高知-15.奈半利川(その2)平成29年6月20日(火)晴れのち曇り

6月7日の梅雨入り宣言日に纏まった雨が降ったあとはつゆ知らずの状態が続いたが、どうやら今晩から雨が降り本当の梅雨になりそうなので鬼の来ぬまに遡行に出かける。4月に河口から下流部を遡行した「奈半利川」に向かう。いつもの南風1号に乗り大歩危駅手前の吉野川の上にそよぐ鯉幟の写真を今日も狙う。切れ目なく続く短いトンネル、洞門、落石覆いの切れ目を狙うがここまで上手くいかない。結果的に今日が見納めの渓谷の鯉が何とか撮れた。

 01.大歩危渓谷に鯉が泳ぎょるぞ

土佐くろしお鉄道、後免・奈半利線1日乗り放題切符の利便性を十分利用した終点の奈半利駅のバス乗り場には既に北川村の柏木(中岡)行き村営バスが待っている。4月は駅から河口部に向かいそこから柏木まで遡行したので今日は前回の折返し点の柏木から川を遡ることにした。丁度その折返し点近くの中岡慎太郎館前に行く村営バスが待ち時間なしに利用できた。

02.奈半利駅から中岡慎太郎館行きに乗車

2名の乗客を乗せてバスは国道493号を北東に向かう。長山の発電所を過ぎた所で長山橋を渡り左岸側の狭い道を進む。直ぐにこのバスの終点の慎太郎館の前に着く。今日は途中の「モネの庭」もこの慎太郎館も定休日なので、バス乗車時にドライバーがこれらの観光施設に行くのか確認していた。前回は遠くの橋の上から遠望していた慎太郎館は昭和30年代の地方の映画館のような姿である。反対側の川と橋が良く見える小広場には慎太郎の銅像が立っている。銅像が立つような人物は今は殆どいないようだ。

03.かつての映画館のような慎太郎館

04.現代の慎太郎さんは銅像に成るかな

「慎太郎橋」を渡り国道435号のバス停前から遡行を開始する。左側から国道バイパスが合流し道は1本になる。つづら曲がりの川沿いの道を進むと四国電力の工事予告板とその先には国道改良工事の工事予告板が立っている。四電の物は工事場所と日時が明確に表示され分かり易い。地元の建設業者の物はどこでもそうだがあちこちで使えるようにしているので大雑把で工事場所が分からない。場所、通行制限の対象の範囲などが示されず、他地域からの歩行者には不親切な看板である。どの自治体も似たり寄ったりで改善を!

05.四電の工事予告は明確だ

06.これが一般的な工事予告と制限広報板だ

大きくS字に曲がると「崎山」地区のミニ集落に入る。少し平地が広がる道から川を見ると、対岸の岩場の上の木と手前の木とのバランスが素晴らしくカシャ。

 07.「崎山」のこの景色も良いなー

集落の外れの川に向かう道の口にあの漁協の釣り場番号と場所前の書かれた看板が建っている。その名前は「沈下橋」だ。こちらは「奈半利川淡水漁協」である。安田川には負けられんきに!道を下り沈下橋を見ると、やせ細った川の流れの直ぐ近くの高さに2径間のコンクリート床板がある。これではちょっと大雨が降ると沈んでしまいそうである。地形図を見ると対岸に人家は無く果樹園の記号があるだけである。今晩から明日朝まで200ミリの雨が予想されているので明日は通行不可だろう。

08.奈半利川にも沈下橋が有るぞ

09.これでは雨が降る度に沈下しそう

ここから次の集落の「和田地区、日浦」まで6キロには人家も田畑も何も無い渓谷が続く。国道の両側は最近除草されたようで綺麗に道が明確になっている。男前が上がったぞなもし。外人が日本に来てまず驚くのが道路にゴミが無く綺麗なことであるが、この道も見せてやりたいな。
道路の川側に水準点の表示板が立っているが標高の表示が無い。手元の地形図を見ると62.6mとなっている。今日の目的地の日浦は105mで高低差は小さい。

10.綺麗に除草された道はクールジャパンだ

11.ここの標高は62.6mなり
道は1.5kmほど南東に向かい大きく突き出た所をUカーブで方向を変え今度は北西そして北へと大回りをしていく。漁協が設置した釣り場番号16の地名は「船9艘下」なる名前である。もちろん地形図に記載は無く、川幅からすると舟を9艘横に並べて対岸に渡った故事から付けた名前と理解しておく。
タイタニックの船首のような先端で方向を大きく変える。国道の左の少し平地が有る所の山裾に両側の入口の扉を上に開けた猪捕獲用の檻が置いてある。こんな丸見えの所でホンマに捕まえられるのかな?

