高知-15.奈半利川(その3)平成29年7月3日(月)曇り時々晴れ

2週間のご無沙汰で奈半利に向かう。先日の折返し点の「小島」に向かう北川村営バスまで1時間以上あるので駅近くのスーパーに向かい時間を潰す。香川から始まり今では中四国、近畿に200以上もの店舗を持つスーパーで我が屋の近くにもある。高知特産の野菜、魚等の食品をゆっくりと見て回ると、見慣れない名前の魚のさくが売られている。その名は「だるま」。見たところマグロのようで値段と色、大きさから「メバチマグロ」と判定する。土佐湾の反対側の宿毛では冬の夕陽が海に沈む直前の太陽をダルマ夕陽と言っているが、何か関係があるのかな?隣りには「本かつお」の柵も並んでいる。本が頭に付いているのは偽物が有るからだろうか?果物売り場に大きな「小夏」を見つけたので帰りの列車待ちの時に再度立ち寄って持ち帰ることにしてバスを待つ。

 01.だるま?何じゃいな

 02.こちらは「本かつお」じゃきに

12時過ぎに件のバスがやって来て年寄り3名が乗車して出発。奈半利川沿いに上流に向かう村営バスは上流の遠い所に行く便ほど午後になり、一番遠方の「久本」行きは14時過ぎ発となる。国道55号との交差点の角には前から気になっていた面白いダジャレの看板が有る。こじつけの各種「キテン」が漫画風に描かれている。

 03.きてんの使用法辞典だ

最後は貸切となり12時47分に前回の折返し点の小島終点に到着。国道493号を上流に向かうと直ぐに通行止めの看板が立入を拒否している。どうやら道路崩壊に伴う長期通行止めで対岸に一時迂回をする必要がありそうなので、先日最後に見た森林鉄道のトラス橋を渡ることにする。この橋も森林鉄道遺産に認定されている。
右岸から左岸側に来ると平地が広がり、新しい道が北に延びている。両側には綺麗に手入れされた柚子農園が続いている。馬路の柚子に続けと各農協の競争が激しい。柚子は蜜柑等よりも値段が高く、手間暇がかかるが換金作物として産地間競争が進んでいる。倉敷のデパートの食品売り場の柚子入りポン酢には何と土佐の3つの産地(馬路、安芸、土佐村)の製品が並び、同じ大きさでも馬路が一番値段が高い。これに阿波と紀州が負けじと追いかけている。

 04.国道は通行止めなので森林鉄道跡の橋を渡り対岸に

 05.左岸側の新しい道を進む

 06.綺麗に手入れされた柚子園が両側に

迂回路が川に近づくと対岸の山裾が大きく崩れ国道も飲みこまれている。迂回路と仮設橋を早急に整備し、本道の復旧方法と予算化は時間をかけてやっているようだ。帰りのバスのドライバーのお話では、小島から次の沢までの山をトンネルで迂回させることが決まったとのことである。土讃線と一緒だー。
直ぐにその沢が現れる。岩がゴロゴロと転がっている雛壇状の沢である。この沢の高い所から地山に入った水があの崩壊地に出てきた可能性もありそうだ。

 07.大規模に崩れた国道の山腹

 08.直ぐ北側には岩がゴロゴロの沢が

直ぐに仮設橋が現れる。伊尾木川で出合った仮設橋と同じお馴染みのリース会社の橋である。土佐は良いお客さんだな。橋を渡り終わると急な坂道が現道に擦り付けるために現れる。歩幅を狭くしてチョボチョボと歩き、後ろを振り返ると崩落現場とそれ以前に生じた災害箇所の復旧後の状況が見える。トンネル化すればあの復旧法面が泣くだろうなー。

 09.仮設橋が川を横切る

 10.修復された以前の崩落場所と今の崩壊場所が見える

現道に合流したあとの道は森の中を少しずつ登って行く。標高100mの小島から190mの平鍋まで登り道が続く。林間に電源開発の「平鍋ダム」へ向かう道の分岐部が現れる。初日に通過した「長山発電所」に水を送るダムである。

 11.電源開発の平鍋ダムへの分岐道

西に向かっていた道は180度方向を変え登っていくので渓谷の川の音は聞こえてくるがその姿は見えない。ダムもダム湖も全く見えない。やがて北に方向を変えて進むと大きな沢に出会う。国(四国山地砂防事務所)が砂防堰堤の工事にとりかかっている。吉野川、祖谷川、重信川などで大規模砂防堰堤を見て来たがここでもやっているのだ。奈半利川初日に北川村役場近くに監督員詰所が有ったのを想い出す。
この沢を越える国道の新しい橋は曲線橋であるが、橋脚の鋼管が無塗装橋の各桁に直接繋がっている。基礎は多分深礎基礎で基礎、橋脚、桁が一体になっている。かつて中央道の工事で携わったパイルベントラーメンの変形バージョンである。

 12.国が大規模砂防堰堤の工事中

 13.沢を越える国道橋の橋脚はユニーク

大きな沢を越えると道は再び東に方向を変える。直ぐの小さな沢も岩がゴロゴロと重なり水が勢いよく流れている。一昨日に100ミリ以上の雨が降ったので勢いが違う。
やがて標高190mの渓谷の北側に平鍋の家々が点在する地区に入る。家の石垣から大きな紫陽花がこちらの方を向いて顔を出している。国道の北側のミニ郵便局の石段の横には大きな額紫陽花の塊が出迎えてくれる。梅雨の時期の遡行も良いもんですよ。

