愛媛-15.面河川(その2)平成26年9月27日(土)晴
久しぶりに仁淀川に向かう。通い慣れた土讃線佐川駅から落出まで黒岩観光バスに乗車。今日はバスの便が少ないエリアなので久しぶりに川の遡行歩きとした。珍しい土日の旅となった。最上流部のバスが土日だけの運行で、黒岩の落出行きは日曜休みなので土曜日しか出発できない選択肢の無いエリアである。
直ぐに川沿いの国道33号を北に向かう。先日歩いた黒川沿いの国道440号の新道は高い所に向かうため、33号の分岐交差点から面河川を二回渡ってぐるりと廻り込み高度を稼いで行く。3桁国道にしては贅沢な線形である。高速道路も真っ青なルート選定である。
直ぐに今は流域の4町村が一緒に久万高原町となった旧柳谷村から旧美川村に入る。ゆるい傾斜の国道をそろりそろりと進むと、前方に面河第一発電所が見えてくる。下流に向かって第二、第三、大渡と発電所が続く。やがて右前方から前川が傾斜で合流してくる。最初の中津大橋は谷間の底に有るので国道から30mの谷底に降りる。調査後急坂道を登り国道に戻る。
元1級国道は整備した時代が古く歩行者のことは眼中に無く、やがて歩道も無くなる。集落部を除き歩道は無い。国道際の桧の梢の先にはチョコボールのような実が鈴なりに付いている。目の高さの眼前に実を見るのは初めてである。
谷間は狭く道路も坂道が続く。対岸の岩が手に取れそうな位置にある。この急勾配が発電に向いているのである。谷底の水は発電所に送るトンネルに送られ、白い岩がゴロゴロと転がり、緑色の渓谷の底を埋め尽くしている。
渓谷の対岸に人家は無く、急勾配の山の上に散開している。山に続く狭い道に繋がる吊橋の状態は芳しく無く早急な補修が必要である。
国道と水面との高低差が少しずつ無くなり、川面が見えるようになる。やがて名物の青石が現れるが、上半分は青色であるが下半分が白色となっている。どの石もツートンカラーで面白い。水に浸かる部分と浸からない部分との差が出ているのであろうか。
前方の上流に大きな堰が現れ、堰の真ん中に長い魚道がある。これだけ長く緩い傾斜の魚道はお初にお目に掛かる。遊園地の水の滑り台を現地に持ってきたような姿で、ここを滑り降りたら気持ちが良いだろうな。
次に現れた吊橋は、直ぐ上流に橋が出来たのでお役御免となり通行禁止になっている。管理をしていないため路面が左右に波打っている。橋名は対岸の山上の集落名を採った沢渡橋。吊橋が似合う橋名である。
次に現れた堰の魚道は左岸側に迷路のように曲がりくねった構造で造られ、長さを短くしている。こちらも面白そうな滑り台である。お魚クンが喜びそうである。
国道と川が大きく反時計方向に廻り込むと旧美川村の中心である御三戸(みみど)地区に入る。この御三戸で久万川が面河本流に西から合流する。対岸の前方に姿形の良い岩峰が河原の白砂の上に屹立している。川はこの岩山を境に180度方向を変え、西からの流れが東からの流れに大転換している。支流の久万川の方が自然に西から流れているのに対し、本流は母屋を取られたように反転している。これだけの急反転している流れは初めてお目に掛かる。更に進み国道が合流点の久万川を渡る美川大橋から対岸を見ると、岩峰はナイフのエッジのように尖りこちらを向いている。能登の軍艦島の舳を尖らせたような姿である。国道33号はここで本流と袂を分かち久万川と仲良く西に向かって行く。
直ぐ近くの久万川に架かるコンクリートアーチ橋は大正11年完成の銘板が掛かっている。石材や良質のコンクリートで架けられたアーチ橋は何世紀も持つ理想の橋である。
当方は本流に沿って国道を離れ県道212号を北東方向に向かう。河岸段丘上には旧美川村役場、郵便局、診療所などの公共施設が固まっている。渓谷の合間の束の間の広い土地である。役場は正統派を感じさせる建物で控えめなれど機能的な佇まいである。
交通量の減った県道を進むと農作物の無人販売台に見事に綺麗な色をしたさつま芋が載っている。その名はパープルスイートロードとのことで見た目は正解であるが甘さは如何かな?
御三戸から上流の面河方面にはバス便が極端に少なくなり、平日には無く土日に2本の土小屋行きが有るのみである。午後のバスに合わせた工程である。土小屋は面河からのスカイラインが石鎚山から東に延びる山稜の峠に登る終点である。午後のバスに乗れるギリギリまで歩き、今日は面河渓谷の国民宿舎に泊まり、明日最上流部から下る工程とした。
久万からの伊予鉄南予バスがやってくるギリギリの七鳥バス停でバスを待つ。これを逃せばバスも宿も超少ない地域なので野宿の危険性がある。バス停は入母屋屋根の古民家の前にあり、着くと直ぐに件のバスがやって来て乗車。14時58分、これでやれやれである。
県道212号、直瀬川が合流する橋からは県道12号そして仕七川(しながわ)からは国道494号となり北に進む。国道494号は先日歩いた土居川沿いの旧松山街道が県境を越えてやって来た道である。通仙橋からは再び県道12号となり石鎚山の懐に入って行く。
2車線の道路を若い運転手は飛ばして行く。40分余りの乗車で面河渓入口の面河に到着し下車する。バスは乗客ゼロでこの先スカイラインを標高1,500mの土小屋まで登って行く。土小屋から石鎚山までは尾根沿いに2時間で行ける格好の場所である。
バス停の前には観光案内板が有り暫し見て土地勘を養う。今やバスでやって来る人は皆無でバス停付近はゴーストタウンの雰囲気である。この先の国民宿舎までは自動車道も整備されている。途中に架かる橋は渓谷に似合うトラスアーチ橋である。快晴であった天候が急変し、雨がぱらつきだした。急いで宿に向かう。
本日の歩行距離:14.3km。調査した橋の数:9。
総歩行距離:7,434.7km。総調査橋数:11,139。
使用した1/25,000地形図:「柳井川」(高知15号-4)、「笠取山」(松山3号-2)、「久万」(松山3号-1)