12.舟を9艘並べて対岸に渡ったのか?

13.国道脇に猪捕獲檻が有る

国道と川との間には木々が茂り水音だけが聞こえ川面はなかなか見えない単調な歩きが続く。18番目の釣り場は杉林から木をかき分けて川に向かう所でその名は「杉林」。人が住むところから外れているので地名が無いのである。
見晴らしの良い所にやって来て対岸を見ると、ぎっしりと埋まった森の下のラインが見事に高さが揃い斜め地層の岩が下に並んでいる。増水時にはここまで川面が上がるのだろう。対岸には森林鉄道跡の細い道路が有るはずだが木々に埋もれ全くその存在は分からない。

14.名前が無いので困った挙句が杉林か

15.増水時の水面が分かる樹木の下限ライン

1時間半の無人地帯が終わり谷間の右岸側に平地が広がる。和田地区の日浦集落と田畑が現れる。谷間の国道で当方を追い越して行った移動販売車の前で数人のお婆さん達が集まり品定めをしている。今日二つ目の橋が見えたので国道を外れ河岸段丘を下り吊橋に向かう。橋はケーブルも塔も高欄も全て亜鉛メッキされ灰色一色である。

16.1時間半の渓谷歩きの後に広い土地が

17.亜鉛メッキされた吊橋を渡り左岸へ

左岸側の短い坂道を登ると後ろから森林鉄道跡の道が現れこちらを北東に進む。木々が道の上まで覆いかぶさりまるで木のトンネルのようだ。これでは対岸の国道からは分かるはずがない。狭いながらも傾斜地に果樹園と民家が連なる。集落名は「影」。対岸の広く南に面した所は「日浦」。ここにも影がある。民家の前に各種色とりどりの紫陽花が咲いている。大きくこんもりと茂りその間に奥ゆかしい色の花が咲いている。日本人向きの花である。

18.道を登ると森林鉄道跡の道に合流

19.6月生まれの当方は額紫陽花が大好きだ

再び渓谷は狭くなり森林鉄道跡の道を急ぐと沢が現れ、道際に朽ちかけたタンクが小高い所に有る。ハハーン、このタンクは森林鉄道の汽車に途中で水を補給するための物で、無動力で水を集め補給する物だ。水が豊富にいつも流れる森の中ならばのタンクである。

20.沢に森林鉄道の汽車に水を補給する水タンクが残っている

目的地のバス始発場所である小島まで道を急ぐ。「日曽裏」なる地名の集落の下を進み暫くすると突然トラス橋が現れる。対岸の小島日浦地区とこちらの小島影地区を繋ぐ「小島橋」である。ここにも影があるぞ。橋を渡ると大きな集会所の広場に村営バスが駐車している。発車までまだ20分有るので歩幅を狭くして直ぐのもう一つのトラス橋に向かう。こちらは森林鉄道が使用していたトラス橋で小島橋とはその弦材の配置が異なる。国道から橋には急な細い道が登っていく。橋と平地との高低差が大きく、森林鉄道はどうやってこの平地に降りてきたのだろう?

21.小島地区の日浦と影を繋ぐトラス橋

22.森林鉄道のトラス橋はここでも再生されている

この地にも北川温泉が有るのだが改装工事中である。14時10分発、貸切で出発進行。奈半利着14時48分。列車は15時01分発。急いで1階の物産販売店に入り品物を物色する。あの土佐ジローの卵が売っていたのでお買い上げ。珍しいヤマモモが売られていたのでこれもゲット。イチジクが名産のようなので乾燥イチジクなども買いエレベーターで3階のホームに向かう。釣果は4橋だが今日は10km以上歩いたぞー!
往路で見た大歩危の鯉のぼりが無くなっている!今宵の大雨の前に撤収、撤収だ。

本日の歩行距離:10.8km。調査した橋の数:4。
総歩行距離:9,533.9km。総調査橋数:11,505。
使用した1/25,000地形図:「奈半利」(剣山16号-3)