高知-15.奈半利川(その1)前半 平成29年4月9日(日)晴れ一時曇り

今日は日曜日。木曜日から雨が降る日が続き、遡行対象の土佐は月、火曜日も雨の予想。行くなら今日でしょう!日曜日も運行しているコミバスは北川村営バスのみ。本来なら次の川は夜須川であるが、4つ飛ばしてバスで行ける「奈半利川」として南風1号に乗車。この奈半利川は高知県南東部最長の川である。土佐西部は四万十川と仁淀川という大関クラスの川が多くの支流をかき集めて土佐湾に注ぐため、10km以上の川が直接海に流れる川は少ないが南東部は前頭、十両クラスが数多く土佐湾に注いでおり、その中の筆頭が「奈半利川」である。今朝まで雨が降り気温は夏並みなので車窓から見る備讃瀬戸の島々は霞にけぶっている。瀬戸大橋建設中に海霧に悩ませられたのを想い出す。

 01.靄に煙る備讃瀬戸の島

土讃線の吉野川沿いの線路脇の桜が満開で特に大歩危駅前後の川沿いは秀逸である。来春のお花見はここにするか!
後免駅で土佐くろしお鉄道に乗るための1日乗り放題切符を購入する。目指す終点「奈半利」までの運賃が片道1,070円だがフリー切符は乗り放題で1,640円。これを使わない手はない。井原鉄道、智頭急行などの比較的距離の有る三セク鉄道ではこの手の切符を販売している。切符には20駅それぞれのマンガチックな駅キャラがぐるりと取り囲んでいる。上段の左端が後免駅でその右隣りが奈半利駅の女性駅員の「りこちゃん」である。駅員の帽子がダサく、今時こんな帽子の駅員は何処にもイナイヨ。列車はこの駅キャラを反時計廻りに進んで行く。

 02.後免から奈半利まで1,070円だが

 03.この切符なら820円になる

香南市から芸西村へのトンネルを越えてやって来ると低い松林と広く長い砂浜の先に太平洋が開ける。沿線唯一のビューポイントである。今日はここを売りにしたトロッコ列車も高知から運転される。

 04.沿線唯一のビューポイント

10時47分、終点奈半利に到着。約1時間の乗車である。1面1線の高架駅の先で線路は途切れている。3年前の同じ土佐くろしお鉄道の宿毛駅を想い出す。あちらは2面2線の終点駅であったがこちらは愛想なしの1線である。ホームと線路は簡素だが駅前広場と駅施設はなかなかの物である。広場には各種解説板が並び一通り見て行くと、かつてここ奈半利から奈半利川上流の魚梁瀬(やなせ)地区と西隣の「安田川」には日本最大級の森林鉄道が有ったことを知らせる掲示板が有る。森林鉄道と言えば木曽谷の上松、木曽福島が有名だが土佐にも大規模な森林鉄道が有ったのだ。

 05.線路はここまで、阿波は遠い

 06.高知県の南東部には多くの市町村が

 07.かつては奈半利川の上流まで森林鉄道が

りこちゃんに見送られて遡行出発進行!国道55号に出て高知方面に進むと直ぐに最初の橋となる土佐くろ鉄の鉄橋となる。国道橋の下に土手から降りると足元を蛇が横切り、ビックリするジャン。マムシでなくて良かった。

 08.奈半利は女性駅員、りこちゃん

 09.最初は土佐くろしお鉄道の鉄橋

左岸の土手路を上流に向かう。対岸に鉄道乗りつぶし時に立ち寄った田野町の日帰り温泉が見える。やがて森林鉄道の橋脚の一部が残っている地点を通過する。対岸側には線路跡らしい低い高架橋の残骸も見える。地形図にもそれらしき線が入っている。
1kmほど進むと突然土手が無くなり、道路も当然無くなる。仕方なくブロック積みの間の階段を下りレンゲに覆われた田圃の中を歩いて近くの道に向かう。

 10.森林鉄道の橋脚跡

 11.土手路が無くなりレンゲ咲く田を歩く

病院の裏を越えると楽しみにしていた桜の有る「鮎之瀬公園」に着く。3分咲きから5分咲きという状況で、南国土佐らしからぬ遅い桜である。本数も少なく樹勢も弱くこれではアキマヘン!狭い園内に黒御影石の「なはり小唄」なる石碑が有る。歌詞を読んで見ると奈半利川の全てが挿入されていそうだ。

 12.鮎乃瀬公園の桜は未だ五分咲き

 13.奈半利川の全てを織り込んだ歌碑が

そうそうに公園を通過し国道493号に出会う。直ぐに狭い奈半利町から広い「北川村」に入る。柚子とモネの庭と討幕の志士「中岡慎太郎」が北川村の自慢である。何とも奇妙な組み合わせである。直ぐに「モネの庭」に向かう道が山に向かって登って行く。とても立ち寄れる高さでは無い。

