京都1-1. 木津川(その6)平成30年3月7日(水)晴のち曇り

この遡行記も7年前に書き始め今回で800回目となった。最近は逆遡行となったが良く続いたものだ。9年前に車を使わずに歩きながらの橋の現況調査を始め、車を使わないことのメリットの方が持つことよりも経済面、健康面、社会への寄与で勝ることが分かってきた。先日読み終えた京大の藤井聡教授の「クルマを捨ててこそ地方は蘇る」で学研的に同じ考えをされているのに共感を覚えた。昨春には自動車免許も返納した。自動車、スマホの蔓延の弊害は恐ろしい。
青春18切符を有効に利用するため木津川最後の遡行に出かける。大阪駅からの大和路快速は加茂行きでは無く奈良行きなので奈良で途中下車する。高架駅となったホームからコンコースに降りて来ると海外からのユーが大勢いる。東側の壁沿いに臨時の外人向けの案内ボックスが有り、ベテランの女性が次から次にやって来るユーを迎えている。反対側には奈良交通バスの案内所も有り奈良はやるなー!件の女性に聞くと、「前はあのバス会社の所に案内所が有ったのだがバス会社に取られてしまったのよ」。今は寒風吹きこむ場所での対応となり、クールジャパンのためお気張りやす。

01.JR奈良駅には大勢のユーが、臨時案内所も盛況

02.奈良交通バスもユーのための案内所を用意

かつての堂々たる駅舎は場所を変えて大きな観光案内所になっている。片隅にはスタバも入っている。加茂行きまで30分以上有るのでコーヒーラテで時間を過ごす。広い案内所には主に白人系のユー達が大勢やって来る。

03.旧奈良駅舎は観光案内所として再度のお勤め

再度ホームに上がり加茂で乗り継ぎ前回帰路についた大河原駅で下車。東京からの夜行急行「大和」や準急「かすが」などの優等列車が通過した駅の構内は広く、二本の線路の間には今は撤去された通過線のスペースも有る。跨線橋からは長いホームに1両だけの軽快気動車が哀れに見える。

04.さすが本線の大河原駅構内は広いが1両では・・

国道に出ると待望の歩道が有るぞ!しかし車は殆ど通らない。そうだバイパスの方を通っているのだ。車の来ない所に歩道が有り、大型車が多く通る道に歩道が無いとは逆やないか!
大河原大橋に向うと国道沿いに南山城村の役場が建っている。お茶の村と大きな壁でアピールしているが通過する車がいかんせん少ない。京都府最南東端の京都府唯一の村であるこの村は滋賀、三重、奈良の3県と接している珍しい村である。

05.やっと現れい出し歩道だが車は少ない

06.南山城村役場を通過

国道は大きく南に迫り出した狭い渓谷を嫌い鉄道ともども東北東からも支流「渋久川」沿いに方向を変えて逃げて行く。この川を県道83号で越え廻り込むと「大河原橋」が現れる。橋は昭和41年完成のごく普通の鋼3径間単純桁橋で50年以上が経過している。それにしては橋脚のコンクリートが滑らかな美しい状況である。多分近年補修をしたのであろう。
橋の上から右岸側を見れば土木遺産にもなっている「大河原発電所」が見える。大きな湾曲部の上流側の堰堤からトンネルで水が送られ22mの落差を利用して発電されている。湾曲部を上手く利用した発電所である。左岸側の橋際には発電所の解説板が立っている。ここから渓谷沿いの道は東海自然歩道にもなっており、湾曲部の上流で合流する「名張川」を堰き止めた「高山ダム」を経由して「月ヶ瀬口」に向かっている。この道を通って月ヶ瀬口に向かってもいいのだが、ダム前後の登り坂が嫌なのでここでUターンして来た道を大河原駅に向かう。

