愛媛-9.重信川(その2平成25年2月9日(土)晴れ

 

朝7時15分にホテルを飛び出し遡行に出る。今日は土曜日で最上流部のバス停からの便は2本しかなく、昼前の便を逃すと夕方の便になるので早く出発する。昨日の長い歩きの疲れが足に残っているがレッツゴー。

ホテルの直ぐ南には愛媛大学病院の大きな病棟が聳えている。昨日の県道からは見えなかった伊予鉄横河原駅に立ち寄る。駅舎は鄙びた味わいのある姿である。県道に戻る手前の狭い道の十字路の片隅に石碑が有り、右:金比羅宮と記されている。西条の旧道で見かけた金比羅街道がここにも有る。

 

 01.鄙びた横河原駅舎

 02.ここにも金比羅宮の標識が有った

 

昨夕通過した水天宮にも立ち寄っていく。名前からして重信川との係わりが有りそうなので底冷えのする境内に降りていく。境内の入口に水天宮の由緒書きが有り、読んでいくと勘は当たりピンポーン。松前城主であった加藤嘉明が今の松山城を築城するにあたり、当時は暴れ川であった伊予川(今の重信川)の改修を足立重信に命じ、この地に久留米の水天宮を勧請し起工式を行い工事は見事に完成した。改修に伴い20万石もの米が作られ、これも水天宮のお蔭と今の神社が建てられ、工事の殊勲者の名前も川名に取り入れられたとある。人の名の入った川は珍しい。重信は土木技術者の鑑となり、長くその名は川名に残された。

 

 03.水天宮の由緒が書いてある

 04.拝殿前の両脇には狛犬ならぬ水桶が

 

横河原橋に着き遡行を再開する。国道11号の新横河原橋の北側に瀟洒な建物が有り、近づくと「国土交通省四国地方整備局四国山地砂防工事事務所重信川砂防出張所」と長―い組織名が掲げられている。先日の祖谷川の砂防堰堤もここの堰堤もこの組織が作り管理しているようだ。それにしても出張所なのになんとも立派な建物だ。河川関係は建物にお金を使いすぎているようだ。昨日は雲に隠れていた石鎚山が逆光の中うっすらとその特異な姿を見せてくれている。東から見るのは初めてである。

 

 05.砂防事務所の出張所が有った

 06.朝陽の先に石鎚山が見える

 

扇状地のややきつい坂道を歩いていくと砂防堰堤が切れ目なく続いている。一体いくつ堰堤が有るのだろうか?先人の知恵と努力を無にしないよう今も水との戦いが続いている。昨日の風と小雪は止んだが放射冷却で今朝は冷え込みがきつく、ホテルを出た時の手元の温度計はマイナス3度であったが、道路に表示されている気温はマイナス1度となっている。

 

 

 07.砂防堰堤が続く

 08.気温はマイナス1度と冷え込む

 

県道162号は大型ダンプがひっきりなしに通り、砕石を積んで上流から降りてくる。まるでダンプ専用街道である。

山之内の除(よけ)に来ると県道横に大きな石碑と解説板が有る。眼前にある大きな砂防堰堤は昭和10年に完成された物で、瀬戸内の島から運ばれた岩を積み上げて出来たとある。確かに多くの岩が規則正しく積み上げられ、交通事情の余り良くない時代に海からよくぞ此処まで運んだものである。3km先の岡地区にもあった堰堤は昭和27年完成のコンクリート製で、良く似た構造であるが戦前製の方が良く見え、除の勝ちである。

 

 09.昭和10年に完成した堰堤の解説板

 10.石造りの堰堤は有形文化財

 11.こちらは昭和27年完成のコンクリート製

 

岡の北側の山腹に巨大な採石場が現れる。山の中腹まで採石場の赤茶けた岩肌が見える。右奥には明神ケ森(H=1,216m)も山頂に雪を頂き顔を見せている。採石場の真近まで来るともう一つの採石場が左の山の奥にあるようで、そちらの方からくだんのダンプが出てくる。

 12.巨大な採石場が目につく

 

県道と川はここで東からの流れに変わり、谷間も狭くなってくる。神子野のバス停の待合所は壁が剝がれ風雪に耐え耐え建っている。終点の木地までは平日は6本もバスが登っていくが、まとまった集落も無い渓谷によくも6本も有るものだ。中山川の遡行時に乗った海上といい伊予鉄バスは路線維持に熱心である。

 13.味わいのある神子野バス停

 

県道が右岸から左岸に渡る山影になる藤之内橋には昨夜降った雪が薄く積もり、処女雪の上を歩いて行くと先入者の足跡が有る。どうやらきつねの足跡のようである。50mほど登る急こう配の道を重い足を引きずって登ると間もなく木地の入口に架かる素朴な橋を渡る。川幅は極端に狭くなり、高欄も無い一見木橋のように見える狭い橋を渡る。これでも県道でバスも通る橋である。直ぐに3本の川が集まる木地に到着する。

 

 

 14.歩いたのは自分と狐か

 15.これでも県道ですぞ

 16.木地バス停は目立つ

 

主流はこの先の市境を越え、東三方ケ森(H=1,232m)の東山腹から流れてくる。バス停に到着と同時にバスが下からやって来て直ぐに発車する。滑り込みセーフである。

横河原から電車のかぶりつきの席に座り帰路につく。松山駅に「本日道後温泉、松山満室」と断りのビラが掲示されている。3連休の土曜日で温泉ブームに沸いている。

本日の歩行距離:13.0km。調査した橋の数:8。

総歩行距離:5,586.9km。総調査橋数:9,028。

使用した1/25,00地形図:「伊予川内」(松山2号-1)、「東三方ケ森」(松山1号-2)