高知-1.吉野川(その8)平成24520日(日)曇り 

3日前と同じ列車を岡山、坂出、多度津、阿波池田と乗り継ぎ9時20分に土佐岩原駅に降り立つ。跨線橋の上から南に向かう単行を見やり遡行を開始する。

image1 01.土佐岩原駅を出発した須崎行き列車

これまで南北に四国山地を横断していた川は、徐々に西の方向からに向きを変え、谷間も幾分広く山も緩くなってくる。歩道が所々切れる国道32号を歩くが、さすが1級国道で車線も路肩も道路構造基準を満足した幅が有り、車道がなくても危険を余り感じないで歩ける。しかい今日は日曜日で次から次にバイクが通過し、多くの車が高速道に移転し、交通量の減った道を100kmほどのスーピードで駆け抜けて行く。広島の太田川源流部以来の大量のバイクに遭遇する。右岸側に大きく形がユニークな岩塊が新緑の木々を頭に載せている。土讃線の落石覆いも顔を出しているのでカシャ。

image2 02.見事な岩と新緑と土讃線

左岸を長く通っていた国道が右岸側に豊永大橋で渡り、豊永駅前を通過する。やっと纏まった集落が現れる。国道は再び長瀞橋で左岸側に移り、豊永だけの為に2本の橋を奮発したようだ。橋から下流側を見れば、広い河原に多くのラフティングボートがこれから出発しようとしている。橋の名前のとおりここは緩やかな流れが続き、ボートの出発地点として最適のようだ。

image3 03.ラフティングボートの出発

大田口駅を対岸に見やり大田川が合流する集落の道路際に、大きな石造り樽と地元の篤志家を頌徳する記念碑がドンと建っている。酒造で財をなした篤志家がこの川を渡る「薬師橋」の建設に多額の寄付をし、大田川沿いに私道を建設し。これが林道建設の引き金になったとある。かつては個人も公共事業に深く係わっていたようだ。碑文にはあの橋本知事の名前が載っていた。

裏手のきつい坂道を登って行けば日本三大薬師の薬師堂が有り、お堂は国宝に指定されているようだが、先を急ぐので道草は控えることにする。川はこの辺りで東西方向の流れになる。

image4 04.石の酒樽が付いた頌徳碑

やがて本流に「穴内川」が合流する地点が近づき、なんと川側の桟道の歩道の始まりの所にベンチが有る。丁度お昼なので川を見下ろすこの絶好の場所でお握り休憩とする。歴代ベスト昼食場所である。

image5 05.この絶景の場所で昼食

国道32号も土讃線もここで本流に袂を分かち、本流の南側を流れる穴内川に付き合って行く。列車はこの合流地点の南岸をトンネルで抜け、川が合流しているのが見えないので、穴内川を吉野川本流と思ってしまう。

合流点に架かる国道の「吉野川橋」を調べるため河原に降り、合流点を暫し見つめる。ここまで120キロ余りには鉄道が有ったが、これから先は鉄道も無く過疎地域の未知の領域である。

image6 06.本流(右)と穴内川(左)の合流点

橋の北側の袂から県道262号線に入る。すぐの古い大きなトラス橋は後年歩道として使用されていたようだが、最近これも叶わず通行禁止になっている。解体もされず錆びた橋体を見るのは忍びない。県道は車1台がようやく通れる狭い道で、これがかつての吉野川最上流部に通じる道であったとは信じられない。

image7  07.この橋は最近定年引退したようだ

image8 08.この狭い県道がかつての幹線道路だった

交通のメイン路から外れた川の谷間の底は広くなり、今までは見られなかった田圃も見受けられる。県道脇の民家の敷地には大きく華やかな花が咲き誇り、目線は川面から色とりどりの花に向かう。「川より花」である。

image9  09.鮮やかな芍薬が満開

image10 10.続いて牡丹とツツジが競演

これまで屈曲の少なかった吉野川も、東西の方向に流れを変えてからは屈曲が多く、激しくなっている。本流に合流する川と沢が現れると県道は本流沿いから合流する川の方に向かい、短い橋で支流を渡り再び本流に戻ることを繰り返す。地図上の直線距離の5割増しの道の長さを歩く。

やがて比較的大きな北からの支流「立川川」の谷間から高知道が姿を現す。ここの地名は「川口」、川と川が出合う場所の地名は「落合」「出合」とここ「川口」が多く至る所に有る。高知自動車道は吉野川本流の狭く急峻な谷間を避け、南北に流れる支流の谷間の中腹とそれぞれの支流の分水嶺を長いトンネルで抜けている。多くの長大トンネルの連続で2車線の長い運転は辛く疲れたものだ。どうやら4車線拡幅が進んだようで楽になっただろう。

image11 11.高知道も4車線になった

高速道の吉野川橋の傍らの県道5号線の川口大橋を渡り最近完成されたトンネルを抜け川口南に開けた集落にやって来る。本流の遡行はここまでとし、山一つ先の大杉駅方向に向かう。久しぶりのスーパーに立ち寄り高知らしい飲食物を買い込む。国道439号の坂道を登ると直ぐに高知道の大豊インターが現れる。トンネルの合間のほんの一瞬の空間に作ったインターである。直ぐに本流と穴内川の間の山をくり抜いた新高須トンネルに入る。トンネルを出ると穴内川に面した高須の集落、大豊町役場などが連なる。

国道脇には、最近話題になっている県知事が新聞記者役をし、女優が王女役をしてスクータに乗っているその名も「リョーマの休日」の幟がはためいている。御丁寧に「志国高知」と、のたまわっている。香川県は「うどん県」を売りだし、高松駅のサブ駅名にもなっている。さあー徳島、愛媛はどうする?

image12 12.リョーマの休日に知事も出演

帰りの列車まで小1時間余りあるので1キロ程先の杉地区にある「日本一の大杉」に向かう。かつてこの駅を特急で通過する度に目にした大杉の看板が気にかかっていたのがこれで解消する。

長い階段を登り、神社の入口で施設整備費の名目の入場料200円を支払い境内に入る。階段の下からそれらしき杉の木の先が見えていたのが本人達夫婦杉である。八坂神社の境内の南側に大きく2本に別れた巨杉が聳えている。二本の杉は根元で合体していることから夫婦杉と言われている。胴回りが日本一らしく、樹齢3千年。樹齢では屋久杉には敵わないが、それでも神話の時代から生きている。

階段を降りて駅に向かうと小雨がぱらぱらと降ってくる。これでは明朝の金環日食も危うい。

image13  13.日本一の大杉入口

image14 14.杉の大杉は幹回りが日本一の太さ

image15  15.根元は1本の杉

image16 16.大杉は八坂神社の境内にある

駅には売店もあり、これもかねてから気になっていた「碁石茶」が有ったので奮発して買い求める。売店兼切符売り場の男性と吉野川のこと、大豊のこと、JR四国のこと等を話して列車を待つ。先日と同じダイヤの列車に乗ると今日は10名程度の入り。せめて日曜日ぐらいはこうでなくっちゃー!

次回からは今までの遡行で最高に困難な地域に入ることになるので、じっくりと計画を立てなくてはならない。

image17  17.土讃線大杉駅には大杉の案内がドーンと

今日の歩行距離:21.0km。調査した橋の数:7。

累計歩行距離:1,680.6km。累計調査橋数:2,192。

使用した1/25,000地形図:「東土居」(高知2号-3)、「杉」(高知6号-1)