日本あちこち河川遡行記(第175回)       

徳島-3. 勝浦川(その1)平成25年11月1日(金)晴

 

秋は天候に恵まれ絶好の遡行日和。行くなら今でしょ!今日も坂出駅で途中下車し割引切符を購入し徳島に向かう。徳島県3番目の大河である勝浦川を目指す。駅前のバス乗り場に向かい、今日は小松島市営バスに乗車。今や希少価値の市営バスである。河口近くの勝浦浜橋の袂の新浜で下車し橋を渡る。

 01.小松島市営バスで新浜下車

 

延長50km弱の川にしては河口の幅は広く、橋も長い。川は前頭級であるが河口部は3役級である。臨海道路の役割を持っている橋を通る県道120号は交通量が多く、今日も渋滞が続いている。先に完成した上流部の北行きの橋と後から完成した南行きの橋と二つの橋が平行している。橋を診るのも時間がかかる。南岸から左岸の堤防の上の自転車道を上流に向かう。川は直ぐに西からの流れが南からの流れに大きく曲がる。先日歩いた園瀬川は西から流れてきたが、勝浦川は南からの流れである。北の方を見れば徳島に西から突き出たような眉山が見える。眉山は徳島のどこからでも見える、盛岡の岩木山のような山である。

 

 02.河口は大河川の雰囲気

 03.眉山が彼方に見える

1車線の自動車道と並んだ自転車道を心地よく進むと、長い長い潜水橋が現れる。更に進むと、手前に堰と再び潜水橋が見え、彼方には国道55号の勝浦川橋も見える。四万十川の沈下橋が有名になったが、ここ徳島には市街地近くに数多くの潜水橋が有る。雨量の多い徳島の川は増水時の流量が半端ではないので長年の経験から潜水橋が多くなったのであろう。

 

 04.長い長い潜水橋

 05.堰、潜水橋、国道橋が連なる

 

堰近くまで来ると快適な道が左からやって来た県道16号に吸収され、車に取り囲まれる。徳島市から小松島市に入り土手下の住宅の道にマンホールは無いかと見下ろすがなんも無いでがだ。歩道の無い県道は路肩も狭く、大型車が頻繁に通過する。大型車と出会うたびに立ち止まり道の端で通過をやり過ごすことを繰り返す。

 

 06.阿南・徳島自転車道を歩く

 07.自転車道は県道16号に吸収される

 

南の彼方を見れば大きく高い山の一団が見える。川の水面は狭まり、河川敷が広くなり道端には灌木が生い茂り水面が見えにくくなる。反対側の道端にお地蔵さんらしき石像が立っている。近づくとなんとお不動さんである。道端に不動明王とは珍しい。行き交う大型車に当方に変わって憤怒の形相をして睨んでくれている。

 

 

 08.彼方は高い山波が控える

 09.お地蔵さんと見まごうお不動さん

 

野上橋までやって来ると対岸(左岸)にも県道が有るのでこちらに避難する。道幅は狭くなったが行き交う車も少なくなり、命がけの道歩きから本来の遡行に戻る。下流の平野部が尽き中流の渓谷に入る寸前の山裾に加茂神社が鎮座している。土手下の神社の前には大きな楠の樹が二本立っている。神社には楠木がやはり良くお似合いである。丁度昼過ぎなので、土手から境内に降りる石段があるのでここに座り昼とする。先日は神社の青石のベンチ、今日は石段と神社での昼が続く。木陰と座る場所と言えば神社でしょ!昼食は先日と全く同じ高松駅で買った289円のお握り弁当で、タイムスリップで先日に戻ったような感じである。

 10.2本の楠木が迎えてくれる

 

野上橋を渡った所から再び徳島市となり、左岸側の県道212号を南に向かう。小さな川が合流する地点に「七釜の滝、100m先」と書かれた案内板が建っている。100m先に惹かれて小道に入る。直ぐに急な道となり分け進むと箱庭のような地形の先に七段に別れたミニ滝が現れる。小さな物を愛でる日本人ならの滝である。

