場に向かう。この町の橋の良い状態の秘密を聞きたく向かう。受付で来意を告げ建設課に案内してもらう。二階の建設課の片隅で2,3の質問をして町の取り組み方について答えてもらう。バスまで時間が無いので後ろ髪を引かれる思いで役場を後にしてバス停に戻る。

やがて徳島バスとの接続バス停である横瀬西行の町営バスがやって来る。さすが町の幹線路のバスで6往復もあり、今日は6名ほどの先客が乗っている。40分ほどの乗車で勝浦町内の横瀬西に到着。直ぐに折返しで上勝町に向かって行く。越境しての町営バスである。

 

 12.勝浦町の横瀬西で町営バスを降り、徳島バスに

 

45分ほどバス停の小屋で待ち徳島駅前行きの徳バスに乗り帰路につく。一期一会の美しき川であった。

本日の歩行距離:8.5km。調査した橋の数:9。

総歩行距離:6,466.8km。総調査橋数:10,228。

使用した1/25,000地形図:「阿井」(剣山9号-2)、「早雲山」(剣山9号-4)