愛媛-2.加茂川(その1)平成241016日(火)快晴

今日は10月16日。西条の三つの神社がリレー形式で祭礼を行う西条祭りのメーンの伊曽乃神社のお祭りの日と知り、急遽石鎚山の北面から流れ出る「加茂川」の歩きに出かける。

坂出で一旦下車し、JR四国ジョイフルクラブの割引切符を買い高松からの「特急いしづち」に乗車。宇多津で岡山からのしおかぜを後ろに連結し松山に向かう。何度か下車したことのある伊予西条駅に9時08分に着く。ホームに有るうちぬき水を飲むが、ここのはいまいちである。「うちぬき」とは石鎚山系に降った雨水が、長い時間をかけて麓の西条の地下に流れ、地表からパイプを打ち込むと何所からでも地下水が溢れてくる泉で、全国的にも珍しい街中の泉である。西日本一の高峰が至近距離にあるのでこの現象が生じるのであろう。

 01.西条名物うちぬき水がホームに噴出

 

駅の直ぐ東には元国鉄総裁であった十河信二記念館と四国鉄道文化館が有る。大きな倉庫のような文化館には、0系新幹線とDF50ディーゼル機関車が展示されている。四国に新幹線とは不思議かも知れないが、西条市の市長もしたことのある十河総裁が新幹線建設をリードしてきた功績を記念して、この地にやって来たのだろう。

 

 02.四国の鉄道文化会館は倉庫か?

 03.中には0系新幹線とDF50が

 

駅前ではお祭りに合わせてテントが立ち並び、観光案内所と物産販売店が有る。案内所でダンジリが今どこにいるかと尋ねたら、西条高校の前で固まって休憩しているとのことで、河口に向かうバスに乗るのは止めて、市の中心部の高校の方に足の方向を変える。せっかくの機会なので有名な西条の最上の山車類を見なくっちゃ。途中で見つけたマンホールには市の鳥であるカワセミが二羽点対称に描かれている。点対称の図柄は珍しい。街中にもうちぬきがあり、道路の車道と歩道の境にも有り、水が飲めるようになっている。

 

 04.西条市は市の鳥カワセミが点対称に

 05.街中至る所にうちぬきが

 

太鼓の鳴り響く方向に向かうと、大勢の人だかりが見え西条城址の前の道路にやや小さめのだんじりが一列に並んでいる。その数なんと77台!それぞれのだんじりは綺麗に着飾られ誇らしげに並んでいる。何れが菖蒲かカキツバタの感じである。地元ではだんじりと称しているが、大勢の引手が綱を引くタイプでは無く、かつぎ山車である。1台が1トン近くもある山車を77台も担ぐ人がいるのはすごい。城址内にある西条高校への道では2台の御輿が黄金色を輝かしながらゆらゆらと揺れながらゆっくりと動いている。こちらの方は一輪の引き車タイプであるが、地元では御輿と言っており、名前が一般の謂い方と逆転している。これだけの規模の町で3つの神社の祭りが同時期に行われるのはすごい。隣の新居浜市でも太鼓台と言う山車が廻る祭りが行われており、香川の観音寺、豊浜の太鼓台と合わせ、響灘沿岸ではよく似た祭りが競争しているかのように行われている。日本が誇る地方文化の代表格である。

 

 06.77台のだんじりが勢揃い!

 07.金色の御輿がゆらゆらと揺れる

 

 

 08.西条城址の西条高校前での御輿

 09.各町が自慢のだんじりを着飾って見せている

 

人ごみをかき分けかき分け何とか抜け出して西の加茂川の河口に向かう。愛媛県が建設したかつての有料道路である、新居浜から東予までの産業道路の歩道を歩く。6車線あった道路が2車線に狭まると長―い新加茂川大橋を渡る。全長28km余りの幕下級の川にしては河口部の幅は3役級である。右岸の堤防の上には肱川で見かけた地元の人たちがこの川を護っているPR板が建っている。

 

 

 10.ここ加茂川でも民間組織が川を護っている

 11.河口の新加茂川大橋は長―い

 

トラックが行き交う狭い歩道を歩き、南の方の山を注視するが西日本一の高峰、石鎚山(H=1,982m)は薄雲に覆われ見えない。天気が下り坂になってきているようだ。晩秋から冬にかけてはこの位置からは良く見えるはずであるが、今日は前仏だけで御本尊はお隠れされている。

