兵庫-8. 武庫川(その1) 平成24年9月2日(月)晴一時雨

先日の篠山川で播磨の川の遡行を終え、今日から摂津の川「武庫川」に挑戦する。播磨と摂津の境界は須磨の西方で、六甲山系南麓からは多くの川が流れているが、何れも短い川で遡行基準に適合しないのでパスし、兵庫県最後の川で県管理の大河「武庫川」に落ち着いた。本来は河口から遡行するのが常であるが、青春18切符の利用期間中は出来るだけ遠方に出かけること、篠山川遡行で何度も武庫川沿いの福知山線を利用し、武庫川の全貌が先に分かってしまったこと、から源流部付近から歩くことにした。先に上流部に電車とバスを利用して行ってしまうと見知らぬ土地に分け入る面白さが希薄になってしまう。
篠山口の一つ手前の駅、「南矢代」駅に降り立つ。8両編成の快速から駅に降りれば、無人の閑散とした駅ではあるが、自動改札装置が設置されている。朝6時過ぎの無人状態の庭瀬駅からこの駅まで切符がなくても利用が可能な状態である。

 01.これでもイコカが使えます

駅の北側の踏切を渡ると直ぐ東側には武庫川本流に合流する「田松川」が篠山口方向から南にゆったりと流れている。地形図でよく見るとこの川は、ここから2kmほど北で一つの川が南北両方向に流れる珍しい川である。北に流れた川は篠山口駅の前を通り、事故地点の直ぐ東で篠山川に合流する二股をかけた川である。これも分水嶺の標高が低い兵庫県東部の川の特徴を代表している。

 02.田松川はゆったりと南に流れる

東北東方向の真南条集落に川の土手の草茫々の道を進む。草に足を取られないよう、足を高く上げ兵隊さん歩きをする。「オイッチニ、オイッチニ」。最初の橋の親柱を見ると、「真南条川」と川名が書かれ、田松川との合流点から上流は地域名が川名になっている。武庫川は真南条川の源流部の標高が280mと低く、延長は65.7kmもあり河川勾配が極端に緩やかである。
途中の橋「願勝寺橋」の彼方には橋名の寺が見える。賭け事の好きな人はどうぞ!

 03.願勝寺橋と同寺

川の南側の丹波と摂津との国境の山から多くの小川が合流するので川幅は一挙に狭くなり、最後の真南条上集落まで来ると川幅は3m以下となり、遡行はここまでとする。復路は川の南側を通る国道372号の歩道を歩くことにする。両側に歩道と並木が続く快適な道である。サイレンの音が近づき先日お世話になった救急車が通過する。ありがとさん。足元の所々に笹ユリの白い花が咲き、こんな国道に百合の花とは!地獄に仏ならぬ百合の花。路側には「デカンショ街道」の大きな木柱が建っている。この国道は味わいのある道でエエナー。

 04.お世話になった救急車が通り抜ける

 05.国道脇に百合の花が

 06.国道372号はデカンショ街道

昼時であるが、屋根と座れる場所が無さそうなので近くの南矢代駅に南側の踏切から駅に向かう。狭い駅舎のベンチでお握りを食べ、踏切で見つけたローソンに立ち寄る。クールダウンと飲み物を買い、本当の武庫川の下りに出発進行。
昨日は長く続いた30度以上の気温が下がりホットしたが、今日は再び暑さがカムバック。水分補給とタオルの使用頻度が上がる。川沿いを下り再び国道と再会するが、武庫川を渡る橋「舟瀬橋」は上下二本あり、それぞれに1車線と歩道が有る。車道よりも歩道の方が広くなんとも贅沢な橋である。1本の橋と狭い歩道橋で十分なのに。

 07.歩道の方が車道よりも広い

国道と福知山線はこの先の狭い谷間を避け、西側の広い谷間に逃げて行く。後から建設された高速道の舞鶴若狭道は「あなた達こっちを使わないなら、私が使うわヨ」と言っているようだ。途中から空は晴れているのに雨が降り出し、日傘にもなる傘がその効果を発揮してくれる。
天神川が合流する地点で三者は再び一緒に南に向かう。176号となった国道が渡る橋の親柱には蛍が寄り添い、汚れがおしっこをしたように見える。周りの田圃では稲刈りの真っ最中で、今日は日曜日で兼業農家にとっては忙しい。

  08.蛍がおしっこをしているよ

 09.日曜日、早くも稲刈り

今日は「藍本」駅まで歩く予定であったが、真南条への往復に時間がかかり、一つ手前の駅の「草野」駅がモウいいよと手招きしているので、ここまでとする。福知山線と武庫川はつかず離れずに並行しているので、川沿いの歩きにはもってこいで、駅間隔も比較的短く有り難―い線である。
最新鋭の225系に乗り帰路につく。途中大阪駅に立ち寄り地形図の補充をして再度新快速に乗り込む。

