岡山2-8-3.油野川(三室川)平成27年10月9日日(月)曇り時々晴れ

(はじめに)

退職後始めた徒歩による川の遡行と川に架かる橋の現況調査を始めて5年余。岡山県内全ての河川の調査に2年、更に香川、徳島、愛媛、高知と四国へ、広島、兵庫、大阪の瀬戸内海に注ぐ川へと広がっていきました。道路橋の5年毎の点検制度が始まりその必要性を疑問に思い、岡山の5年後の状況を見るため2回目の遡行を始めて1年。本文は遡行後に勝手気ままに書き記した紀行文の一部です。気楽に駄文と写真を御笑覧ください。

先ずは岡山県2回目の遡行の高梁川の最後の支流の油野川です。

高梁川流域遡行最後の川となる「油野川」に出かける。この川は岡山、鳥取、広島3県の県境に有る「三国山」(H=1,129m)の東山腹から流れ、上流部は「三室川」と名乗り、途中の上油野で支流が合流する地点から油野川となる川である。伯備線足立駅付近で高梁川の一次支流の西川に合流する川である。岡山県にはもう一つ三国山が有り、岡山(美作)と鳥取の二国(伯耆、因幡)の3国の境に有る山である。三国山は全国各地に多く存在する。

足立からの新見市営バスのダイヤを考え朝遅い旅立ちとし、新見駅で米子行きワンマンカーを待つ。ホームに入って来たのは先日乗った小型気動車のワンマンカーである。電化路線なのに昼間は小型の気動車である。JR四国は1両用のワンマン電車を備えているが、西はここまで編成が短くなることは考えていなかったのだろう。

 image1 01.電化路線に気動車が走る!

11時36分足立で下車し市バスの乗車予定地の郵便局前まで急ぎ足で県道8号を急ぐ。油野川沿いに進む県道12号との分岐点に立つ標識には川名と同じ地名が書かれている。局まで来ると直ぐに市バスがやって来て乗車。きわどいタイミングである。先客1名との2名で川を遡る。

5年前と同じ終点の「三室上」で下車。運賃は100円也。バスで登って来た県道109号を下る。三室上の標高が630m。終点の足立駅が320mで300m以上の下りとなる。

 image2 02.目的地の地名と川名が一緒

 image3 03.駅からここまで歩くと直ぐに市バスが

 image4 04.秀典「三室上」で下車

直ぐに大量の薪を綺麗に積み上げた建物に差しかかる。煉瓦造りの煙突も有る。何処かで見た景色である。そうだ焼き物の薪だ!隣の建物には「備前焼 三国窯」と書かれた看板が掲げられている。ここは窯元なのだ。それにしてもここは備中なのに備前焼と言っていいのかな?場所では無く陶芸のジャンルとしてのブランド名と理解しておく。伊部の有名な窯元で修業して来られたのだろう。

 image5 05.大量の薪が保管されている

 image6 06.備中で焼いても備前焼きなの?

下り道をどんどん下り後ろを振り返ると左右対称形の山が見える。地図に名前は書いていないが、市バスの運転手さんに聞いたら「三室富士」とのことで、この山の西側に三国山が有り、その姿は見えない。秘仏の御本尊の前に立つ前仏のようなものだ。

 image7 07.地形図に名が無い三室富士

少し平地が広がった所にかつての小学校の敷地が広がり、プールはそのまま残っている。こんな奥にも学校が有ったのだ。下油野にある油野小学校の三室分校だったのだ。

やがて南側から青笹川と県道12号が合流し、道は12号となる。バス停名は三室口である。

 image8  08.油野小学校三室分校跡

 image9 09.広島県東城からの県道12号が合流

道路沿いに新郷町の地図が残っている。ここから下流は三室峡と称する渓谷で、渓谷の大半はダム湖となった。県道はダム工事のため付け替えられ、川との高度差が大きくなる。見晴らしの良い広場にはトイレもあり助かる。

 image10  10.三室口に有った神郷町の地図

 image11 11.付替えられた県道から三室渓谷を見る

県道沿いには秋を代表する日本らしい草花である萩とススキがたなびいている。中秋を感じさせてくれる。

唯一の長さ289mの三室峡トンネルに入る。総幅6m、両側の歩道はそれぞれ0.5mほどで、交通量の少ないトンネルであるが歩きやすい幅の歩道が付いた程よいトンネルである。最低限の2車線を確保している。