 14.奈半利町から北川村に入る

国道493号バイパスの跨道橋を潜ると野友インターが現れ「北川奈半利道路」の名称の標識が出ている。400番台国道にもバイパスができ名称まで付いているのだ。インターから先の野友地区の現道は1車線そこそこの狭い道で、上流部は川も道路も大きく曲がりくねっている。これを解消し橋とトンネルで谷間を串刺ししている。足元のマンホールにはこの辺りの名産の柚子が描かれている。阿波と土佐の南部の国境は柚子の大産地である。

 15.400番台国道にバイパスが

 16.北川村は柚子

集落に入ると狭い道の両側に家が並び村らしくない通りである。国道から狭い村道に入り川に架かる橋を見て国道に戻る。集落の外れ近くの国道から少し奥まった所に村役場が有った。今日は日曜日でお休みである。近くの車庫には村営バスが3台休んでいる。
国道に戻るとごく普通の民家に国交省四国山地砂防事務所の北川村詰所の大きな表札が掛かった建物の前を通る。砂防事務所は僻地、山地で仕事をする地味だが大事な現場機関である。まっこと広い地域を受け持っとるきに。

 17.役場は国道から奥に入った所に

 18.砂防事務所の詰所が有る

集落の外れで国道は「野友橋」で左岸側から右岸側に渡る。橋は1車線の狭い車道の横に後から歩道をくっ付けた構造である。橋の中央部にはこれも後からくっ付けた待避所が設けられている。交通量の増加と時間短縮のため先ずは待避所が、そして歩道が、更に自専道のバイパスが建設されてきた道路橋の歴史のような場所である。

 19.橋の真ん中に待避所が

久府付なる地区の国道と川の間には広い平地が広がる。バイパスは背後の山をトンネルで通過している。集落が過ぎるとここからが大屈曲部の始まりである。ここまで日が当たり汗も噴き出ていたが山の影に入り涼しくなる。渓谷の川沿いに進むとバイパスがトンネルから顔を出し水流豊かな川を渡り直ぐに又トンネルに入って行く。川は今朝までのまとまった雨でゴオーゴオーと流れている。「長山大橋」の下に来ると無塗装橋の肌が斑模様になって、パッチワークのように見える。国分川のバイパス橋も同じような状況だったが、高知県施行の無塗装橋は状況が良くない。これでよくもまあ竣工検査に合格したものだ。無塗装橋の表面が錆びそのものの色のものと紫色が入ったこげ茶色のものの2種類があるようで、最近は後者の橋が多い。

 20.水量豊かに流れて

 21.この県施行の国道橋も斑模様が

橋を潜ると山側の石積みの表面をコンクリートで覆う法面補強工事らしき所を通過する。事前防災工事である。川と国道が大きく曲がる先に本格的な発電所が見える。上流の魚梁瀬ダムから送られて来た水を利用した長山発電所である。

 22.石積みをコンクリートで覆う工事が

 23.本格的な発電所が現れる

北からの「西谷川」が合流する橋を渡ると、この川も水量豊かに流れている。橋際に国土地理院が設置した基本水準点の蓋が有る。地形図を見ると標高37.6mと標記されている。
対岸の長山集落に向かう吊橋がリニューアルされ、コンクリート製の塔がみすぼらしく見える。発電所は電源開発(株)が運営しており、多くの川で発電所を見て来たが電発は初めてである。最大出力37千KWの中規模発電所である。発電機は国道と地山の間の隙間に有るようで建物が無いので発電所らしくない構造である。

 24.国道脇に水準点が

 25.ケーブルも床も架け替えられた吊橋

 26.電源開発の長山発電所

大きく回り込むと再びバイパスがトンネルから顔を出しやはり無塗装橋でこちらにやって来る。長山地区から柏木地区に入る。あの「なはり小唄」の第三番の歌詞の通りの行動である。対岸の柏木集落に向かう村道は歩道付きの2車線、無塗装橋である。中岡慎太郎の故郷で、山裾には「中岡慎太郎館」も建ちここからも見える。橋名は「慎太郎橋」。親柱には慎太郎の写真風の像が。同じ慎太郎でも東京では無理だろうな。バイパス橋と同じ無塗装橋であるがこちらは見事な肌をしており美人肌である。県は村に負けてるきに。
国道のすぐ山側をバイパスが平行して通過しており、橋から見ると大規模な切土植生法面が広がる。植生が広がり上手くいっているようだ。ここまで村営バスのバス停標識が無かったが、橋際にバス停らしき小屋があるのでバスが来るまでの10分間、遅い昼を摂る。

 27.中岡慎太郎は橋名にも親柱にも

 28.この切土法面植生は大規模だ

 29.ここで昼を摂りバスを待つ

上流の小島からやって来た村営バスを貸切で乗車し、14時48分奈半利駅に着く。目の前のミニミニ道の駅のような物産館で物色し土産になるような物を物色する。エレベータで3階のホームに上がり快速高知行きに乗り帰路につく。

 30.貸切で奈半利駅に到着

本日の歩行距離:8.3km。調査した橋の数:10。
総歩行距離:9,432.9km。総調査橋数:11,415。
使用した1/25,000地形図:「奈半利」(剣山16号-3)