愛媛9-1.石手川(その1)平成25年2月13日(水)晴れ後曇り

 

朝7時、福山駅前から前回よりも1便早い今治行バスに乗り込む。今日も赤坂バイパスは渋滞が激しい。今治駅前に10分遅れて到着し松山行きバスはもう出発してしまったと諦めかけていると、桟橋からこちらも遅れてやって来て直ぐに乗り変える、その間30秒。

今日は重信川の最大の支流である「石手川」を歩くが、下流からでは時間的に道後温泉を素通りしてしまので、反対の上流側から下ることにした。蒼社川を歩いた時に横目で見ていた今治~松山特急バスは1時間に1本もあるのでこれを利用する。蒼社川と石手川の分水嶺にある国道317号の水ケ峠トンネルは2,804mもある長―いトンネルである。9時8分トンネルを抜けて直ぐの「米野々口」バス停で下車。標高は480m。1泊二日の歩きを始める。直ぐに川の対岸にある明見神社に向かう同名の橋が有る。集落にとって大事なのは神社と橋であるのが良く分かる。

 

 01.最上流部の米野々口バス停から開始

 02.橋から道は神社へと続く

 

地形に忠実に曲がりくねった旧道をショートカットした道路改良の結果、取り残された三日月が右に左にと続く。まるで石狩川のような姿である。この川は北三方ケ森(H=977m)南面から南西方向に流れ松山市の南端で主流に合流する26km余りの川である。松山市水道の半分はこの川から取水しており、四国最大の市はこの川無くしてはあり得ない。水源保護区域の立て看板が所々に見える。

 

 03.石手川は松山市の大事な水源

 

坂とカーブが続く国道は冬の凍結防止とスリップ防止のためのグルージングが施されている。コンクリート舗装に狭い溝を切り込み路面に水が張らないようにしている。愛媛県は道路の安全対策が充実している。

 

 04.凍結と横滑り防止に効果のあるグルージング

 

九川川が合流する三叉路では高縄半島の名前の親許である高縄山に向かう県道178号が始まる。川が大きく屈曲する先に愛媛県では珍しい沈下橋が現れる。土佐では沈下橋、阿波では潜水橋と言うが伊予ではどう言うのだろうか?

 

 05.半島名にもなっている高縄山はここから入る

 06.愛媛県では沈下橋、それとも潜水橋?

 

旧道が大きく屈曲する地点から新道はトンネルで通過しているが旧道の先に橋が有るので旧道に入る。伊予なのに上総橋なる新しい橋が有る。親柱には猿と猪の異なる絵柄の絵が四隅に描かれている。鳥獣戯画の世界に思わず笑ってしまいカシャ。

 

 07.鳥獣戯画、上総橋には動物のレリーフが

 

直ぐに石手川ダムが貯めた白鷺湖が始まり、湖畔の曲がりくねった歩道の無い狭い道を歩く。急カーブの連続で速度を落とさずに現れる車に冷や冷やしながら歩く。やがて高さ85mのダムが現れ、彼方にはダム管理所の大きな建物が建っている。先日の蒼社川の玉川ダムは県管理でささやかな建物であったが、国の管理所ではどうしてこんなにも大きな建物がいるのだろうか?

 

 08.石手川ダムは国が建設管理

 

急坂道を下り旧道に入り宿野々橋に来ると、なんと昭和5年生のコンクリートアーチである。高欄にはガス灯風の照明柱もあり、品位を感じさせる姿である。

 

 09.昭和5年完成のコンクリートアーチ橋は今も健在

やがて四国の大将「坪内寿夫」が事業を立ち上げた来島ドックグループの「奥道後ホテル」が道路の両側に立ち並ぶ。一時は飛ぶ鳥を落とす勢いであったホテルも今は民事再生中である。団体客をターゲットにした巨大温泉宿はどこでも青息吐息である。

ダムから下流は水が殆ど無い。対岸にある湯山発電所に向かう橋は国道の下に有り、橋に向かう道は無くそれに代わるインクラインが橋に通じている。資材を積んだ小型車をこの台車に積んで降ろす仕組みのようだ。

 

 10.湯山発電所に資材を運ぶインクラインと橋

 

湯の山ニュータウンに向かう道路との交差点近くにそば屋が有ったので昼食とする。名物のじゃこ天入りの韃靼そばを食す。ここからは市街地となり先日松山駅付近で撮ったマンホールの絵柄に標語が入っている。標語入りは珍しく兵庫県には無い。道路脇には今が盛りの蝋梅が鮮やかな濃い黄色を見せてくれる。

 

 11.「みんなでつくろう住みよい松山」標語入り

 12.蝋梅が満開

 

国道317号は右岸側から奥道後橋で左岸側に移動するが当方は右岸沿いの狭い道を進む。途中からは民家の建て混んだ間に道と変わり行き止まりとなる。暫し引き返し違う道を進みこれを二度繰り返して何とか川沿いに進む。途中に真っ赤なワイヤーを張った吊橋が架かりおとぎの国に迷い込んだような気持ちになる。

 

 01.おとぎの国の橋か?