 image12  12.秋を代表する萩とススキが

 image13 13.総幅6m、歩道0.5mの丁度良いトンネル

湖岸の木々の中には早くも紅葉が始まっている。季節は確実に変わって行く。

 image14 14.早くも紅葉が始まった

湖面が見え隠れしていたがやっとダムに着く。平成18年に完成した三室川ダムは岡山県営ダムとしては新しく、洪水調節の役割も持ち、常時満水状態から更に13mの高さ分の洪水調節が出来る。常時満水量に近い洪水量がここで阻止出来るダムのようだ。高さが75mもある背の高いダムである。ダムコンクリート量が当方が関わった備讃の4Aアンカレイジの気中コンクリートとほぼ同じ量なのは奇遇である。

 image15 15.高さ75mの三室川ダム

 image16 16.洪水時の余裕が13m有るダム

 image17  17.平成18年完成の新しいダム

ダムを過ぎると県道は元の県道に向かって下って行く。日本には珍しいΩループで下る道で、先ほどの市バスが足立に向かって当方を追い越し下って行く。車内には数名のおばあさんたちが乗っている。昼過ぎなのに何しに行くのかな?

 image18 18.Ωループを市バスが下って行く

県道の改良区間に架かる橋の親柱には、町の花であった石楠花と備中神楽のスター達が橋毎に変わり現れる。全員がこの地区に集合だ。

 image19 19.県道12号の橋には神楽のスターが次々と

旧道と一緒になった県道は上油野で90度方向を変える。交差点の角には面白い屋根を持ったバス停が目につく。二重屋根であるが内側の屋根はお飾りかな。

 image20 20.二重屋根が面白いバス停

北西からの流れが南西からと変わり、県道も付き合って行く。2kmほどで下油野に着く。多くの家が建つ集落の北側の丘の上に屋根が輝く大きな寺が建っている。道路際で畑仕事をしていた人に寺名を聞くと、「曹洞宗 金蔵寺」とのことである。同名の寺が四国88か所にも有る。下から見ればこちらの方が立派な寺に見える。これも大事なことなのだろう。

 image21 21.下油野集落を見下ろす「金蔵寺」

集落から対岸に渡る市道橋が△から◎になっている。薄い緑青色の桁の色とコスモスのピンク、白色が良く似合うよー。川沿いに下り寺を見れば、日本らしい景色が現れ童謡を口ずさみたくなる。

 image22 22.ピカピカの橋の色にコスモスが似合う

image23 23.兎追いしかの山、小鮒釣りし・・

道と川はUターンしたように大きく曲がる。重藤地区に架かる県道橋の内の一つは、前回には橋名板が盗難に遭ったのか無かったので名無しの権平にしていたが、「阿波橋」と新しい板がネジでは無く溶接で留められている。土佐は繁藤、ここは重藤に阿波と面白い。

 image24 24.盗まれた銘板が復活して名前が分かった

最後の渓谷を進むと彼方に伯備線と県道8号が見える。ふりだしに戻って来た。交差点を右折し直ぐの足立駅に向かい、15時15分到着。下り道のお蔭で15時36分発の列車に上手く間に合った。直ぐに下り特急がやって来て運転停車。5分ほどで上り特急もやって来てこちらも一時停車。狭いホームを挟んで特急が揃い踏みである。撮り鉄なら随喜の涙を流しているだろうが、当方は冷静にカシャ。

上り新見行きワンマンカーは昼前に乗った同じ箱で、米子からの帰路の気動車である。3分遅れの新見駅で同じホームの向かい側で待っていた3両の電車に乗ると直ぐに発車。慌ただしく備中の遡行はこれで完結である。

 image25 25.ふりだしに戻って来た

 image26 26.上下特急が足立駅で交換

本日の歩行距離:12.8km。再調査した橋の数26。

総歩行距離:8,498.3km。総再調査橋数:1,400。

使用した1/25,000地形図:「油野」(高梁10号-4)、「足立」(高梁10号-2)

  • 橋の現況調査にあたり鋼橋についてはその目視状況により◎、○、△、×と判定している。コンクリート橋については近接目視などをしないと判定は出来ないので記載はしていない。