 10.草野駅に新鋭電車が進入

 11.これが大阪駅の大屋根

今日の歩行距離:12.5km。調査した橋の数:19。
累計歩行距離:2,020.3km。累計調査橋数:2,536。
使用した1/25,000地形図:「篠山」(京都及大阪14号-2)、「藍本」(京都及大阪15号-1)

兵庫-8. 武庫川(その2) 平成24年9月5日(水)晴

先日の折返し点の草野駅にいつもの電車を乗り継いで降り立つ。今日も暑くなりそうで、電車からホームに出たとたんに汗が湧き出てくる。川沿いの狭い道を南に向かうと、前方に高速道路「舞鶴若狭道」の高架橋が谷間を横断している。今や日本のどこでも見かける個性の無い姿である。かつて中央道の建設に従事していたころは東名と中央道の最盛期で、新規五道(東北、関越、北陸、中国、九州)の建設が始まったころで、こんな所に高速は考えてもいなかった。

 01.舞鶴若狭道が谷間を横断

橋を潜り国道176号に合流し後ろを振り返ると「丹波の森街道」なる大きな木製の碑がデンと建っている。この国道は我が故郷、梅新から宮津までの国道で十三、豊中、池田、宝塚、三田と通過していく懐かしい道である。直ぐの細田橋を渡れば丹波から摂津に入り、三田市となる。

 02.丹波の森街道は国道176号

 03.細田橋を渡れば摂津国の三田市へ

国道は川と付きあって屈曲の厳しい谷間に入るが、鉄道はカーブがきつくなるため独自の道をトンネルで進む。再び三者が一緒になる地点で入母屋の破風に家紋を付けた立派な佇まいの家が並んでいる。三田に入ってからは立派な同種の家と度々お目にかかる。藍本地区の川沿いに河川改修の解説板が立ち、自然の動植物に優しい改修をした様子を示している。

 04.入母屋屋根の破風に家紋の入った家が続く

 05.自然を配慮した河川改修の説明板
国道の大安橋を過ぎるとこの川の最大の見どころの大蛇行部に入る。国道もさすがにこのじゃじゃ馬娘とは付き合いきれず、一直線に大安橋から広野に向かう。福知山線は当然しばし独自のルートを開拓してじゃじゃ馬と袂を分かっている。

 06.大きく蛇行する武庫川

北の方向を見れば周りの山々を睥睨するような虚空蔵山(H=592m)が聳え、丁度特急「コウノトリ」が通過したのでカシャ。続いて快速もやってきたので再度カシャ。

 07.彼方の虚空蔵山(H=592m)と特急

 08.続いて丹波路快速が通過

川沿いの桜の剪定作業をしていた地元の人に「この川はこの先360度曲がるすごく蛇行する川ですね」と言うと、「ソウデンネ。この辺りは曲と言いまんね」と懐かしい関西弁が返ってくる。行き止まりのような川の小高い丘に登ると、小さな祠の傍らに館跡の解説板が有り、その最後には「三田市曲区」と書かれている。間違いなし!

 09.この先流れは360度曲がる

 10.曲がり角にあった案内板に「曲区」の字が

川は南から西に、そして大きく360度変針し東に向かう。「取り舵、イッパイ、イッパイ」「ヨーソロー」。汗を拭き拭き桜並木の道をひたすら東に向かう。武庫川の土手には桜並木が延々と続き、車窓からも見えたが、多分今までで一番桜並木が続く川であろう。春にもう一度歩きたい川である。

 11.土手の桜並木が延々と続く

上本庄地区で川は南に変針し、谷間を緩やかに流れているが、当方は暑さにただ惰性で歩いている状況となる。良く似た橋が続き、再び西に方向が変わった所の「生宝橋」の前を見ると「曹洞宗霊椿山生寶寺」の大きな寺名の入った石碑が建っている。横には椿の木がこんもりと立ち、コスモスも咲いている。暑いが秋の到来を感じる。

 12.曹洞宗霊椿山生寶寺の入口には椿木が

川は本来の南方向に変わり、とぼとぼと歩き県道309号の「大橋」で近くの本庄小前バス停に向かう。丁度自販機もあったので地獄に仏と飲み物をちゃりん。出来れば広野駅まで歩くつもりであったが、こうなることも予想して予めバスの時刻を調べておいた、丁度バスが来る時刻なのでここまでとしてバス停の日陰でクールダウン。やがて授業の終えた1年生5名が担任の先生とバス停にやってくる。今日歩いた所の説明をしているとバスがやって来て乗車。子供たちは3つほど先のバス停で下車し、貸切状態で新三田まで乗車する。

今日の歩行距離:14.3km。調査した橋の数:22。
累計歩行距離:2,034.6km。累計調査橋数:2,558。
使用した1/25,000地形図:「藍本」(京都及大阪15号-1)