高知-15. 奈半利川(その4)平成29年7月24日(月)晴れ時々曇り

昨日やっと馬路のタクシーに電話が繋がり、馬路村役場から奈半利川上流の
「久木」への送りの予約をし、更に北川村の総務課に電話をし「久木線」の「二又」からの乗車予約をして今日を迎えた。
いつもの南風1号からくろしお鉄道に乗り「安田」で下車。高架下のバス停から5分遅れの「高知東部交通」馬路行きに乗車。今日は女性の運転手で先客が3名ご乗車。最後の手段であるタクシーで裏から奈半利川を攻めることにした。役場前にその予約したタクシーが居ないので電話をしても繋がらない。役場に入り相談していると彼方のバス停前に黒塗りのトヨタがやって来たので急いで向かうとタクシーであった。この辺りは山深い土地なので携帯電話が繋がり難い。
4度目の乗り物で目的地に向かう。安田川水系から奈半利川水系の分水嶺をトンネルで潜り、沢沿いに下って行くとU字形の道の向こうに変形したトラス橋が仮支柱(ベント)で支えられかろうじて落橋を免れている。珍しい物を見せてもらった。1万以上の橋を見て来たが無残に変形した橋を見るのは初めてである。かつての森林鉄道の橋を大型の木材運搬車が通過し、一番力の掛かる斜材が支点部で切れてしまい、大きく変形したのだろう。今はU字型の県道が平行しているので解体できるのだが、「遺産なので処分できないのですよ」と運転手さんが教えてくれる。橋を無理な使い方をしたらこう成るのだという遺産として残すのも良いだろう。

 01.初めて見たぶっ壊れた橋だ

ドタバタしたので携帯を役場のカウンターに置いたままタクシーに乗り「久木」まで来て携帯を忘れたのを知り、再度役場に戻り1.5往復する羽目になる。余計な時間ロスがあった(お金も)ので久木の下流の「大谷口」までタクシー利用とする。この間橋が無いのでOKだ。「大谷橋」に向かう林道との分岐部で車を降り橋に向かう。橋の上から合流部を見ると東からの「大谷川?」の水量の方が北からの本流よりも多い。本流はこの先上流の「久木ダム」で堰き止められ、長いトンネルで下流の先日通過した「二又発電所」に送られて残量僅かとなっている。

 02.支流(右)の方が本流(正面)より水量が多い

狭い渓谷を南に進む。両側は800m級の山が連なりなかなかの景観である。数軒の民家が県道沿いに固まると轟地区である。増水時には川音が谷間に轟くのであろう。森林鉄道のトンネルを改良したトンネルには御大層な坑門が無く渓谷の景観に良く馴染んでいる。谷間が狭いので晴れの天気でも日光はあたらず涼しい風も谷間を駆け抜ける。日傘は殆ど使わずに済みそうだ。

 03.ここは轟(とどろ)だぞ

 04.自然に溶け込んだトンネルはクール

ほぼ一直線に道が進むとお城の石垣のような大きな石積みが現れる。近づくと小さな沢の砂防及び水制装置で、向かって左側の二段の石積みの上段が大雨の時の制水柵で鉄砲水が道路に直接当たらないようにしている。普段は下段の石積みに水が当たり隣りの石積みとの間から水が出てきている。初めて見る構造だが良く考えたものだ。「天晴れ!」。

 05.城の石垣が現れる

06.上段の石垣で水の勢いを削ぐ構造だ

緩い下りの道は時々車が通過する歩きやすい道である。漁協が設置した鮎釣り場案内標識がときどき現れる。No.51は「竹やぶ」と、以前見かけた「杉林」と同じく地名が無いので止む無くやぶとしたようだ。

 07.杉林の次は竹やぶだ

「久江ノ上」地区に入り集落の手前に対岸に渡る橋が有るのを地形図を見た時に見つけ、来た道を引き返す。上り坂道となり汗をかきかき河岸段丘の下の吊橋に向かうが利用されていないのか草が茂っている。直ぐに県道に戻り下り道の有り難さを感じる。
大きく曲がる右岸側の道を進むと「島」集落が両側に広がる。県道沿いの倉庫の様な建物の入口が開けられ中を覗くと案山子がイーパイ。地元の高齢者が製作した案山子が100体以上雑に展示されている。集落の人口よりも多いかも知れない。集落の外れの広場には非常時に使用されるヘリポートが整備されている。県道が災害で通行できなくなった時の用意だ。

 08.村の高齢者が製作した「案山子」のオンパレード

 09.非常時用のヘリポートがここにも

再び渓谷となり南に進むと沈下橋が見えてくる。3径間のコンクリートスラブ橋であるが左岸側の1径間だけ異常にスパンが長い。ぶっ壊れたトラス橋を見た後なので重い車が通過したらポキンと折れないか心配になる。直ぐの釣り場案内の名称はズバリ「沈下橋」になっている。

 10.奈半利川にもやはり有りました

 11.ここはズバリ「沈下橋」だ

工事予告板を見やり進むと崩れた山肌を改善する大規模な法面工事が行われている。最上部まで50mほどありそうで、1本の木が残った、残った。工事は県の道路担当では無く林政担当がやっている。地元の建設業者は毎年のように起こる災害復旧と予防工事、道路改良で息を繋ぎ、非常時の対応も出来る。

 12.急勾配の斜面で工事が進む

ここまで右岸側を進んだ県道12号は「堀ケ生」地区で左岸側に移る。腸ねん転を起こしたような複雑怪奇な川の屈曲に付き合いきれずに左に移る。その橋が森林鉄道のコンクリートアーチ橋で昭和11年完成の古強者である。増水に対応したアーチ橋は大地震に遭わなければ何百年でも持つだろう。橋の上から下流側を見れば緩い流れの神秘的な色をした淵が無音で静まっている。橋を渡ると直ぐにトンネルとなり、数台のダンプカーがやって来たので入口で通過を待つ。

 13.森林鉄道遺産の橋を県道として活用

 14.淵の川の色は神秘的

対岸の面白い形をした山々を見ながら進むと「二又」地区に着く。対岸の集落に向かう橋は県道の下にあり斜めの進入路を下り橋を見る。県道に戻り3分ほど待つと「久木」からの村営バスがやって来た。今回もギリギリセーフである。これを逃せば今日は戻れないタイトな場所である。ドライバーはこれで3度目の顔合わせで、すでに珍しく先客が2名ご乗車。約1時間の乗車で奈半利駅に到着。「次は「魚梁瀬」ですか?」と聞かれ、「ウーンー、どうしようかなー」。
1泊は確実に必要なので迷っている。帰りのくろ鉄まで40分あるので駅近くの例のスーパーに立ち寄る。魚売り場を物色しているとシイラとムツの刺身用の三枚おろしが並んでいる。シイラは釣り人には人気の魚であるが一般人は知らない人が多い。日持ちのしない魚なので産地でしか食べる機会がなく、高知県はシイラ漁の盛んな所で夏が旬である。ムツは油分の多い高級魚で油っぽいことを「むつごい」と言う語源の魚で、高知県も産地である。シイラよりも高い値段が張られている。今日は見るだけにして先日見つけた巨大イチジクを土産に買い帰路につく。

 15.知いらない魚が有るぞ

 16.土佐に陸奥とは何ぞや

本日の歩行距離:10.7km。調査した橋の数:6。
総歩行距離:9,559.9km。総調査橋数:11,525。
使用した1/25,000地形図:「馬路」(剣山15号-4)、「名留川」(剣山15号-2)