岡山-1.旭 川(その4) 平成26年10月1日(水)曇り
伊予から備前に足の向かう方向を変え、高校生が一杯の列車で津山線金川駅に降り立つ。高校生もどっと降り駅から北に一団となって歩いて行く。先日の折返し点であった野々口駅からこの金川までに橋は無いので一駅分ズルをした。
国道53号の旧道を横切り旭川の土手に向かう。直ぐ南側の橋を診てUターンし、右岸側の新道を北に向かう。右前方に赤磐富士と言われる奇異な形をした目立つ山が迎えてくれる。直ぐに旭川最初の大きな支流、宇甘(うかん)川が西から合流する。合流点近くの新道の橋から西側を見ると、日蓮宗の不受不施派の本山「妙覚寺」の屋根と南側の「妙見山」が見える。妙の字と日蓮宗とは切っても切れない間柄である。お経の「南無、妙法、蓮華経」から来ているのだろう。
この金川には西から「宇甘川」、東から「新庄川」が、野々口との間の西から「谷川」と多くの川が合流し、いずれの川も前回歩いており地形図にその足跡が各種色のサインペンで埋まっている。今日は別の新しい色にしないと区別が出来ないくらいである。
橋を渡ると金川大橋が歩道橋と車道橋に分かれて現れる。国道53号から東に橋を渡る道路は県道53号。同じやないか。
対岸の北側に目立つ二つの砕石山がその姿を大きく変え、手前の山は頂上付近が無くなってしまっている。秩父の武甲山や筑豊の香春岳のような石灰山の山は大きく変わるが、採石場では珍しい。
北に延びる国道の東側には歩道も有るので今回は右岸側を歩くことにして、真っ直ぐな道を進む。曲がりくねる川の中流部にしては珍しく国道は3km余り一直線である。津山線はこの先の急峻な地形を避け、宇甘川に沿い一旦本流から逃げ低い峠越えをして建部に向かっている。卑怯者!
かつて御津警察署と言われていた警察署が岡山北警察署と変わっている。警察は岡山市内を中央、東、西、南、北と方向と面積が合致した署を配置しているが、岡山市の区は中、東、北、南と中途半端な区分けとしており、北区がやたら細長く広い。警察の勝。
やがて道は西に方向を変え川と山が迫ってくる。直ぐに第一御津洞門が現れ、吉野川を想い出させてくれる。この先しばらくは川と山が迫り、国道は山裾を雄大に延びている。川側に歩道は迫り出して設けられている。
西から北と方向を変えて鹿瀬地区に来ると国道が旭川を渡る。53号が旭川を渡るのはここだけである。鹿瀬橋は錆止め色をしており、錆止めは塗装の第1層(下塗り)で、その上に第2(中塗り)、第3層(上塗り)と塗り重ね、耐候性アップとお化粧をする。この色では下着姿のままで世間に出て来たように見える。
橋を渡ると旧:御津町から旧:建部町に入る。この町も岡山市を政令指定都市にするための人口数合わせで一緒になった町である。道は西に向かって再び直線が続くが、歩道は狭くなる。早速蓋が現れ、図柄は川と魚と自然のよく見かける図柄である。
かつては賑わっていた大きなドライブインが商売を止めているのを2軒ほど見て来たが、変わった店を見つける。面白いキャッチコピーを書いた大きな看板に引かれ、騙されたつもりで日本一の鯛焼きを買い、熱々を食べながら道を進む。これだけで大きな店がやっていけるのだ。キャッチコピーの威力は絶大である。
西に向かっていた真っ直ぐな国道が120度ほども大きく曲がり北に向きを変える。中吉橋を見るため一時国道を外れる。町名にもなっている建部駅に向かう県道の橋を診てから国道に戻る。ここから暫くは東側の山が川に迫り、歩道の無い区間が続く。5年前と同じく直ぐ横を速度を落とさずに通過する車におののきながら道を急ぐ。道路は車だけの道では無いぞ。
5年前には歩いた東側から合流する長谷川の橋を渡り大宮橋に近づくと、正面に真っ新なトンネルが口を開けている。更に急峻な地形の山裾の国道が危険なため直ぐ東側に迂回トンネルを掘ったのである。先ほどの区間も何れはトンネルになるかも知れない。
今や国道484号となった大宮橋を渡り国道と分かれ右岸側に向かう。橋から国道を見ると打ち捨てられた旧道がさみしげにこちらを見ている。よく頑張ったネ。橋はトンネル開通を祝ったかのように塗装が塗り替えられ、ピカピカの肌をしている。最新のフッ素塗料はさすが美人に見える。
対岸の河川敷の舗装広場には御津・建部コミバスのワゴン車の連合艦隊が停泊している。すっかり形が変わった新車揃いで、運行を受託している中鉄バスの塗り分けがなされている。さくら色の中鉄バスである。青色の岡電バス、両備バス、オレンジと赤色の下電バス、茶色と灰色の宇野バスと岡山のバスは色分けがはっきりとしている。
右岸側には文化センターや親水公園があるほっとする地域である。旭川でまともな親水公園は此処まで来ないと無いのである。かつて川を行き来していた大きく長い高瀬舟も保存展示されている。これだけの船が通れるよう川は整備されていたのだ。広い芝生の河川敷で遠足に来た幼児たちがお弁当を食べている。芝生の上で気持ちが良いだろうな。
やがてかねてから目論んでいた八幡温泉に到着。前回の遡行でも立ち寄った天然温泉である。岡山に来て何度もやって来た温泉であるが建物が一部変わっている。65才以上の岡山市民は320円と格安で入れる。数多く出来た日帰り温泉とは格の違う本物の湯である。来年春には近くで建設中の新しい建物に移るとのことである。
45分ほどぬるい源泉湯に浸かり歩行を再開する。温泉の直ぐ前の歩道橋は半潜水橋で木橋である。多径間の橋はそれぞれが鎖で繋がれ全体がバラバラに流されないようにしている。京都の木津川の「ながれ橋」を想い出させてくれる。今回はこの橋は渡らず右岸側を上流に向かう。
河岸段丘の上には数軒の温泉施設と老人施設がある。道沿いには八幡の湯の自動販売機もある。自動販売機は相当年配者のようで小屋の佇まいと似合っている。温泉は時間が経つと劣化するので湯本で入るのがベターだよ。最近道後温泉に今治の温泉から湯をタンクローリーで運んだ湯を使ったホテルが開業したが、温泉を何と考えているのだろう。
水面が広がる彼方にバスケットハンドル型のアーチ橋が見える。アーチの高さが低く(アーチライズが小さいと言う)、アーチ橋としてはギリギリのタイプであり歩道橋なら有りのスタイルである。この歩道橋を渡り直ぐ傍の八幡橋を診て今日の遡行は此処までとして福渡駅に向かう。金川から福渡と縁起の良い名前の駅を利用したことになる。北海道のかつての愛国から幸福駅へと同類で、北海道が若者向けならこちらは老人向けのネーミングである。この駅の直ぐ先まで岡山市である。その先は美作国である。
本日の歩行距離:13.5km。再調査した橋の数:11。
総歩行距離:7,464.2km。総再調査橋数:31。
使用した1/25,000地形図:「金川」(高梁4号-1)、「福渡」(高梁3号-2)