高知-2.四万十川(その1)平成25年6月4日(火)晴れ

今日も快速で坂出駅に向かい一旦下車し「バースデイきっぷ」を購入する。誕生月にのみ1回発売される四国内グリーン車を3日間乗り放題の切符である。6月になりこれを前から狙っており、これを有効利用する川として岡山から最も遠い四万十川を選んだ。1万円なりを払い切符と宇多津から中村までのグリーン指定券を入手する。片道の運賃で往復可能なので今回は豪勢な紀行となる。
いつも乗っている南風1号を宇多津で捕まえ先頭車のグリーン車に乗り込む。宇多津からは3名の御同輩も乗り込む。高松からの特急にはグリーン車が連結されていないため宇多津で岡山からの「南風」に高松からの「しまんと」が併結されるのに伴い移動してきた。大歩危駅で上り特急と交換したのでカシャ。

image1 01.大歩危駅で上下南風が交換

例年よりも早く梅雨入り宣言がなされたが、ここのところ晴天続きで今回の遡行は大丈夫なようだ。高知駅で15分の長時間停車。高松からのしまんと号は四万十川を見ることも無くここで切り離される。特急のネーミングが逆じゃないかJR四国さん。岡山から四国に向かう特急は予讃線がしおかぜ、土讃線が南風、高徳線がうずしお(大半は高松発である)と自然を題材にし、高松発は予讃線がいしづち、土讃線がしまんと、県内特急は予讃線は宇和海、土讃線はあしずり、牟岐線はむろと、徳島線はつるぎと山河海岬を名前にしている。かつて高松桟橋駅には、伊予、土佐、阿波号の三本の準急列車がホームに並び連絡船からの乗客を待って油煙をもうもうと出していた。どこに行くのか一目瞭然のネーミングであった。
長時間停車を利用してホームの駅弁売り場を覗く。高知らしいネーミングと内容の弁当がずらりと並び目移りするが、今日は「竜馬弁」をチョイスし、売り場のおばさんには「帰りにまた寄るきに」と言って購入する。高架駅になった高知駅の駅前には巨大な3人の銅像が建っている。後姿ではあるが真ん中がこの弁当の本人で、右は中岡慎太郎、左は岩崎弥太郎と推測する。また後日挨拶しに来るきにまっちょれよ。車内に戻り弁当を開ける。高知名物の焼き鯖寿司にこんにゃく・筍・椎茸・茗荷の寿司、柚子皮入りの酢の物、カツオの煮つけなどが鎮座している。まっこと美味いきに!

image2  02.高知駅弁はユニークぜよ

image3 03.竜馬弁の中身は土佐づくし

image4 04.高知駅前に立ち並ぶ3傑

窪川からは土佐くろしお鉄道となるがこの切符はこの三セクも利用可能。かつて国鉄中村線時代に土佐佐賀までの線路の時に佐賀まで乗車し、宿毛まで延伸された時に宿毛に乗りつぶしで乗車して以来の線路である。
終着中村駅に11時32分に到着。駅舎は三セクの駅としては大きく立派である。さすが土佐の小京都である。伊予の小京都、大洲は完全に負けている。駅から500mほど先の観光案内所に向かう。早速マンホールが現れカシャ。絵柄には中村名物のとんぼが入っている。街の西にはとんぼ公園も有り、かつて立ち寄ったことがある。

image5  05.中村駅は三セクなのに立派

image6 06.中村市のにはトンボが入っている

スーパー、レストランなどが並ぶ広い敷地の一角に観光案内所があり、貸自転車を申し込む。インターネットで貸自転車の有るのを知る。元に戻すママチャリと四万十川の上流側の数か所の自転車ターミナルに乗り捨ての出来るマウンテンバイクが有り、当然マウンテンバイクコースとする。1日1,500円は相当高い。普通の乗り慣れた自転車と異なりハンドルが不安定で乗りづらいが仕方がない。
四万十川は本名は「渡川」と称し、四万十川は世知辛い世の中を渡っていくために利用されている芸名である。地形図では四万十川(渡川)と必ず両名が併記されている。河口は10kmほど先なので左岸沿いの道を河口の方に向かう。暫くは渡川に合流する「後川」の右岸側の堤防の上を走る。合流点から2kmほど進むと河口部に最も近い橋が現れる。古い地形図には載っていない「四万十大橋」である。橋の際には小公園が有り南海地震の津波に備えた避難場所とその高さを記載した案内図がある。河口はまだ3kmほど先であるが、河口部は両側から山が迫り、肛門のような姿であり太平洋は見えない。ここを遡行の開始点として196kmの大河「四万十川」の遡行を開始する。橋の親柱にもトンボが描かれている。

