高知2-7.梼原川(その1)及び2-7-1.中津川

 平成26年5月8日(木)曇りのち晴れ

四万十川の主の「こっちをほったからしにして仁淀川に行くのはええ加減にせー」との声がしたので、今日は久しぶりに四万十の支流に向かう。支流6番目の久保川と7番目の大支流の梼原川のとっかかりとその孫支流の中津川の三つをどのように回るか、天候とバス便などを考慮し複雑な三次方程式を解き順番を入れ替えて歩くことした。先ずは四万十最大の支流である「梼原川」をちょっとだけ歩き、中津川の合流点の大奈良まで遡行し先に中津川を片付けるのである。窪川からの予土線のダイヤは利用しにくく、南風1号では窪川から宇和島行きが出た後に窪川に着くので3号利用とする。窪川で30分ほど待ち乗車。列車は予土線3兄弟の長男格の海洋堂ホビートレインである。模型製作メーカーの海洋堂が提供している物で、車内には恐竜やアニメのキャラ等の模型が陳列されている。3駅先の打井川駅から川を遡った辺鄙な所に海洋堂の展示施設がある。

土佐大正駅に13時51分到着。遅い遡行を開始する。街中を歩いて行くと街角に「四万十川焼酎銀行」なる銀行そのものの建物が建っている。冗談かマジなのかの区別がつけにくい。ここ大正地区は焼酎の製造が盛んで、そのPR展示施設なのであろう。時間が無いのでパスして先を急ぐ。

image1  01.予土線3兄弟の長男、ホビートレインの車内

image2 02.焼酎銀行とは呑み助の土佐らしい

狭い市街地を抜け梼原川左岸に着く。合流点付近の橋は本流遡行時に調査済みなので二つ目の大正橋から開始する。合流点の前後で東西に走る国道381号と南北の国道439号が暫し重複する区間となる。昭和3年完成の大正橋はまさに大正時代の産物である。直ぐ際には川のこの先の名所までの距離が分かる標識が有る。今日はこの内の2か所に行くことになる。北側には予土線のコンクリート橋とその直ぐ奥の国道381号の橋が見える。かつての鉄道橋は鉄橋と言われ鋼橋が当たり前であったが、昭和40年代以降に施工された鉄道橋にはコンクリート橋も仲間入りしてきた。コンクリート橋でも鉄道橋の場合は鉄橋と言うので混乱する。昭和49年に全線開通した四万十川に架かる予土線の橋にもPC橋が数多く有る。

image3  03.これからの梼原川の名所案内

image4 04.予土線の橋はPC橋

橋を潜ると国道脇に大正町の観光案内板が建っている。町の下端に四万十川が、南北に細長く上から下に梼原川が流れ、左下隅で合流している。直ぐに二つの国道の分岐部となり、当方は真っ直ぐ与作の道を進む。先週に続いて与作と付き合うことになる。与作は四国の三大河川の全てを通過し、四国を斜めに横断し何度も峠を越える四国らしい国道である。「与作が川を登るー、ゴゴゴー、ゴゴゴー」である。

image5  05.旧大正町の観光案内板

image6 06.本流沿いの381号と梼原川沿いの439号の分かれ道

川は本流に負けないだけの幅、水量が有り、長さ63キロ余りの支流で、この先中津川、北川、四万川と大きな二次支流もあり、遡行超難関区域である。国道は2回蛇行する川を嫌い、二つのトンネルと橋でこの間を串刺しにして短縮している。

image7  07.本流に負けない風格が

image8 08.橋とトンネルが交互に

渓谷が広がると大奈良地区で、ここで中津川が東側から梼原川に合流してくる。河原には黒い岩がごつごつと並び、四国は細い幅で色々な岩種が現れる。地区の北側の橋を診て中津川の方に方向を変える。

image9  09.大奈良で中津川が合流

image10 10.右から本流に合流する

大奈良集落の中を通過する旧道に入り古い橋を診る。親柱の石に彫られた橋名は何とか読めるが、完成時期は風化が進み読み取れないが昭和3年か?上流側には狭い道と古くなった橋を避けるためのバイパスと新橋が架けられている。

いきなりの坂道を登り新しい橋、天満橋に来ると橋の半ばにもう一つの橋が枝分かれし神社に延びている。珍しいT型橋である。広島の本川に架かる広電も通る橋から平和公園に行く枝橋が有ったのを想い出す。

image11  01.大奈良集落を避けたバイパスの橋

image12 02.橋の途中から神社への道が分かれている

ここの所大河ばかりを歩いて来たので中津川は子供のように小さな川に見える。高低差の大きい堰の右岸側の無数の階段が作られた魚道の水が楽しそうに踊りはねながら流れ落ちている。

川沿いの道は旧大正町の町道で、上流部で長いトンネルで隣の梼原町の松原と結ばれており、一見県道と思ってしまう。大半は1から1.5車線の道路であるが、一部拡幅改良工事も行われ、対岸のバイパス区間の切土法面は一面の法枠工が施工され、よくぞ同じ構造で一山覆ったものである。

image13  03.堰の魚道が美しい

image14  04.よくぞここまで作ったり

渓谷が一層狭まると足元にとっくり淵と書かれた碑が建っている。幼木が生い茂り川が良く見えないが、徳利の形をした淵なのかそれともとっくりと見る値打ちのある淵なのか分からない。

image1505.「とっくり」とは徳利か、それともとっくりとご覧あれか?

やがて渓谷が大きく蛇行する地点に差しかかるとこの辺りの山が「風景林」のようで、聞き慣れない用語だが見た目が美しい森林を指すのだろうか?蛇行の根元のトンネルを潜ると風景林に向かう道が川沿いに延びている。足元には今度は「せこっと淵」と書かれ、これまた意味不明である。土佐の人以外にも分かる言葉を使ってくれー。

image1606.風景林とは聞き慣れない言葉だ

image1707.この山の森林が風景林とのこと

image1808.「せこっと」とはどう言う意味?

大奈良から150mほど渓谷を登って来ると突然視界が広がる。中津川集落のある広い谷間である。この集落のため路線バスが1日3往復も在るのだ。集落は東側の河岸段丘の上に広がり、川には西側の民家に繋がる沈下橋も見える。

image1909.河岸段丘に中津川の集落が広がる

町道から沈下橋に向かうと橋の手前に解説板が有る。橋の名前は「サワタリ橋」とカタカナ表記である。沢渡とすれば良いのにと思うがどうなのだろう。他に橋が無いので対岸の人にとっては大事な大事な橋である。

image2010.サワタリ沈下橋の解説板

町道に戻ると閉店した酒屋の軒下に立派な大きなベンチが有ったのでここでバスを待つことにする。ここまで座れる場所が無かったので有り難い。

この地域を走る「北幡観光バス」は高知県交通の分社化された多くのバス会社の一つで、土佐大正駅を中心として四万十川とその支流の集落を結ぶミニバス会社である。少し上流の森ケ内と大正とを繋ぐ1日3本の最終便を待つ。下から上がって来たバスが通過し、15分ほどすると上から降りてきて乗車。今日も貸切で今宵の宿の近くの小石バス停近くの橋の袂で18時30分下車する。この会社の路線バスは全てどこでも乗車、下車できる珍しいバスである。その代りバス停標識は無く、本当にバスが来るのか不安になる。

image2111.大正駅行き北幡観光バスに乗車

今日の歩行距離:13.0km。調査した橋の数:9+10=19。

総歩行距離:7,128.4km。総調査橋数:10,811。

使用した1/25,000地形図:「田野々」(宇和島1号-2)、「土佐松原」(宇和島1号-1)