愛媛-4. 国領川 平成24124日(火)曇り一時晴れ

 

久しぶりに愛媛に戻り新居浜駅に降り立つ。住友の元を築いた別子銅山と係わりの深い国領川を遡行することにし、駅前から河口近くの元塚まで瀬戸内バスに乗車。街外れの駅から北に向かい市役所や警察署などの中心部を通過し、北の外れの元塚で下車し、東の河口に向かう。500mほど歩くと河口近くの新高橋に到着。川の長さは20km弱の幕下級であるが河口の広さは小結級の広さがある。石ころだらけの川に水は無く、海水が浸入してきている。ここから上流に向かって左岸側の土手の上を歩き出すと直ぐに住友化学の井戸が現れる。わずか50mの間に4か所も井戸が有り、それぞれの井戸には番号と有刺鉄線がいかめしく進入者を撃退している。これでは川の水は無くなるはずである。新居浜で住友に文句を言うと、「これが目に入らぬか、この方をどなたと思うか、先の財閥の住友様であるぞ」とあいなる。

 

 01.河口は石ころだらけ

 02.住友化学の取水井戸が連なる

 

川には広い河川敷が広がり、道は土手の上と河川敷内と二本も有る。土手の道沿いにはいろいろな草花が植えられ、大都市の河川敷のような整備状況である。河川敷には、グランドゴルフ、野球、サッカー、テニスと多くの球技場が延々と連なり、今まで歩いて来た多くの河川敷では一番多くの施設が在る。対岸には陸上競技の施設も見え、新居浜市民は恵まれているなー。施設の管理員詰所前で丁度おられた管理員としばしお話をする。

予讃線の橋に来ると、間もなく上り特急が差し掛かる時刻なので暫し待ち橋を渡るしおかぜを写真に撮る。

 

 03.土手の道は花が一杯

 04.特急しおかぜをここでもカシャ

 

国道11号バイパスを過ぎると土手沿いの道から民家の連なる狭い道に入る。足元のマンホールの蓋の絵柄が駅付近で見た物と異なっているのを見つけカシャ。大きな樹がデザインされ、帰宅してから調べると市の木は大楠で、市役所近くの一宮神社の大楠が描かれているようだ。駅付近のつまらない幾何学模様の物よりも格段に良いのだが。

 05.新居浜市は市の木の大楠木

 

再び川に出ると、あの徳島などで見かけたリバーサポーター制度の看板を見る。川に限らず道路や公園などに地元の人達のサポーター制度が全国に広がれば、日本の将来は明るいものになる。元気な高齢者が社会奉仕をして本人の生きがいにもなるのはいいことである。

川沿いに大きなラブホテルが現れ、部屋に健康機器完備と看板が掲げられ、入口には各部屋の写真が掲げられ、確かにウオーキングマシーンが映っている。なにもここに来てまでウオーキングじゃあるまいし、やることは他にもあるでー。

 

 06.この川にもサポーターが居る

 07.ラブホ入口にあった部屋の写真

 

新居浜と言えば海近くの街のイメージがあったが、線路の南側にも家屋が続き、さすが愛媛県第三の都市である。国道11号、金比羅街道の旧道と過ぎると川には本来の水の流れが復活しだす。東西に長―く連なる高い山が近づいてくる。

 08.高い山が連なる東予地区

 

市の集水場で川から離れると再び住友化学の鉄条網に囲まれた井戸が目に入る。化学工場とは水を大量に必要としているのだろうが、米軍基地でもないが鉄条網はいただけない。狭い道には、六角形が連なる幾何模様、別の幾何模様、先ほどの楠木とはまた異なる意味不明のデザインのマンホールが現れ、なんと4種類もの絵柄のマンホールが点在している。これは一体どういうこっちゃ?

