広島-5. 太田川(その5) 平成23年10月2日(日)曇り
広島まで新幹線こだまに乗り宮内串戸駅に8時21分に到着。この駅も自分の駅名ボックスには無い新しい駅である。駅のホームは新設駅共通の狭いホームで通過列車に注意が必要である。
image1 01.狭い宮内串戸駅ホーム
8時30分発の吉和行き広電バスに乗り込む。庭瀬5時25分発の初電では8時28分に着き、少しでも電車が遅れるとバスに間に合わなくなる恐れがあるため、止む無く新幹線利用とした。1日に3本の吉和行きバスで午前中に乗れるのはこの便だけで、このバス利用が今回の2泊3日の遡行のキーとなった。本来なら前回の最終地点の加計から再開すべきなのであるが、宿の場所と営業の有無を調べた結果逆回りの川下りと相成った。
バスは廿日市市街から西に向かい、二回峠を越え「小瀬川」の上流の山口県境近くの渓谷を遡り、冠高原に着く。1時間強の後半は乗客1名の変化に富んだバス旅で、太田川源流近くの「一軒家」バス停で下車。標高は700m、広島県第二の高峰(?)「冠山(H=1,339m)」の南麓で冠山は見えない。直ぐ近くを中国道が通り長い冠山トンネルの向こうは山口県錦町である。これから下る旧吉和村の案内図で行路を確認する。
image2     02.吉和地図
前回も利用した国道186号を吉和に向けて下る。車は少ないが二輪車のグループが何台も我が物顔に早い速度で通り過ぎて行く。傍らの川沿いの森にはブナも見られ深山の趣がある。
image3    03.ブナ林
やがて源流部から上流部となり、人家や田畑が現れマンホールも現れる。今は廿日市市になったが人口800人程度の小さな村にも公共下水道が整備されているのには驚く。太田川は岡山三大河川に較べ上中流部に大きな町が無く、谷間も狭く人口、田畑も少ないせいか川が綺麗である。下水道整備も川の美しさ確保に役立っているようだ。
image4    04.旧:吉和村マンホール
村の中心に近づくと吉和中学と小学校が一緒になった学校がある。それぞれの学校名と校章が玄関にあり、実質9年制学校となるが、校長先生はそれぞれおられるのかな。
image5    05.吉和小、中学校
村の中心部には支所(役場)、病院、高齢者施設、郵便局、JA、万屋が集中し、中国道の吉和ICも直ぐ近くにある。ここには吉和SAもあり、高速道路の恩恵を大きく受けている。広島から1時間以内で標高700mの高原に来られるのは大きいメリットである。SAでの物品販売、雇用の拡大も村にとっては大きいと思う。広くなった盆地の川の土手を歩くと、高さを感じない冠山が見え、眼前には大きく裾野を広げたなだらかな女鹿平山(H=1,082m)が広がる。この山にはスキー場もあり、広島から1時間でスキー場に到着できる。
image6    06.女鹿平山(H=1,082m)
今日はこの山の東山麓にあるホテルに泊まる。温泉、クアハウスのあるスキーリゾートホテルで、遡行で泊まるのにはもったいないが他に宿泊可能な宿がないのでここにした。
 今日の歩行距離:10.1km。調査した橋の数:10。
累計歩行距離:520.5km。累計調査橋数:720。
使用した1/25,000地形図:「安芸冠山」(広島14号-3)、「湯来」(広島14号-1)
広島-5. 太田川(その6) 平成23年10月3日(月)晴れ

朝6時の気温は8度。標高が高いせいもあるが今朝は11月の気温で秋の気温変動はすさまじい。昼のおにぎりをお願いしたが、今日は休館日なので出来ないとのつれない返事。今日は人跡希少の道と距離が長いのでどうしようかと思案していたら、まもなく館の点検作業に社員が来るので、その人の車で村の中心部のコンビニ(風)にお送りしますので、そこでおにぎりを、との有り難い声。7時の朝飯の後その車に乗せてもらい、昨日の歩いた道を戻り中心部の店へ。何時ものようにおにぎり2個を買い、宿の前まで戻ってもらう。これで往復4kmの歩行をせずに済んだ。
今日のルートは太田川遡行のハイライトで、ここ吉和と戸河内の間本流は大きく北側に曲がり狭い谷間を分け入る。国道と中国道はこの狭い谷間を嫌い、ほぼ真っ直ぐに支流沿いの比較的広い谷間を通る。ホテルからほどなく谷間の入口が現れ、県道も1車線の狭い道となる。大雨時の通行規制告知板もあり覚悟して歩く必要がある。狭い谷間の道の両側は見事に手入れのされた杉林が続く。

image7  01.県道296号入口

image8 02.杉の美林
熊の出没季節到来で熊の出そうな車も人も通らないうす暗い道を進み、細見谷川に向かう林道に下り橋を調べ、川の合流点の写真をカシャ。まるで黒部川の雰囲気である。
県道に戻り更に進むと、十方山(H=1,328m)と瀬戸の滝に向かう登山道の入口に着く。名は体を表すので山頂からは四方八方が良く見えるのであろう。こんな所に立派なトイレがあり、ビックリする。西中国山地国定公園の中ではあるがこんなに綺麗なトイレもあるのである。

