徳島1-7.祖谷川(その2平成25年1月29日(火)快晴

今朝も早起きして坂出駅で企画割安切符を買い大歩危駅に降りたつ。吉野川遡行時に利用した駅で、駅舎は祖谷地方の民家風で風情がある。

image1 01.大歩危駅は祖谷の民家風

暫し待ち池田からやって来る奥祖谷の久保行き四国交通バスに乗車する。1日4往復のバスであるが今日も貸切である。ドライバーは話好きではなさそうなタイプなので話しかけるのは止め、景色の方に話しかけることにする。昭和49年に完成した大歩危駅と西祖谷山村の中心である一宇を結ぶ県道の長いトンネルを目指し急坂を登って行く。このトンネルと2車線の県道が完成し、祖谷は秘境で無くなり大型観光バスがやって来るようになった。先日歩いた祖谷口からの道はとても大型バスがすれちがえるような道では無く、普通の観光客が来るような場所では無かった。標高550mにあるトンネルを過ぎると雪国風の景色となる。再び曲がりくねった急坂を一宇まで下って来ると雪は少なくなり四国らしくなる。

先日の折返し点である西祖谷局前で下車し、県道32号線をかずら橋の方へ歩き出す。無風快晴の好コンディションで足取りも軽く歩ける。有名なかずら橋までは2車線の道路となり、途中には観光地らしい宿や食べ物屋が点在し、先日の無人地帯とは大違いで天国と地獄のような差が有る。良く名前を聞いたことのある温泉宿も県道沿いに建ち、露天風呂にはケーブルカーに乗り、こちらは山の上の方に登って行くようである。建物の端の車庫には祖谷名物のボンネットバスが出番を待っている。まるで犬小屋からこちらを見ている犬のように見えてくる。直ぐの道の反対側にはタクシー会社が有り、派手な色のボンネットバスが2台も収まっている。ここはボンネットの宝庫である。

image2 02.一宇からは観光施設が続く

image3 03.こちらではケーブルカーで上の温泉に

image4 04.送迎バスもボンネットバス

image5 05.ボンネットバスが2台も有るタクシー会社

やがて県道は、県道沿いに集落が続くのを嫌い対岸に新しい橋で渡り、巨大な駐車場が谷間に忽然と現れる。橋の名前は「秘境祖谷大橋」とある。もはやここまでは秘境では無いぞよ。渓谷の景観にはそぐわない駐車場の足組は醜悪ですらある。かつて訪れた時とはまったく変わり、祖谷の素朴な風景はどうしてしまったのでしょうか?新しい橋の親柱には祖谷のかずら橋の写真がはめ込まれ、かずら橋様様である。

image6 06.新しい道と橋が対岸に延びている

image7 07.谷間に巨大な駐車場が出来ている

image8 08.親柱には祖谷のかずら橋の写真が

image9 09.これが祖谷のかずら橋だ

県道はこの駐車場までとなっており、かずら橋の隣の祖谷渓大橋に向かう。橋の直ぐ上流にかずら橋はあり、こちらの橋の真ん中にはかずら橋の解説板が設置されている。かずら橋は吊橋と分類されているが、ここから見ると吊り床版を複数の斜め索で支えている斜張橋と言える。かずらの耐久寿命は3年とのことで、3年毎に架け替えているようで、これが通行料500円という日本一高い有料橋となっている原因だろう。橋と言うよりは遊園地の遊具のような物と思えば高くはないのかもしれない。祖谷の名物はかずら橋に、粉引歌にでこまわし(田楽)、蕎麦にコンニャクに平家落人集落と、最近は温泉と都会生活者には異次元の世界であるが、今は簡単に秘境風気分を味わえるようになった。

image10 10.隣接した歩道橋には解説が

橋の入口には関所が設けられ山賊ならぬ管理人が通行料を徴収している。20年ほど前に歩いているので今日はパスし写真だけ撮っておさらばする。冬の平日の午前中なので交通量はゼロ。下が透け透けの木組みの床を恐る恐る歩いて500円分楽しんでいる人はいない。

image11 11.ここが関所でお一人500円もする

image12 12.橋は吊橋では無く斜張橋である

image13 13.床は下が透け透けの木組み

かずら橋から坂道を上り旧道に戻る。ここからは昔と変わらない1~1.5車線の秘境らしい道となる。先日の人を寄せ付けない雰囲気の渓谷から人当たりのよさそうな渓谷に変わり、緩い勾配の県道を歩く。あちらこちらで県道の改修工事が行われ、過疎地域唯一の産業は公共事業であることを身に染みて感じる。行き交う大型車の多くはダンプ、生コン車、資材運搬車でかつてのような材木運搬車は見かけない。過疎地に住む人の足と森と水を確保する道路の保全、改修は必要なのだ。