07.大河原大橋を上流側から見る

08.大河原発電所を橋から見る

09.案内施設がテンコ盛りヤー

1時間毎の列車に合わせて次の列車に乗り一駅先の「月ヶ瀬口」駅に向かう。
大河原駅から1駅の「月ヶ瀬口」駅で下車。月ヶ瀬とは風流な名前の地名である。月ヶ瀬と言えば関西屈指の梅の名所で、木津川の二次支流の「名張川」の渓谷の北側に有り今は奈良市となった奈良県月ヶ瀬村に有る。ここ月ヶ瀬口駅は京都府南山城村にあり、他県の村の入口となっている。心の広い駅どすなー!関西本線の線路は駅前後の丘から下ってきた凹部にあり、厳しい地形の木津川渓谷を嫌って山側を上り下りしている。

10.次の月ヶ瀬口駅で下車

11.月ヶ瀬梅園は関西では超有名だった

堰堤上のホームから駅前に出て来ると「相楽東部広域バス」と三重交通バスが並んでいる。相楽バスは相楽郡の3町村が共同事業として運行しているコミバスのようだ。ナンバープレートを見るとなんと三重だ。後ろの三重交通バスは観梅の期間だけ京都府の駅から奈良県の梅園まで臨時に運行している三重県の路線バスである。なんだここは!府県の壁なんて有りませんぞ。この辺りは木津川と名張川が狭い渓谷を形成し、平地の少ない地形で直ぐ東の伊賀盆地に集落が多いことから伊賀との結びつきが強いのだろう。

12.ここは京都府だが三重ナンバーのコミバスと三重交通バスが居るじゃん

13.梅の開花期には三重交通が臨時バスを京都府から奈良県に

駅から川に向かっての下り道を南に向かう。この道も東海自然歩道の一部で道の曲がり角には自然歩道の地図が有る。交通規制された道を下ると切土法面で法面安定のためのPC鋼棒による補強工事をしている。長い鋼棒を穿孔された穴に特殊工具で挿入する作業をしている。この段階の作業は初めてなので暫し見学させてもらう。

14.両駅の間で南から「名張川」が合流している

15.現場打ち法枠工にPC鋼棒を挿入中

直ぐに府道753号が南に渡る「笹瀬橋」に着く。大河原からここまで橋の無い橋希薄地域である。橋は3径間下路トラス橋で昭和30年完成の古い橋である。親柱を見ると川名が「伊賀川」となっている。ここから上流は伊賀なので伊賀川と言っていたのだ。川の両側はどちらも京都府だが川の上流500mほど先は1kmほど三重県との府県境が川の中にあり、その先は三重県である。この辺りは京都、滋賀、奈良、三重の4府県が踵を接し、4kmほど北は滋賀、京都、三重の3府県の分岐点に、6kmほど南東部は京都、奈良、三重の3府県の分岐点が有る。滋賀と奈良の間に京都と三重が割り込んだ形で、岡山と島根の間に鳥取と広島が割り込んだ形に良く似ている。
橋の上から東を見ると正面の小山は三重県である。東海地方まで足を広げる気は無いので木津川は淀から48km余りのここまでとして駅に戻る。

16.「笹瀬橋」は下路トラス橋

17.「笹瀬橋」の親柱には「伊賀川」の川名が

18.正面の小山は伊賀国(三重県)だ

堰堤上のホームからは北側の景色が良く見える。国道163号が東側の低い山波に登っている。彼方の凸部には「三重県」と書かれた案内標識がかすかに見える。伊賀と甲賀(滋賀県)との境は600m~700mの山の稜線ではっきりとしているが、山城と伊賀、大和の境は地形的には不自然である。

19.国道163号は東の丘で三重県に入る

20分ほど待ち加茂行きに乗る。相変わらず入りは良い。加茂駅の留置線にはポスターで見た「山城列茶」のホンマモンが足を休めていた。もうこれらの列車に会うことは無いだろう。

20.山城「列茶」が居るぞ!

本日の歩行距離:5.3km。調査した橋の数:2。
総歩行距離:9,843.5km。総調査橋数:11,881。
使用した1/25,000地形図:「笠置山」(京都及大阪4号-1)、「島ヶ原」(名古屋16号-3)