 

河床の岩が川を狭める岩櫃で国道は再び右岸側に変わり、当方は今度は左岸側の水管橋を診に行く。北側の小高い山の頂上には弘法大師像が松山の町を見下ろしている。山裾に第51番札所の石手寺が有る。石手川を歩いていて同名の札所に参らないのはバチが当たりそうなので、遡行は切りあげて遍路橋を渡り寺に向かう。

 

 02.山頂に弘法大師像が

 

国道と県道が交わる三叉路の正面に石手寺が道路際に有る。札所にお参りするのはこれで4寺目である。70番本山寺、88番大窪寺、13番大日寺以来の札所であるが、ここは88ケ寺中最も市街地に近い所に有るだろう。松山市には南から46番浄瑠璃寺、47番八坂寺、48番西林寺、49番浄土寺、50番繁多寺そして51番石手寺と北に向かって一直線に札所が並ぶ。更に北西の海岸付近に52番と53番が続き、市内にはなんと8ケ寺も有る。お大師は強弱と変化を上手く付けた遍路を考案したものである。温泉も有り、歩き遍路にとっては有り難―いエリアである。

 

 03.51番石手寺入口は賑やか

 04.短い参道は屋根付きで店が並ぶ

 

境内に向かう短い参道は屋根に覆われ両側には法具や土産物の店が並ぶ。直ぐに国宝の山門が出迎え境内に入る。ここはお遍路はもとより道後温泉の観光客も数多く訪れる札所で一番の参拝者数であろう。正面に本堂、右側に三重塔が建ち何れも重要文化財である。本堂で遡行の安全を祈願し歩きを続行する。

 

 05.国宝の山門

 06.三重塔も有る境内

 

温泉に向かう道路沿いの大きな民家の庭には紅梅が咲き始め、背後の山の緑と白の大師像とマスネーではないが絵になる風景である。今日は無風快晴で春到来を感じさせてくれる。春本番の桜も良いが、春近しを感じさせてくれる梅も捨てがたい。

 

 07.春はそこまでやって来ている

 

やがて山裾に数多くのホテル、保養所などが立ち並ぶ道後温泉に入る。何度も訪れた道後を裏側から入るのは初めてである。勝手知った本館が変わらない姿で眼前に現れる。2月ではあるが小春日和の本館には多くの入浴客が切符売り場に集まっている。ここは400円の入湯だけのクラスからグリーン車ならぬグリーン湯入湯に浴衣、お茶、団子付の個室休憩の出来る1,500円のクラスまで4階級がある。有馬は600円であったがここでは400円と同じ日本3古湯であるのに料金に差がある。4クラスともかつて利用したことがあるのと混んでいそうなので本館はパスし近くの椿の湯に向かう。

 

 08.道後の顔、本館の南側面

 09.正面入り口は西向き

 10.入湯は400円から1,500円まで4段階も有る

 

商店街を100mほど進み角を曲がるとくだんの建物がある。ここは地元民が多く利用する湯で湯船が大きく開放的である。建物の近くに湯の名前にもなった市の花の椿がカラーになった蓋が有ったのでカシャ。20km近く歩いた足腰を温泉で休めてやる。こちらは本館よりも1割安い360円で地元の65歳以上の人は半額になる。高齢になれば温泉のある大きな地方都市は暮らしやすいだろう。

 

 11.こちらは地元人が入る椿の湯

 12.カラー版が椿の湯の前に有った

 

近くの食堂で夕食を摂り民宿風の簡易ホテルに向かう。

本日の歩行距離:19.8km。調査した橋の数:31。

総歩行距離:5,606.7km。総調査橋数:9,059。

使用した1/25,000地形図:「鈍川」(松山1号-1)、「東三方ケ森」(松山1号-2)、「松山北部」(松山1号-4)