 

 12.前仏の奥の御本尊の石鎚山は雲にお隠れ

長―いプロローグを終え加茂川の左岸に渡り堤防の上の道を川上に向かって歩く。直ぐに西条祭りのもう一つの神社である「嘉母神社」の鳥居が堤防の上に建っている。川側にも石柱が立ち、川から参拝するのが本来の神社なのかな。こちらのお祭りは9日、10日に実施された。土手の階段には石鎚山に有った大鎖が繋がれ、ここで二度のお役目となっている。20年ほど前に登った時にお世話になった鎖かも知れない。

 

 13.嘉母神社は川から参拝するようになっている

 14.土手から神社への階段には石鎚山の鎖が

 

市道の水都橋の袂の親柱には河原に集まっただんじりと最上部には石鎚山が透かし絵で鎮座し、反対側には市の鳥かわせみが有る。

 

 15.水都橋の親柱には河原に集うだんじりと石鎚山が

 

 

予讃線のトラス橋を潜り、国道11号の加茂川橋の歩道の中ほどのバルコニーに何かが見えるので橋の中ほどまで近寄る。広い河原を見下ろす位置に先ほど見ただんじりの大きな模型が居座っている。夕方には目の前の右岸側の河原に全てのだんじりが集まり、提灯に火をともすのが祭りのクライマックスとなる。この燈火の灯っただんじりを見る観光客のための広―い駐車場が枯れ川となった河原に用意され、交通整理をする大勢のガードマンが打ち合わせをしている。

 

 16.国道11号の加茂川橋の真ん中にはだんじりの模型が

 17.水の無い広―い河原は今日は駐車場に

 

橋の袂から国道194号が始まり、左岸側の国道を今日は「イクナ」では無く「イクヨ」。暫く歩くと「伊曽の橋」なる名前の歩道橋が現れ、この橋が市街地と神社を結ぶ橋のようで、橋の反対側に参道が続き、ここまで来て今日の主役の神社を素通りするのは失礼なので足を神社の方に向ける。磯野では無く伊曽之と書く神社の鳥居は神明様式の大きいが簡素な物で、低い丘の上に参道が続く。さすが77台のだんじりが集結する神社の格式と雰囲気が感じられる。

 18.今日の主役の伊曽之神社に立ち寄る

 

再び国道194号に合流し、船形橋を過ぎ、国道が加茂川を渡る中野大橋付近からは下流部からいきなりの上流部の雰囲気の山峡部に入る。予定ではまだ10kmほど先まで歩き3時半ごろのバスで帰路につく予定であったが、祭りに立ち寄り歩行距離も12km程度となり、まもなく1本前の12時45分発のバスもあるのでここを今日の折返し点とする。東予地域をテリトリーとする「せとうちバス」がやって来た。今治と越知諸島(大三島、伯方島、大島など)で何度か乗ったバスで懐かしい。

 

 19.ここから山峡部に入る(奥の橋は松山道)

 20.久しぶりのせとうちバスに乗る

 

バスの中で遅い昼のお握りを食べ、西条駅前で下車する。丁度街中を練り歩いている御輿が1台駅前で休憩している。至近距離で御輿を観察する。1輪車の前後に太い棒がつけられ、これを上下に揺することで独特の動きが生じる。これを御輿と言うのはどう見ても合点がいかない。

 21.駅前で休憩していた御輿

 

坂出駅まで戻ると反対側のホームにあの「フリーゲージトレイン」が停車している!何度か列車から擦れ違う姿を見て来たが、全貌を見るのは今日が初めてである。この電車は、新幹線(標準軌)と在来線(狭軌)のどちらもそのまま走行できる画期的な電車で、既に新在両線での走行試験を終え現在は予讃線で耐久走行試験を実施している。工事中の長崎新幹線での使用が考えられている。車両の鍵になる台車を暫し見とれる。狭軌走行中なので車輪と軸上との間に隙間が有るのが見て取れる。今日は祭りとフリーゲージトレインと珍しい物が二つも見れた。

 

 22.坂出駅に停車していたフリーゲージトレイン

 23.この台車の車輪と軸受との空間がミソ

 

今日の歩行距離:12.7km。調査した橋の数:10。

総歩行距離:5,149.9km。総調査橋数:8,506。

使用した1/25,000地形図:「西条北部」(高知13号-1)、「西条」(高知13号-2)