image9  07.四万十川と後川(右)との合流部

image8 08.南海地震の津波対応が見られる

image9  09.この橋から遡行開始

image10 10.四万十大橋にもトンボが

四万十大橋を渡り今度は右岸側の国道321号を上流に向かう。国道は本流に合流する「中筋川」と本流との間の堤防の上を中村に向かっている。南西側に向えば土佐清水から足摺岬に行ける道である。かつて高知県には鉄道の無い市が4つも有った。土佐清水、宿毛、中村、室戸の各市で、今は土佐くろしお鉄道開業で2つに減った。
国道56号のバイパスと旧道の二つの橋を診て更にくろしお鉄道宿毛線の橋を潜り、県道346号の古い四万十川橋のトラス橋を左岸に渡る。橋を渡り切った所で左岸の川沿いの狭い曲がりくねった道を進む。乗り慣れない自転車に尻と手首が痛くなり、2kmほど走ると一旦自転車から降りて小休止をとる。この川には所謂下流と言う景色は無く、山が川に迫り、低い台地の上に中村の市街地が乗っかっている。いきなり中流の景色となり暫く続く。狭い道はアップダウンを繰り返し、やがて最初の沈下橋「佐田沈下橋」の案内板が現れ、橋の概要も書かれている。徳島などの潜水橋とは大違いの待遇である。沈下橋は土佐ではメジャーブリッジである。観光センターでもらった案内図によれば四万十川本流だけでも21もの沈下橋があるようだ。

image11 11.最初の沈下橋「佐田沈下橋」

車を利用した観光客が橋を訪れ、駐車場に車を置いてめいめいが楽しそうに橋の上を行き来している。沈下橋巡りの遊覧バスやタクシーも有るようで橋も幸せ者だな。最初のπ型の流れの大きくカーブする川のアウトカーブをふうふう言いながら尻の痛さに顔をゆがめながら次の橋、三里沈下橋を目指す。大規模な採石場を過ぎた所にまた案内看板が現れる。こちらでも観光客が橋の上を往復している。暫くすると遊覧屋形船が通りかかりカシャ。この川には他の川に有る堰が無いので川舟が自由に行き来出来、多くの遊覧船が就航している。田に水を引くための堰がここでは田を作る平野が無いため無い。農業よりも漁業の方が勝っている。

image12  12.続いて「三里の沈下橋」

image13 13.沈下橋に屋形船が近づく

本村地区に来ると県道沿いのコンクリート法面に平成17年9月の洪水時の水位が記されている。この広い谷間の今の水面から10m以上も高い位置にまで水位が上がったのだ。この川沿いに田と家屋が少ない訳が分かった。傍らでは見事な額紫陽花の花が咲いている。6月の女王も出始めた。

image14  14.県道脇には洪水の水位が

image15 15.紫陽花の季節到来

道が大きく回り込むと北側に四万十川の水面と白い石の河原が見事にバランス良く収まった景色が見える。彼方にまともな橋である川渡大橋も見える。四万十川は日本最後の清流というキャッチフレーズで有名になったが、当方に言わせれば他にいくらでもこれ以上の清流に出会ってきたので言い過ぎの感じがする。本当のこの川の魅力は、緩やかな流れで水が止っているかのように見える水量豊かな川面と白い広い河原のバランスが良く、両側の山波と人家、田畑の見えない景色が一番である。河口から130kmも遡った窪川でも標高はわずか200m。平均河床勾配はわずか0.15%と極端に緩い。

image16 16.これぞ四万十川の景色

川登大橋を過ぎると狭い県道に沿って川登の集落が続く。やがて中村から川の東側の別の川を通過してきた国道441号が合流する。国道に入ると釣りバカ日誌のロケ現場である「勝間沈下橋」の案内看板が立っている。第14作の高知編である。スーさん役の三国連太郎さんも最近亡くなられた。君の名から始まりヒットした映画は寅さんも含め全国各地を巡るシリーズ物が多い、いずれも松竹の作品であり、松竹は「秘密の県民ショー」がお得意である。