 01.七釜の滝は箱庭風のミニ滝

 

時間が無いので直ぐに県道に戻り遡行再開。飯谷町までやって来ると神社と小学校とが同じ敷地に共存している。運動場の奥が神社である。狭い渓谷に学校を建てる敷地が無いので神社の軒先を借りたのであろう。これで良いんじゃ。

 02.小学校と神社が同じ敷地に

 

2車線分もある広い橋幅の沈下橋が学校の下に有る。桁部分は普通の沈下橋よりも高い位置にあり、多少の増水時でも渡れそうである。通学のことを考慮したのであろう。せっかくなので橋を渡り再びあの県道16号に戻る。

 

 03.2車線分の広さの潜水橋

 04.反対側から橋と学校を見る

 

県道の南下を続け少し坂道を登ると徳島市と勝浦町との境界となり、勝浦町の観光案内板が建っている。町の名物は川の鮎と蜜柑とある。ここまでの道に地元漁協の注意書きが多かったのは鮎が多いからなのだ。山に囲まれた所が勝浦とはそぐわない地名である。勝浦と言えば、和歌山と千葉の太平洋に面した所なのだが・・。阿波のここから東に出て、先ず紀伊にそして安房へと流れて行ったのかも知れない。阿波から安房へ。

ミニ峠から見る川面はやはり青緑色である。

 

 05.徳島市から勝浦町に入ると観光案内板が

 06.深く広い淵は青緑色

 

10km余りの渓谷が尽きる手前に山の上まで赤茶けた山肌が目立つ採石場が現れる。これが県道を数多くのダンプカーが往来させた張本人の一人だろう。緑色の川と無残な山肌の差が激しい。少し離れた所から極端な違いを写真に撮っておく。

 

 

 

 07.大規模な採石場が多くのダンプカーの原因

 

やがて渓谷が尽き広い地形が広がり、川も90度方向転換し南から西の流れとなる。左の小松島市の方からの県道22号が合流すると歩道が現れる。その先にはあのRコンビニも鎮座している。何という変わりようだ。疑問は直ぐに氷解する。県道22号の先には88ケ所の19番札所「立江寺」が有り、22号との交差点から暫く16号は次の20番札所「鶴林寺」への遍路道になっているのだ。お遍路さんに歩道は有るが遡行者に道は無い!

大きくカーブした川沿いの県道を進むと、久しぶりのまともな橋、「今山橋」と出会う。親柱には勝浦町名物の鮎と蜜柑がそれぞれ描かれている。

 

 08.今山橋の親柱は町の名物、鮎

 09.もう一方はこれも名物、蜜柑

 

県道の両側には民家と商店が並び、やはりお遍路さんの存在は大きい。丁度郵便局が現れ、今日から年賀状が発売されたので立ち寄り、徳島バージョンを見せてもらうと大鳴門橋が描かれていたので100枚購入する。色々なおまけとカウンターに牛蒡茶のミニボトルが有ったのでこれも付けてもらう。

直ぐ隣のJAでは名産の蜜柑が大小入り混じって山盛りで売られている。1キロ250円なのでビニール袋に目勘定で詰めて量るとぴたり1キロである。幼い時の腕は今も衰えてはいないぞ。ピタリ賞でおまけの蜜柑を足してもらう。

今日最後の橋、「勝浦中央橋」は県道から200mほど北に有るので道を曲がり進むと、蜜柑が鈴なりである。秋の日を浴びて黄色が輝いている。橋を診て戻ると直ぐに予定していた徳島行きのバスがやって来て乗車。今日も貸切状態で徳島に向かう。今日は得しました。

 

 10.一キロ250円の蜜柑を買って帰る

 11.鈴なりならぬ蜜柑なりだ

 

本日の歩行距離:16.2km。調査した橋の数:10。

総歩行距離:6,439.1km。総調査橋数:10,201。

使用した1/25,000地形図:「徳島」(徳島8号-4)、「立江」(剣山5号-3)