 14.沢には岩と水が至る所に

 15.大きな今が旬の紫陽花が

 16.ミニ郵便局の入口には額紫陽花が

高い集落から道は渓谷に向かって下って行く。曲がり角近くに来ると真っ新な吊橋が道路の下に見える。吊橋を上から見るのは変な感じである。橋に向かう道を下り2年前に完成した橋を見る。横揺れ防止のケーブルも立派に張られている。海の上の長大吊橋にもこれが有れば耐風安定性が良くなるのだがそれは無理な話である。集落も無い対岸に橋を架けかえるのは村には出来そうも無く、多分電源開発の電源交付金で出来たのだろう。満水状態のダム湖を見ると大きな鯉2匹が水面に顔を出している。

 17.真っ新な吊橋が完成しちょる

 18.大きな鯉が2匹顔を出した

湖面近くまで降りて来ると国道は右岸から左岸側に「平鍋橋」で渡る。高知県で多く見かける単径間変断面下路トラス橋である。橋を渡り左に曲がると仮設の落石止めが迫りその前に落石や法面の変位を検知する機器のケーブルが纏められている。柵の前後には機器が異常を感知すれば異常を知らせる赤色回転灯とサイレンが設置されている。対岸の急峻地では小規模な崩壊が生じている。奥深い山地と狭い渓谷に分け入るのは大変な努力が必要である。

 19.「平鍋橋」で国道は左岸に渡る

 20.仮設落石防止柵の前には機器の元締めが

 21.危機が異常を感知すれば赤色灯が点燈回転する

 22.対岸にも小規模崩落が

やがて複雑な屈曲を繰り返す二又地区に入る。国道を東に進むと対岸の水面と山裾の境目に大きなコンクリートボックスが口を開けて水が本流に放水されている。この先の直角に曲がった所に有る「二又発電所」の発電水車を廻した水をそのまま川に放流させずにサイフォンで川底を潜らせ対岸の小山をトンネルで潜りここに放流させているのだ。本流の上流に有る久木ダムからの長いトンネルの導水管をもっと下まで伸ばしたいのであるが、大きな支流の「小川川」の渓谷に出てしまうので止む無くギリギリの所で発電所を建設し、ここで水を下に落としているようだ。発電所付近は狭い急な渓谷で発電済みの水をそのまま流すと対岸に勢いよくぶつかり危険なのでサイフォンでごまかしたようだ。苦労の跡が窺える。

 23.二又発電所の放流水は川の下を潜りここまでトンネルで

更に東に進むと国道はそのまま東に支流の「小川川」の渓谷を進み、本流側は安田川遡行時に歩いた県道12号がここから始まり北に向かう。名前は小川川と言っているがその長さは22kmもある最大の支流である。この川も歩きたいのはやまやまであるが、村営バスは朝、山から降りて来て夕方上流に向かう1便しかなく利用できないのでパスせざるを得ない。

 24.国道は支流の「小川川」沿いに徳島県へ向かう

小川川が合流する地点に来ると大きな2連のコンクリートアーチ橋が小川川を越えている。これも森林鉄道の遺産で県道がそのまま使用している。遺産の解説によると2連の充腹コンクリートアーチ橋としては日本一のアーチスパン長である。橋の重さで増水時の水の力に抵抗させるのだ。北側に目をやれば発電所が狭い渓谷の東側に有る。太い1本の導水管も見える。国道と別れ県道に入る。

 25.県道12号に利用されたこのアーチ橋も遺産だ

 26.このアーチのスパンは日本一の長さとのこと

 27.久木ダムからの水はこの二又発電所へ

 28.本流と小川川の合流点と発電所

発電所の前を通過すると発電所の名前だけが書かれた看板だけで発電所の概要が分からない。帰宅して調べると最大出力72千KWの中規模発電所である。下流にあった長山発電所は37千KWである。電源開発と言えばかつては土木の花形で、佐久間から始まり奥只見、田子倉、御母衣などの大きなダムと水力発電所の建設を手掛けてきた国策会社である。土佐では電源開発、四電、住友共同と県のダム、発電所が入り混じっている。

 29.看板だけで発電所の概要は無い!

屈曲部をグニャグニャと曲がり二又の橋が見える所まで来ると前日電話予約しておいた村営バスが上流からやって来た。予定の時間よりも早く現れバックしてもらう訳にはいかず橋を見ることなく乗車する。これから上流部への遡行は時間的に大変難しく、その手段を見つけることが出来るかこれからだ。
駅まで1時間貸切で運転手さんとあれこれ話をしながら川を下る。これでも300円である。駅前のスーパーに再度立ち寄り魚コーナーに行くと昼間には無かった「ウツボ」のタタキとカツオのタタキが有ったので買い、大きな小夏、馬路の柚子飲料「ごっくん」も買い、列車に乗り込む。帰宅したのは9時半で遅い夕食をウツボとカツオで叩きあう。

本日の歩行距離:8.8km。調査した橋の数:4。
総歩行距離:9,542.7km。総調査橋数:11,509。
使用した1/25,000地形図:「馬路」(剣山15号-4)、「名留川」(剣山15号-2)