高知-8.国分川(その1)平成29年1月17日(火)快晴
岡山2回目の遡行を終え年末と正月を過ごすと、心臓の状態が芳しくなくしばし出控えていたが3週間ぶりに出かけることにする。中断中の高知県東部の残りの河川遡行を再開する。2年前の1月に境川を歩いて以来の高知の川の次は「国分川」である。西から浦戸湾に注ぐ境川とは反対に東側から湾に出てくる川で、東西に細長い高知平野の主要部を流れている。高知湾から細長く南北に入り組んだ浦戸湾には多くの川が注ぎ、高知はかつての地名である「河内」の名前の通りの川イッパイの地である。徳島も川イッパイであるが高知は負けちゃーおらんぞ!
朝7時8分発の何度も利用した南風1号に乗り込む。瀬戸大橋を渡った宇多津で高松からのしまんとを後ろに繋いで高知を目指す。今や珍しくなった2階建て列車で宇多津駅は松山行き「しおかぜ」もここで併結、解結を行っている。線路容量の小さな単線の多いJR四国の苦肉の策である。
高知駅から国分川最下流の「新青柳橋」近くの中央市場に向かうバスは無く、堺町まで歩きバスを待つのもいやなのでタクシーをはりこむ。個人タクシーの運転手さんと高知と浦戸湾の話をして橋際に到着する。市場のある「弘化台」は人口の島で境川と国分川の誘導堤のような形をしている。湾口を浦戸大橋が湾を高い位置で跨いでいるので中小型船は中央市場のある弘化台まで進入できるのである。
橋の上から南を見ると浦戸湾口は見えず、北側を見ると次の「青柳橋」が見えるがこれはもう海である。
川は高い防潮堤に囲まれ堤防の上も狭く歩くのは危険なので橋桁の下に行くのは困難である。堤防の下のあちこちを行きつ戻りつ何とか桁の状況と橋の仕様を調べる。次の青柳橋までは堤防の西側に細長い建物が並ぶ場外市場を北に向かう。今日はお休みなのかそれとももう営業時間を過ぎたのかどの店もシャッターが閉じられている。遠くを見ていると遠近法の解説のような市場街である。
青柳橋には大きな親柱が四隅に立ち太平洋の波のような彫刻であるが、奥深い浦戸湾では巨大津波が湾奥まで襲来しそうである。
更に右岸側を北に進むと国道32号、土佐電、国道195号と3本の橋が集中した葛島地区に着く。北側に高い山波が続く高知平野では高速道も鉄道も国道も県道も全て東西に路線が延び、わずかな距離に多くの道鉄が集中している。土佐電(地元はとでんと言う)に新しい3両編成の連接車が入ったようで橋を軽快に渡って行く。3つの橋のスカートの中を見るべく恐々水辺に降りて上を見上げて調べる。ここまでどの橋も状態は良い。
国道195号の「葛島橋」を対岸に渡る。橋の上から上流側を見ると、東側から支流の「舟入川」が合流している。この川を本流と勘違いしてこの後、支流沿いに東に向かう失敗をしてしまった。この国道はこの先で高知県第3の大河である「物部川」に沿って阿佐国境の「四ツ足峠」を越え徳島県第二の大河「那賀川」沿いに阿南に向かう国道で、阿波側は既に踏破した道である。国分川の次の目標の大物だ。
本流と勘違いした舟入川左岸の土手路を東に進むと対岸に巨大な和風建築が他を圧して建っている。県立美術館のようであるが窓が無く大きな屋根が不気味である。最初の橋は高知インターから高知市東部と県南東部に向かう国道と県道を繋ぐ県道44号の舟入川橋である。片側2車線の橋が二つ間を空けて架かっている。この間の空間に高規格道路の高知東部自動車道が建設されるようで、川の前後では建設が始まっている。大阪の中央環状線の間の近畿道や中国道と同じ手法である。
ここまで来て地図を見て川を間違えたことに気付く。歳は取りたくないねー。舟入川橋を渡り県道44号の東側の歩道を北に向かう。道路は至る所で工事が行われ、津山で見た釣りキチ三平の防護柵支柱に再会する。隣には見たことのないキャラも顔を出している。これでは幼稚園の防護柵じゃないか。更に進むと工事の実施者である大手建設会社のキャラクターも並んでいる。これから先多くのジェネコンがそれぞれのキャラを発表する予感がする。
次の交差点で左折し県道374号を西に向かい本流に戻る。新国分川橋で桁下に潜り調査を再開する。左岸側の土手路を北に向かうと本流は北から東からの流れとなり、北側からは支流の「久万川」が合流する。この良く似た合流が間違いの元になった。
大きく回り込み土手は東に向かう。やがて先ほど歩いた県道44号が本流を越える「下の瀬大橋」に着く。こちらでは二つの現況橋の間の空間で高規格道路の架橋工事が始まっている。名神が完成し東名と中央道の建設途中に高速道路建設に携わった者としては高速道路が50年も経つとこんな所にも出来るのかと思わざるを得ない。
堤防の下の川辺には多くの鴨が集団で羽を休めている。シベリアから南国土佐にようこそ!
次の錦功橋で右岸(北)側に渡り堤防道を進む。やがてJR四国の広い運転所が現れ、多くの気動車が見える。どれも1両か2両の短い編成で、首都圏、近畿圏などの車両基地で見られる長い編成の電車は無いで。高知駅付近の連続立体交差事業でそれまで高知駅の北側に有った基地をこちらに移動させたものである。松山駅、徳島駅も駅の直ぐ横に車輛基地が有るが立体化は可能だろうか?
進むと土讃線のトラス橋の直ぐ左側に「布師田」駅の短いホームが見える。予定では一つ先の土佐大津駅まで行く予定であったが、川の間違いと調査に時間を喰い、また心臓のことを考え今日はここまでとする。
ホームに向かうには一旦土手の上に上がりそこからホームに渡る短い橋を通ることになる。土手をちゃっかり借用しているな。すると上りの土佐山田行きがやって来て直ぐに発車して橋を渡って行く。
時刻表を見ると15分ほどで下り高知行きがやって来るので暫し快晴のホームで列車を待つ。やって来た列車は土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の単行ワンマンカーである。高知県の東西にある土佐くろしお鉄道の西側の「宿毛線」にはJR四国の特急が乗り入れ、その見返りに東側の「ごめん・なはり線」ではくろしお鉄道の車両が御免から高知に乗り入れ帳尻を合わせている。
この箱は三分の一が転換クロスシート、三分の二が長いベンチシートの座席配置で、2種類の座席を1両に備えている。四国の車輛は単行ワンマン運転を前提にした構造で、運転席も片側に寄せ、運賃箱が直ぐ横に設置され運賃収受が見やすいようになっている。JR西は古い車両をワンマン時にも使用できるようにしているが使い勝手が悪い。ローカル線しかないJR四国と金持ちのJR西の姿勢の差が出ている。
高知駅到着後隣りのホームで待っている南風に乗り込み帰路につく。なんとか行けそうだ。
本日の歩行距離:6.3km。調査した橋の数:10。
総歩行距離:9,322.3km。総調査橋数:11,294。
使用した1/25,000地形図:「高知」(高知7号-4)