旧西祖谷山村から東祖谷山村に入る。渓谷を大きく曲がり流れる川を身近に感じ、やがて6つある発電所の下流から4番目の高野発電所と直下の低いダムが現れる。ダムの下の淵は見事なエメラルドグリーンで、四国北部の限られた幅に分布している緑石の醸し出す芸術作品である。

image14 14.高野発電所とダム

image15 05.ダム直下の水はエメラルドグリーン

今日は快晴で気温も2度と絶好の天候で、この水色を見ていると目と頭に優しく遡行冥利に尽きる。緑色の水面とうっすらと積もった雪が岩を覆う渓谷の中に大きな形の良い岩が川の真ん中にポツンと立っている。緑色の水を湛えた庭園を見ているようで、この景色をそっくり持って帰りたい。

image16 16.癒し効果のあるこの水の色は最高

image17 17.この岩も持って帰りたい

image18 18.緑色の渓谷が続く

小島川が合流する地点で県道は右岸側から左岸側にアーチ橋で渡り、直ぐにまた左岸側に戻る。一宇の県道45号の新祖谷大橋から多くのアーチが上流には架かっている。深い谷間には途中に橋脚が建て難く、一跨ぎできるアーチ橋は渓谷向けの橋である。

image19 19.祖谷川にはアーチ橋がお似合い

川沿いの旧道からトンネルで道を短絡する竜宮トンネルが現れ竜宮城を見るためトンネルの方に足を向ける。トンネルは予想外に長く、入口で彼方に見えていた橋はトンネルを出ると見えず通り過ごしてしまったようだ。戻る時間が惜しくここは1橋パスすることにして先を急ぐ。竜宮城を見ることは叶わず、橋を一つ見過ごし玉手箱を開けてしまったようだ。

大西橋を渡り左岸側に来るとやがて国道439号が支流の谷道川沿いに県道に合流する栃の瀬地区に到着する。予定ではこの先2kmの東祖谷山村の中心の京上バス停まで歩き14時40分のバスで帰路につく予定であったが、快調に歩いたため1本早いバスがこのバス停に間もなくやって来るので今日はここまでとする。先日のように何も無いバス停で1時間半も待つのは辛いので、これまでとする。直ぐ近くの祖谷川橋を見てバス停に戻る。国道と県道の分岐部にあるバス停には待合室とトイレが一緒の建物に入っている。

image20 20.この祖谷川橋で今日は打ち止め

image21 22.12時45分発に間に合う

image22 21.栃の瀬バス停は待合室とトイレが一緒に

間もなく12時45分きっかりに池田行きのバスが現れ乗車。来るときと同じ運転手さんであったが、先客の70歳前後の爺さんが3名乗っている。途中からも2名がご乗車で今日はバスらしい数となって歩いた路をバスは下って行く。今朝降りた西祖谷局前で5名は降り、バス停前の診療所に全員入って行く。再び貸切となり峠のトンネルを目指す。

大歩危駅からの特急まで15分ほどあるので、近くの店で祖谷名物の固い豆腐とコンニャクと蕎麦雑炊の素を土産に買う。駅舎のホーム側には柴犬の駅助役の写真、委嘱状などが張られ、勤務は日曜日の朝1時間と記されている。南海貴志線(現:和歌山電鉄)貴志駅の猫のタマ駅長から動物の駅長は全国に広がっているが、ここはJRで駅は阿波池田駅が管轄しており、駅長とすると池田駅長も困るので、ここは堅く助役にしている。

image23 23.犬の助役が活躍

image24 24.日曜日に1時間だけのパート勤務だワン

帰りの特急の車窓から南備讃瀬戸大橋の下を巨大船が通過しているのが見えたのでカシャ。工事中はケーソンから見た巨大船を今は特急の車窓から見、月日の流れを感じる。

image25 25.南備讃瀬戸大橋の下を巨大船が航行

 

今日の歩行距離:13.5km。調査した橋の数:11。

総歩行距離:5,535.4km。総調査橋数:8,984。

使用した1/25,000地形図:「大歩危」(高知1号-4)、「京上」(高知1号-2)