image9 03.本流と細見谷川の合流部

image10 04.瀬戸の滝入口のトイレ
更に進むと細長い「立岩ダム」のダム湖が現れ、曲がりくねった道を小一時間ほど歩いてやっとダムが現れる。中国電力のダムで湖の水を3km先の打梨発電所までトンネルで送り、落差約50mを利用して発電する。発電に利用された水は直ぐ下流の小さな鱒溜ダムから再度トンネルで戸河内の先の土居発電所(落差約100m)に送られ、更に下流の発電所に延々と送られ三段跳びで利用されている。田畑や人家が少なく、川が屈曲しているため発電にうまく利用されている。
ダムの近くの県道に押垰断層帯の解説板が有り、説明されている方向を見るとなんとなくそれらしき地形をしている。こんな所の断層を見つけるとはたいしたものである。

image11  05.立石ダム

image12 06.押垰断層帯解説板
ダムを過ぎ歩き出して2時間以上たってやっと車に出会う。中電のパトロールカーで、この間人家も田畑も無かったが、やがて数軒の人家が現れ再び狭い谷間に入る。川にせり出した山が深山幽谷の風情を醸している。
打梨発電所の水圧鉄管は3本もある本格的な発電所である。

image13  07.本流と山

image14 08.打梨発電所
何処まで続くのかと思われる大きく屈曲を繰り返す川もやっと里に降りてきたようで、小さな集落がポツン、ポツンと現れ、谷間が広がり三段峡から流れて来た柴木川に出会う。ここまでが県管理区間でここから下流は国管理区間となる標識がある。太田川の国管理区間は60kmほどもあり長い。岡山三大河川はそれぞれ30km程度で、国の取り組み方から見ると太田川の方が格上の扱いである。合流点の先端には神社があり、川と神社との係わりが深いようだ。

image15  09.河川管理境界標

image16 10.柴木川との合流部(左本流)
ここまで20kmの歩きで出会った車は一桁。遡行には天国のような道で、先日の国道とは大違いで、天国と地獄との差が有る。天候も良く3,000キロに及ぶ遡行でのベスト5に入る区間である。今日は廃止された戸河内駅前の駅前旅館に泊まるが、今やこういう旅館は希少である。
 今日の歩行距離:21.8km。調査した橋の数:14。
累計歩行距離:542.3km。累計調査橋数:734。
使用した1/25,000地形図:「湯来」(広島14号-1)、「戸河内」(広島13号-2)
広島-5. 太田川(その7) 平成23年10月4日(火)快晴
旅館の前の益田方面からの国道191号線を夜中もトラックがぶっ飛ばす音に何度も起こされ、天国だったホテルから国道脇の木賃宿の騒音に睡眠不足で起きることにする。旅館には山口国体に参加する射撃の高校生が宿泊しており、ここ戸河内だけが射撃会場として県外唯一の会場地となっていると宿のおかみが言う。朝6時に高校生と一緒に朝食を食べ、昨日より更に寒くなった薄暗い国道を下流に向かい歩きだす。
戸河内は加計などと合併し安芸太田町となったが、旧戸河内町のマンホールをカシャ。町の一大観光地、三段峡の滝もデザインに取り入れられている。市町村が発行するミニバイクなどのナンバープレイトに土地の名物、景色、動植物を組み込むことがOKとなり、これからはこれらのプレイトに出会う楽しみも増えた。岡山では、雪舟が寺の小僧の時に廊下に涙で描いたネズミが取り入れられているのがテレビで紹介されていた。
可部線の戸河内駅はすっかり跡形も無い状態であるが、1枚の駅名板が残されていた。

image17  01.旧:戸河内町マンホール

image18 02.戸河内駅名板
朝もやの残る谷間を進むと、落差100mの三本の水圧鉄管が目立つ土居発電所が右岸側に現れる。発電所からの水は何処からともなく現れ、直ぐまた近くの堰で取水され遥か先の発電所に送り込まれる。1mも無駄にしないぞ。
谷間が更に広がると吉和からの国道186号と中国道も現れ、道の駅とインターがここぞとばかり貴重な平地を使用している。昨日の長い歩きと靴が足とうまく合っていなかったのか足裏に豆が出来、足を引きずりながら歩く。
今日は快晴、明日は雨の天気予報で一昨日遡行に出発したが、最近の予報は良く当たる。インターの裏側の川沿いを歩き、川を二回渡る中国道を下から見上げ、そろそろ塗装の塗替え時期だと判定していると、下り車線側では塗替え工事の真っ最中であった。
歩道の無い国道の川向かいに道路があればそちらの方に避難し、町道を歩いていると道の上の山裾の石垣の上にモミジと彼岸花に守られた墓を見つける。洪水にも負けない高さのこんな川を見下ろす所の墓はいいナー。

image19 03.土居発電所

image20 04.川沿いの山裾の墓
足は痛いが快晴の気持ちの良い空の下太田川は流れる。国道に戻るため町道から国道に向かう橋に向かうと、橋の上の真ん中で夫婦らしき二人が魚を釣っている。なかなか動かず近づくとこんな所に案山子が二体。田圃で見かける案山子が橋の上で交通安全を呼びかけている。これも珍百景物である。
 image21 05.橋の上から魚吊りの夫婦
予定していた加計の手前の木坂バス停で広島行きのバスを待つ。10分以上も遅れて来たバスには老人が一杯。途中の加計病院からの乗車に時間が掛かったのだろうと推測する。少しずつ下車を繰り返し、遅れは更に広がる。途中から乗車した老人は95歳で、よくも一人だけでバスに乗れるものと感心する。可部付近からもこまめに乗車が続き、横川駅前に着いた時には30分の遅れとなった。これで太田川の遡行は無事完了。次は最初の大きな支流「三篠川」を目指すかナ。
 今日の歩行距離:10.6km。調査した橋の数:10。
累計歩行距離:552.9km。累計調査橋数:744。
使用した1/25,000地形図:「戸河内」(広島13号-2)、「坪野」(広島9号-4)、「加計」(広島9号-3)