 

 09.ここでも水を搾取

 10.この模様は何ぞなもし

 

山裾近くの新田橋を渡り左岸から右岸に移る。橋から南の渓谷を見ると川は本来の水が流れほっとする。左岸側の山根公園から県道47号を南に進む。

 11.ここから渓谷に入るが水は在るで

 

平坦だった道が渓谷に差しかかるといきなりの坂道となる。東予地区の山は凹凸の凹は在るが凸の部分は見事に鉈で削ぎ取られたように、山裾が一直線に東西に揃って長く続いている。直ぐの東側に格式高い神社の石段が現れ、神社名を見ると「大山積神社」とある。あの大三島にある有名な大山祇神社の分社のようで、別子銅山の守り神として尊崇を受けてきたようだ。向かい側には朱色の欄干を備えたコンクリートアーチ橋が対岸の別の神社とを繋いでいる。かつては鉱山から此処の対岸を経て港まで鉱石運搬鉄道が在り、この橋を通って東側の山の上の製錬所まで鉱石を運んでいた時期も有ったとある。親柱には製錬夫の像が建っている。

 

 01.大山積神社は別子銅山の守り神

 02.生子橋は鉱山の出入り口の橋だった

 03.親柱には製錬夫の像が

 

渓谷は狭く大きく曲がりくねっている。法面には延々と長く落石防護網が張られ、連続してのこれだけ長いネットは初めてお目に掛かる。中央道の笹子トンネルの換気用仕切り壁が落下した事故が昨日起こり、かねてから民営化に伴う道路施設の点検、保守、改築がおろそかになっているのではという危惧が現実に起こった。民営化すると利益を上げるよう、やいのやいのと言われ目につきにくい所が経費節減の対象になり、年々予算が減らされて来たのではないだろうか?アメリカかぶれの新自由主義経済が国を危うくするのは、お隣の韓国、イタリア、スペインが証明している。極端に走るとろくなことは無い。

04.法面には長く落石防護網が続く

 

やがて目指す別子マイントピアの入口に架かる端出場大橋が現れる。やや大げさな感じのするPC斜張橋で、四隅の親柱には銅の採鉱から製錬までの工程がレリーフになっている。

 

 05.マイントピア入口の橋はPC斜張橋

 06.親柱には銅の採鉱から運搬、製錬のレリーフが4面に

 

橋を渡り構内に入る。ここは20年以上も前にマイカーで来たことがあり、正面の建物は記憶に残っている。入口にはこの施設建設の由来と構内の案内図が有るが、案合図は古い時代の感覚で描かれいまいち面白く無い。この端出場は採掘場では無く、鉱石の集積場であり、ここから地名のとおり砕石が出荷されて行った。鉱山はさらに上流の山の斜面に点在し、一時は世界一の採掘量を誇り、これを元に住友財閥が形成されて行った。兵庫県の生野銀山にI君と訪れたのがつい最近のように思われる。

 

 07.別子マイントピア建設の由来

 08.構内案内図はいまいち面白くない

 

本館入口横には粗銅や生活必需品を背負い運んだ男女の像が建ち、過酷な仕事が住友を生んだのであろう。本館内には食堂が有るのでここで昼食を摂ることにし、バスの時刻までしばし休憩する。

 

 09.本館入口

 10.山道を男は45kg、女は30kgの粗銅を運んだ

 

館内には新居浜名物の太鼓台が展示されているが、展示品は子供用とあり、本物は2トンもある大きく豪華な太鼓台である。二階には世界一高品位の金鉱山である鴻之舞金山から住友鉱山が掘り出した金鉱石が置かれ、この岩には2,600万円分の金が眠っているとある。これを盗むのは無理かな。奥には毎年元旦に先ほど見かけた大山積神社に奉納する大きな粗銅が稲わらで美しく飾られ展示されている。稲わらを上手く使った見事な造形で、鉱山にも美に優れた人たちが居たのだ。

 

 11.これでも子供用の太鼓台

 12.この岩一つで2,600万円分の金が混入

 13.元旦の大山積み神社に奉納された300キロの粗銅の塊

 

13時50分発のバスに乗り、新居浜駅に向かう。駅で先日のゆるキャラ選手権で日本一になった「ばりいさん」のグッヅを買い帰路につく。ばりは今のバリで頭の天辺には来島大橋が乗っかっている。こんな物が日本一になるのかネ?

本日の歩行距離:11.3km。調査した橋の数:19。

総歩行距離:5,349.5km。総調査橋数:8,741。

使用した1/25,000地形図:「新居浜」(高知9号-3)、「別子銅山」(高知9号-4)