岡山-2. 高梁川 (その4)平成26年12月10日(水)晴
今日も高梁川に向かう。先日折り返した水内橋から次の玉川橋まで距離が有るので玉川橋近くの備中広瀬駅までJRで輪行する。5年前の遡行では歩道の無い国道を避け、水内橋から右岸(南側)側の道を上流に向かった。集落が尽きた先から道は細くなり、手元の地形図では細い道が有ることになっているが総社市と高梁市との境界付近に来ると草木が鬱蒼と繁り、暫し藪漕ぎで悪戦苦闘する。1時間ほど格闘しこれ以上は無理と判断し来た道を戻った苦い記憶が有る。四国の渓谷は岩山が迫り迫力満点で男性的であるが、岡山の渓谷は穏やかな曲線の山々が川に迫る女性的な姿である。本当はこちらの方が恐ろしいのである。今回は対岸の道は勿論、国道も避けて電車でこの難所を通過することにしたのである。
伯備線備中広瀬駅から近くの玉川橋に向かう。踏切を渡り国道に出ると対面の橋は通行止めとなり、新しい橋が300mほど下流に完成している。5年前の観察ではトラス桁に河川敷から延びてきた蔦が絡み、その管理状態が良くないので×としたいわくの有る橋である。道路橋としての役目は終わったようであるが、蔦は綺麗に取り除かれ△にしても良いぐらいである。戦前から戦後直ぐに架けられた橋は幅員が狭く、設計荷重も小さいため現在の需要に合わないため、橋の構造的な寿命は未だ有るが社会的需要に合致していないため退場を余儀なくされている。海外の橋を見て来た者としてはいささか勿体ない気持ちがするのであるが・・。新橋は今の標準形である耐候性鋼材使用の連続箱桁である。旧橋と同じ4径間である。両橋を見比べれば橋の進化が良く分かる。
新橋でUターンし国道を上流に向かう。川も国道も伯備線も仲良く西から方向を北に90度変針する。丁度上り普通電車がやって来たのでカシャ。通勤通学時間帯を過ぎたので2両編成のワンマンカーである。伯備線は山陽と山陰を結ぶ陰陽連絡線として電化され、倉敷~高梁間は複線である。
大きく北に方向を変えると東西に広がる新高梁市の観光案内図が立っている。備中中部は全て高梁市になった。高梁市も人口減少、高齢化が進み、増田さんの本で消滅候補の市町村になった市である。岡山県は広島県、兵庫県等と同じく南北格差の大きい県である。
山側の歩道を北に進むと東から流れて来る小さな川に架かる橋の保全工事が行われている。大きな橋から始まった耐震補強工事などが小橋まで順番が回ってきたようである。国道180号は3桁国道であるが県西部を南北に結ぶ重要幹線国道である。
やがて歩道は車道より一段高い所の伯備線との中間部に延びている。これは気持ちが良いわい!車道と区分してあれば車が突っ込んでくる心配も無く安心して歩ける。
高倉山が東から川に迫り出した地点で西から最大の支流である「成羽川」が合流する。広島県の北東部の道後山から流れ東城を通過し、帝釈川等を合わせてここ落合で本流に合流する78km余りの支流である。
出臍のように川と国道が曲がると直ぐに落合橋となる。成羽川沿いに向かう国道313号がここから分岐して西に向かう。三叉路に架かる落合橋がかつての2車線から右折車線を増やした3車線に拡幅され、合わせて下部工も含めた耐震補強工事も実施済みの姿を見せてくれる。交通渋滞解消と橋の長寿命化のダブル効改良で、全くの新橋のように見える。
落合橋を過ぎると国道180号は川沿いの4車線の広い道となる。ここからの景色は岡山の川の景観のベスト3に入れても良い好きな所である。特に冬の寒い朝は川霧が程よい高さに懸かり味がある。今日は少し時間的に遅いのか川霧が消えかかっているがカシャ。
進むと彼方の備中高松城の有る臥牛山(H=487m)が川に迫り出したように聳えている。手前の山上の420mの高さに城が有り、山城を代表する城である。岡山県には何故か官兵衛の水攻めで有名な備中高松城とここ備中松山城と四国が揃っている。
東側の直ぐ近くの山から流れて来る小さな川の合流点では、本流の勢いに負けないようJ字型の誘導壁が完成している。横綱と褌担ぎでは勝負にならないのでこのハンデが必要である。
延々と真っ直ぐに広い道が続き、歩道と川との間には城下町らしさを演出する白壁の壁が胸の高さで続く。屋根には本物の瓦が乗っており、どれも盗まれずに綺麗に並んでいる。屋根越しの川を見ながら遡行するのも良い物だ。
市街地の半ばを過ぎると国道の東側に3階建ての木造の宿が建っている。湯原温泉に在ったあの油屋と同じ屋号の宿である。寅さん好みの建物だなーと見ていると「寅さんロケ地」なる板が簾の横に掛けてある。ここ高梁市は寅さんが2回訪れたお気に入りの城下町である。町の規模と雰囲気が寅さんに合うのであろう。
市街地の北の外れ近くに架かる「方谷橋」も県の歴史的土木遺産の橋で、3径間の真ん中のアーチ型をしたランガーの桁部分が側径間に少し延ばされ、その桁端部に側径間の桁が乗っかるゲルバー形式である。あの水内橋と見た目は異なるが同じ原理を利用した橋である。電算機の無いころはあの手この手で橋の長大化を図って来たのである。
両側から山が迫り再び渓谷となり、国道は2車線と狭くなり、伯備線も単線になる。白壁も無くなりごく普通の国道に戻る。対岸の山が大きく迫り出した地点で本流は北西からの流れとなり、屈曲点に北東から支流の「有漢(うかん)川」が合流してくる。180号は本流の左岸側を付き合い、有漢川には国道313号が付き合って行く。交通量の半分ほどはこの313号に右折して行く。
有漢川に架かる国道180号の「新幡見橋」は橋脚の耐震補強工事の真っ最中で、橋脚周りの川底を掘りその周りを鉄とコンクリートで巻きたてる工事である。渇水期の今やるしかないでしょう。上部工の桁は比較的簡単に補強が出来るが橋脚は大工事になる。上がほぼ終わり今は下の頃合いであるようだ。
高梁市の旧津川町の案内看板が有ったのでカシャ。
木野山駅裏の国道沿いにJAの大きな販売店が有るので立ち寄る。5年前にはこの姿では無かった。ここにも自然薯を売っていたのでお買い上げ。竹を半分にした添え竹付きでこれなら安心して持ち帰れる。
足の状態は次の駅の備中川面駅までOKであるが、川面まで行くと次回の歩く距離が半端でない距離になるので前回と同じくここ木野山駅で今日の終わりとする。直ぐ前の駅の地元の人のみが通る秘密の狭い道をホームに向かう。10分ほどで電車がやって来て帰路につく。
本日の歩行距離:10.0km。再調査した橋の数:6。
総歩行距離:7,708.5km。総再調査橋数:123。
使用した1/25,000地形図:「高梁」(高梁8号-3)