image17 17.釣りバカ日誌のロケ沈下橋案内

広くなった国道の道を進むと三番目の沈下橋である「高瀬の沈下橋」が望まれる。こちらは橋の全貌が撮れる場所が無く、止む無く梢越しに写真を撮る。何れの橋にも駐車場、トイレ、解説板が付き至れり尽くせりである。徳島、愛媛の潜水橋が可哀そうなくらいの厚遇である。

image18 18.三番目の「高瀬の沈下橋」

大きく蛇行する川面と河原を見やりながら北上を続ける。手前に広い河原が現れとかの「勝間の沈下橋」が姿を見せる。この橋が沈下橋の代表としてロケ地に選ばれた理由は何だろうか?低い山波に囲まれて川は悠々、滔々と流れている。遠くまで来た甲斐が有るというものだ。

image19  19.これが四番目の「勝間の沈下橋」

image20 20.悠々と流れる四万十川

小高い川が良く見える道の曲がり角で暫し休憩し、尻と手首を休ませてやる。木々の間から見える川は日本の川ベスト3に入れても良いくらいの心休まる風景である。会津ナンバーの乗用車が広場に止ったので暫し福島県のあれこれをお話する。会津若松、喜多方、熱塩温泉、磐梯山、五色沼や福島高校から来た大学の今は亡き友人の事、白河の山間部の国道に架けるアーチ橋の技術支援業務でたびたび郡山を訪れたことなどを話す。
10分ほど話をして遡行を再開する。直ぐに久保川休憩所が目につく。この川沿いの道には一定間隔でこの休憩所が設置され、トイレとパーゴラ、ベンチが有る有りがたーい道である。高知県はこの川沿いの観光客誘致に力を入れているのが実感できる。

image21  21.日本の川ベスト3の景観

image22 22.川沿いの道には多くの休憩所が設置

4時半過ぎに口屋内(くちやない)の自転車ターミナルのある施設「しゃえんじり」農家レストランに到着し自転車を返す。本当は今日宿泊する江川崎まで行きたいのであるが、5時までに自転車を返す必要があるため15km手前のここで打ち止めとする。
江川崎に向かう西土佐バスまで30分ほどあるので近くをぶらつく。直ぐの口屋内バス停にはここが終点の高知西南バスと始発の西土佐バスの二つの小さなバス停標識が並んで建っている。
近くの「口屋内沈下橋」は洪水で桁が流されたため通行不可となっている。こちらの左岸側の2径間が橋脚ごと流されたようで、1径間は最近施工された様子で真新しいコンクリートの橋脚と桁が見える。残りの1径間は次の冬以降になるのであろう。

image23  23.口屋内バス停に到着

image24 24.「口屋内沈下橋」は修復中

バス停に戻る途中に一株で咲き始めた花と真っ盛りの花が一緒になっている紫陽花が有ったのでカシャ。微妙な色のグラデーションがかかっている。
バス停に戻ると中村からの西南バスが到着し1名下車して待機している。運転手さんがバスで待っていればと声を掛けてくれる。やがて少し遅れて江川崎からの西土佐バスがやって来たが車体は先に来た西南バスと同じ物である。このバスが折り返して江川崎に向かうのかと思っていると、中村からのバスに乗るように言う。運転手はそれぞれ乗って来たバスとは異なるバスに乗り、元来た方向にUターンして行く。路線と運転手は一般路線バスとコミバスと異なるが、車体は路線バスを使っている。路線バス廃止直後の過渡期のようである。貸切状態で今日泊まるホテル名を言うと玄関前まで乗せてくれる。これではタクシーやー。

image25  25.一株で咲き始めから満開まで網羅

image26 26.中村来た西南交通バスがそのまま西土佐バスに変身

バスは未改良の狭い1車線の酷道を対向車と上手くコンタクトを取りながら上流に向かって行く。6時前に今宵の宿である「星羅四万十」に着く。今日は6月の平日なのに満員の盛況である。1月ほど前にテレビの旅番組に紹介されたようで、四万十川の謳い文句「最後の清流」に引き付けられたようだ。一応の天然温泉に浸かり明日に備える。今日で遡行距離6千キロの大台を超えることになった。

本日の走行距離:35.6km。調査した橋の数:12。
総歩行(自転車走行を含め):6,025.7km。総調査橋数:9,583。
使用した1/25,000地形図:「土佐中村」(宇和島3号-1)、「蕨岡」(宇和島2号-2)、「川登」(宇和島2号-4)、「口屋内」(宇和島2号-3)、