高知2-7.梼原川(その3)平成26年5月17日(土)晴れ

朝8時前に宿を出る。土佐の奥の宿ではあるがBSが受信でき、トイレは洋式とあちこちと泊まった今までの宿には無い設備がある。奥さんはインターネットの操作も出来るとのことで、これからの宿はこの3点が欠かせない。

image1 01.国道沿いのこの宿に泊まる

昨夕見た下津井のメガネ橋は宿の直ぐ前からも見える。四国には珍しいアーチ橋で、かつての森林鉄道の橋で、下流の大奈路まで川の右岸側に線路が有ったようだ。森林鉄道と言えば木曽と屋久島が有名であるが、高知も日本一の森林率の県なので、多くの森林鉄道が在ったと推測する。土佐藩は米の石高は少ないが、森林国だったので実石高は相当なものであっただろう。討幕に加わった藩の財政は他の藩よりも良かったのであろう。

image2  02.めがね橋はかつての森林鉄道の橋

image3 03.めがね橋の解説

下津井の集落を過ぎると国道は更に狭くなり、とてもこれが国道とは思えない雰囲気である。ここから上流9キロ弱の梼原町松原まではバスの無い区間で、県境よりも交通事情は悪い。

道を曲がると猿の一団が道路を横切り右側の落石防止ネットに駆け上がっていく。その足の速いこと!最後にボスらしき猿が悠々とネットに登り、上からこちらの様子を窺っている。さすがボスだけのことはある。当方も申年だから喧嘩をしないよ。

image4 04.猿の一団が落石防止網に駆け上がる

大きく北側に突出した道を曲がり進むと木の間から良く管理された吊橋が見える。対岸に数軒の家が見え、この橋だけが頼りの手段である。更に進むと橋に向かう道の際に橋名の看板が立っている。宗海橋と書かれ、お茶の達人のような名前の橋である。

image5  05.良く管理された山の吊橋が

image6 06.更に進むと橋名が分かり爽快

やがて四万十町大正から川名の梼原町に入る。本流に負けじと川は曲がりに曲がっている。今日の折返し予定の大向まで下津井から直線距離にして4kmの所が4倍の16kmも有る。

image7 07.四万十町から梼原町に入る

再び北側に細長く突き出た地形の突端近くの影地の集落に入る。集落の入口に女性が立ち止まっている。近づくとマネキンの若い女性で、せめてマネキンで人口を増やしているように見える。民家の庭先には姿形の良い鶏と白色の烏骨鶏が飼われている。篭の上には全ての鶏の名前が書かれている。ここでも人の替わりを鶏がしているのだ。

image8  08.人と見間違えるマネキンが迎えてくれる

image9 09.姿形の良い鶏が

道は川から少し高い位置を占め、川との間には森林が繁り川面は見えず、水音もかすかに聞こえる程度で、遡行としては面白く無い状況が続く。ほどなく屈曲部が終わり、道はほぼ北に向かっていく。やがて先日歩いた中津川から北に延びて来た林道が長いトンネルを越えてここ大串地区で右側から合流してくる。案内板では、大正から松原までは国道与作よりもこの中津川経由の林道の方が早いと書かれていたのを想い出す。国道が台無しや。

image10  10.右の国道よりも左の林道の方が早く大正に行ける

ここ数回無かった下腹部の痛みが出てきてトイレを探す遡行となってきた。松原地区に来ればなんとかなるだろうと内また歩きで北に進む。

松原地区に入り診療所、公民館などとトイレを探すが何れも閉まっている。臨界点に達する寸前に畑作業中のおばあさんにトイレの所在を尋ねると、そこの私の家のを使ったら、と言ってくれ家に向かう。助かった!トイレは何とウオシュレットである。クールジャパンがこんな奥地にも有るのだ。お礼を言って国道に戻る。松原地区の案内図が入口に架かっている。

image11 01.梼原町松原地区の案内板

すっきりとした所で宿で教えてもらっていたパン屋が現れる。ごく普通のパン屋と思っていたが、場所に似合わない本格的なパン工房で喫茶もある。ここで昼を摂ることにして美味しそうなパンを2個選ぶ。神戸の有名パンに負けないくらい美味のパンであった。

20分ほどの休みで遡行を再開する。お粗末な国道であった与作が俄然良くなる。国道沿いに花一杯の民宿が有る。女性向の民宿である。傍らでは今が旬の牡丹があでやかな姿を見せている。

image12  02.花が一杯の民宿が有る

image13 03.ボタンは絢爛豪華な花

国道と川との間の狭い土地に田と茶畑が共存している。夫婦と思しき二人が茶摘みの真っ最中である。まさに夏近しである。

image14 04.今は茶摘みの最盛期だ

やがて案内図にあった八百轟の名所に差しかかる。与作はこの名所の上を通過している。近年架けられたトラス橋は無塗装橋で、真っ黒な岩が続く渓谷には良く似合っている。両岸にびっしりと黒岩が続く真ん中を青い川が音を立てて流れている。

image15  05.改良された与作国道の橋は立派

image16 06.橋の上から八百轟渓谷を見る

ここまでの与作は川に忠実に曲がりに曲がって付き合っていたが、ここ改良区間では屈曲の根元をトンネルで短縮している。2車線と3m幅の歩道が完備し、ここまでしなくても1.5車線、1.5mの歩道で良いのにと思う。ここまでが30点で改良区間は100点満点で、70点で十分なのに・・・。

中平地区に着くと与作は二次支流の北川川に付き合って北に向かう。当方は梼原川を遡行中なのでここからの県道26号に入る。広い三叉路で与作と暫し別れるが、後日の北川川遡行時の再会を約し、橋を渡る。北川川は上流にダムが無いので水量豊富で、上流にダムのある痩せた梼原川を凌駕している。

image17  07.与作は支流の北川川に沿い、梼原川には県道26号が

image18 08.橋の上から合流部を見る

少し西に歩くと二番目の沈下橋の中平橋が有る。直ぐ上流に永久橋が出来、沈下橋の袂は草が茂っている。お役御免となり御苦労さんでした。

image19 09.中平沈下橋はお役御免

大きく屈曲する渓谷を進み、予め梼原のタクシーに待ち合わせ場所としておいた大向地区に入る。この県道を通る松原~梼原間のバスが2往復あり、1時間半後の梼原行きに乗ると20分早く梼原から須崎行きのバスが出た後となるので、止む無くタクシー利用とした。

最後の橋を調べるため県道から川に降りる。坂道を上がって行くと件のタクシーが10分早く待っている。直ぐに乗り込み梼原に向かう。1時間ほどバスまで時間が有るので帰路の国道にある近くの日帰り温泉施設に車を回してもらう。

なかなかの温泉で2日間の歩きの疲れをとる。入浴後の気分さっぱりしたところで爽やかな風を受けながらバスを待ち、5分ほどで須崎行きバスがやって来た。バスからバスへの連携である。1時間15分の長いバス旅で帰路につく。

image20 10.雲の上温泉で一浴してバスに

 

本日の歩行距離:16.0km。調査した橋の数:10。

総歩行距離:7,166.9km。総調査橋数:10,837。

使用した1/25,000地形図:「土佐松原」(宇和島1号-1)