岡山2-1. 小田川(その1)平成27年5月17日(日)快晴

岡山の本流の遡行を全て終えたので三大河川の支流つぶしに取り掛かる。先ずは高梁川最初の大きな支流である「小田川」とする。この川は広島県南東部から流れ出し岡山県の南西部を東に流れ、広島県内33.2km、岡山県内42.3km合計75.5kmの長い大河である。
伯備線の清音駅で三セクの井原鉄道に乗り換える。3分の接続で直ぐに短い1両編成の気動車は発車する。井原鉄道はここ清音から広島県の福塩線の神辺までの路線であるが、JR伯備線の総社と福塩線の福山まで乗り入れる列車もある。総社に乗り入れるよりは倉敷に乗り入れた方が利便性が高いのであるが出来ないのだろうか?

 01.伯備線清音駅で井原鉄道に乗り換え

直ぐに高梁川を錆色の長いトラス橋で渡り次の「川辺宿」駅で下車する。この井原鉄道の路線はかつての山陽道を踏襲した物で、明治半ばまでは山陽の陸路の主人公だった地域を通る。
ホームの駅名板には探偵、金田一京助のイラストが描かれている。

 02.金田一京助のふるさと川辺宿で下車

 03.全線立体交差の井原鉄道の高架上の駅

2両編成用の短い高架橋の上の駅ホームから地上に降りると駅前広場に各種看板が出迎えてくれる。探偵と縁の有る場所を巡る案内絵地図がある。京助生みの親である推理小説家の横溝正史は神戸市生まれであるが戦時中にこの川辺に疎開し、多くの作品を創作した。年に一度金田一京助マニアがここに集まりお釜帽に袴姿の京助のいでたちで街中を巡る催しもある。京助が登場する作品の多くがここ岡山県を舞台にしており、もう一つの看板には作品の舞台位置が挿入されている。当方も若い時に京助物の全てを読破した時期が有る。推理とホラーが合体した探偵小説で、映画やテレビ向けである。

 04.駅前広場には金田一京助の足跡をたどる絵地図が

 05.岡山県は横溝正史作品の宝庫だ

駅の直ぐ南の小田川の土手に登り左岸側を東の合流部に向かう。800mほど進むと最初の橋が合流点近くに架かり、左側には広々とした河原が広がる本流が流れている。井原鉄道の周囲の景色をぶち壊した色の橋が本流を横断している。県道のこの橋の袂辺りが小田川のゼロキロなのだがポストが見当たらない。本流と支流のお互いの内側の土手が繋がった所が支流のゼロ点で、実際の水流はずーっと下流側で本流と一緒になる。

 06.本流の合流点近くの長―い鉄橋

 07.ゼロキロポストが見つからないのでこれで我慢

橋を診てUターンし来た道を上流に向かう。今日も快晴で気持ちよく歩ける。土手の上の道の両側は低い草と薄紫色の草花が延々と続いている。先日歩いた里見川で見つけた花であるが、ここでは半端でない長さで続いている。時折通過する車が速度を落とさずに通過していく。前回は橋を詳しく見るため橋毎に橋を渡るジグザグ歩きであったが今回は左岸側だけを歩く。

 08.土手の上の道の両側に薄紫の花が続く

北の彼方の「吉備真備」駅を眺めながら一定のペースで歩く。6つ目の橋となる「宮田橋」の親柱は、今は倉敷市に編入されてしまった旧:真備町名産の筍像である。筍と言えば山城、北九州の合馬(おうま)が有名であるが岡山県ではここ真備町がメジャーである。町の北側に横たわる丘は全て竹林で、地形図にも竹林の記号が並んでいる。

 09.真備町名産の筍が親柱に

川の左岸(北)側の広い河川敷には大きな樹が林のように密集している。本来河川敷は流れを阻害しないように管理していなければならないのに敢えて放置しているように見える。増水時に本流への影響を少なくするため、支流の流れを弱めるため放置しているのかもしれない。実際の合流点の手前の右岸側には規模は小さいが柳井原遊水地も有る。西の彼方の山の間からの流れを見るととても支流には見えず、香川県のどの川よりも大きな流れである。

 10.これでも支流なのだ

南北からの山が川に迫り出してきた所で川から少し離れていた井原鉄道と国道486号がお互い近接するようになる。土手歩きも飽きてきたので直ぐの国道を歩くことにする。「備中呉妹」駅を過ぎると国道は土手の上に上がり土手と平行して狭まった地形を抜ける。やがてここまで国管理であった小田川が県管理であることを示す境界標識が歩道の手摺の向こうに建っている。

 11.国道486号が土手に並ぶ

 12.ここが国と県の管理境界

国道は一旦土手から離れ、土手の上の道は舗装の無い自歩道となる。この方が車を心配することも無く、足にも優しい土手路である。谷間が一層狭まった所が旧真備町と矢掛町の町境である。吉備郡から川名の小田郡に入ることになる。

 13.県管理区間の土手は車は通れないので歩きやすい

 14.旧真備町から矢掛町に入る

国道の直ぐ北側の小道が旧山陽道らしく一里塚の石碑も立っている。ここまで国道に残るバス停には井笠バスの時刻表が残っており、今でも路線が有るのかと思っていたが福瀬橋の袂のバス停跡の時刻表には[ 路線廃止となりました ]との張り紙が貼られている。また路線バスの一つが無くなってまったー。

 15.小田川沿いの道が旧山陽道

 16.井笠バス路線は廃止された

土手の上の桜は若葉が茂りちっちゃなサクランボが赤い色になっている。鳥にとっては甘い御馳走だろう。
旧真備町には見つけられなかったマンオールが直ぐに現れる。図柄は大きな松の銘木が中央に入っている。真ん中の煉瓦積模様は何じゃろか?

 17.小さなサクランボが美味そう

 18.矢掛町は純和風

丁度お昼になった頃合いに国道沿いに藤棚とベンチの有るミニ公園があるので先ほど立ち寄ったコンビニで買ったミニサンドのお昼を摂る。10分ほど涼しい風が吹き抜ける藤棚の下で皐月を堪能する。
歩きを再開して間もなく今日の打ち止め点である三谷駅に向かう。こちらも高架橋駅で、高架下の建物には案内所と貸自転車も置いてある。担当は昼休みで居眠りの最中であった。この駅もミニ広場に観光案内図が建っている。

 19.三谷駅を折返し点とする

 20.三谷地区の観光絵地図案内

階段を上がりホームで暫し風に吹かれて列車の到着を待つ。20分ほど待ち13時05分発の単行ワンマンカーに乗り込む。途中の「吉備真備(きびのまきび)」駅のホームの駅名板には奈良時代の英才で郷土の誉、吉備真備が描かれている。町名は真備(まび)町であり、英才にあやかった町名であった。コンビニで買った純米吟醸酒の地酒の名前も吉備真備である。伯備線の方谷駅は全国のJR唯一の人の名前を使用した駅と紹介したが、この三セクでは堂々とフルネームで名前を駅名に使用している。岡山では東の和気で「和気清麻呂」、西がこの「吉備真備」と古代の英才を輩出している。

 21.奈良時代の英才の名前の駅だ

 22.こちらはコンビニで買った純米吟醸酒

本日の歩行距離:12.1km。再調査した橋の数:10。
総歩行距離:8,095.2km。総再調査橋数:592。
使用した1/25,000地形図:「箭田」(岡山及丸亀5号-1)、「矢掛」(岡山及丸亀5号-3)