徳島-5. 福井川 平成26年3月9日(日)晴れ
再び阿南駅に向かい先日と同じ列車と切符を用意して出かける。朝6時半、手元のミニ温度計はマイナス1度。無風快晴で放射冷却が進んだようだ。今年になって大雪が続き、ぽかぽか陽気と変わり今度は一転厳しい寒さが戻る。
割引切符を購入するため高松駅で緑の窓口に向かうと、JR四国直営のパン屋の入口にアンパンマンのキャラクター達がズラリと並んでいる。孫が喜びそうなパンが全員揃っている。
特急うずしおが徳島駅に入るとホームの端に多くの撮り鉄が並んでいる。何か有るなと感じ車掌に話しかけると、今日は新幹線0系に似せた気動車が徳島駅でお披露目する日とのこと。下車すると撮り鉄が全員一方を見つめている。当方も撮り鉄の方に向かい線路を見ると件の0系がやって来る。急いでカシャ。テレビとポスターでその所在は知っていたがまさかここ徳島で出会えるとは。車体の短い予土線用の気動車を改造し、塗色は新幹線に合わせ、先頭部に0系の団子鼻をくっ付けた物でなかなか良く出来ている。
コンコースには大勢の親子連れが長蛇の列を作り、JR社員の誘導で1番線ホームに向かっている。新幹線が出来そうにも無い四国に新幹線らしい車輛を用意した涙ぐましい姿である。0系に乗りたい人は四国の果ての予土線にどうぞお越しください。
阿波池田からやってきた特急「むろと」に乗ると鉄ちゃんが数名乗っている。0系は四国各地をお披露目興行中で、これを追っかけている追っかけ鉄なのであろう。
阿南駅から四国最東端の蒲生田岬方向に向かう徳島阿南バスに乗車。福井川河口付近はJR牟岐線から少し離れているのでバスで向かう。下車予定の「南鵠」バス停の鵠の読みが解らず運転手さんに尋ねる。「ああ、くぐいと読むんですが地元の人しか分からないですよネ」。帰宅して調べると、鵠は白鳥の古語と判明する。かつては四国にも白鳥がいたのだ。最初の国道55号の湊橋から開始し上流に向かう。
福井川を踏破すれば紀伊水道や豊後水道を含む広義の瀬戸内海に注ぐ四国の川は全て踏破したことになる。瀬戸内海は数多くの種類の海域が有り、水道(紀伊、豊後、尾道)、海峡(鳴門、紀淡、明石、来島、関門、豊予)、湾(大阪、広島)、灘(播磨、水島、燧、斎、安芸、伊予、周防)、海(宇和)などが有る。無いのは洋だけである。
福井川河口の先に広がる橘湾は四国の火力発電の元締め地域である。かつて紀淡海峡大橋の検討をした時に、大阪湾に大型船が入るのに時間が掛かり、荷卸しにも時間制約が有り大型コンテナ船は隣国の釜山港に入り、小型船に積み替えて大阪湾や東京湾に向かっている現状を打破する一貫として波静かな橘湾を整備し、外洋近くのここで荷卸しをし、高速道と大鳴門橋、明石海峡大橋、そして紀淡海峡大橋を通り京阪神、和歌山、奈良などに向かう構想を検討したことがある。
土手沿いに進むと蒲生田岬方向に向かう県道26号の露田橋の親柱が石造りの燈籠になっている。この先に立派な神社が有るのであろう。大小二つの半島に挟まれた海域は阿波水軍の本拠地である。九鬼、村上などの水軍は島影や狭い湾の奥まった先に本拠地があるようだ。隠れやすく、急襲に都合の良い地形が好まれたのだろう。
徳島県の今までの川は東西に流れるのが主体であったが福井川は南北方向が主体になっており、瀬戸内から太平洋にと流れる方向が変わる前兆を感じる。
右岸から左岸へ、再び左岸から右岸へと何度も繰り返しながら橋を見ていく。やがて前回歩いた桑野川との分水嶺の低い峠を越えてJR牟岐線が現れる。阿南から南は複雑急峻な海岸地形が続くため、牟岐線は川を上手く繋ぎながら内陸に入り太平洋側に向かう。国道55号も一緒になり3者は暫し友となる。一緒になって直ぐに阿波福井駅となる。川名になっている駅である。駅前には付近の絵地図と解説が書かれた看板もある。丁度お昼なので徳島駅で買った阿波尾鶏弁当を福井駅の待合室で広げる。前回徳島駅で見かけて次にはと決めていた弁当である。阿波尾鶏とは上手く引っ掛けた名前である。
20分ほどの休憩で再開する。3者並走も先ず牟岐線が離脱し、南からの細い支流に向かい、次に国道はこの先のダムに備えて高度を上げていく。川沿いの道を進むと眼前に県営の福井ダムが行く手を遮るように聳えている。橋を渡り右岸側の坂道を登りダムサイトに向かう。ダム湖は二手に分かれて満水状態になっている。
東側の湖岸沿いの道を進むと再び国道が現れ、暫し国道を歩く。この道は22番平等寺から23番の薬王院への遍路道になっている。ダム湖に架かる橋の国道側には大きな遍路用の休憩所も有る。
国道55号は直ぐ南の由岐には向かわず、西の峠を越えて大回りで薬王院の在る日和佐に向かって行く。当方は国道と別れそのまま南に向かう県道に入る。国道の下を潜ると、地形図には記載されず最近完成した国道バイパスが立体交差で眼前に現れる。
時計を見ると予定していた牟岐線列車まで1時間しか無い!多くの橋の調査に時間を取られたようで、この調子では間に会いそうもなく予定の列車を逃すと2時間ほど遅くなってしまう。ここでギアをトップに入れ県道25号を飛ばすことにする。福井川が東からの流れとなる所で県道は南の峠に向かう。標高は低いが峠道をトップスピードで足早に登るのはきつかー。峠の由岐坂峠が阿南市と美波町(旧由岐町)との境界で、お遍路さんを急ぎ足で追い越して行く。傍らには不法投棄を防止するための看板と遍路の人形が道路を睨んでいる。
下り道を時計を見い見い転がるように歩いて行く。元国道と思われる完全2車線の道路には再び休憩所が現れるが、休憩どころでは無いのでわき目を少し振って通り過ぎる。列車に間に合わないと青春68切符が利用できない特急利用になり、予算を大幅に超過するので必死で急ぐ。
汗びっしょりで由岐駅にたどり着いたのが14時30分。33分発の徳島行きになんとか間に合った。滑り込みセーフ。帰りは由岐からと変なごろ合わせとなり列車に乗り込む。
本日の歩行距離:13.0km。調査した橋の数:26。
総歩行距離:6,919.1km。総調査橋数:10,597。
使用した1/25,000地形図:「橘」(剣山5号-2)、「馬場」(剣山5号-4)、「阿波由岐」(剣山6号-3)