兵庫8-2.羽束川(その1)平成24年12月29日(土)快晴

今日は年末の帰省ラッシュで、いつも利用する朝一番の姫路行きが18切符利用者で混雑するのが予想されるため、姫路までは新幹線こだまを利用する。姫路、尼崎と乗り変え9時半に三田駅に到着。駅南口の神姫バス案内所で久しぶりにバスカードのチャージをしておく。10時10分北口から出るバスは神姫では無く阪急田園バスである。ここから宝塚市の東部バス停までは三田市と宝塚市にまたがるため、それぞれの市域をテリトリーとしている両者が半分ずつ運行しているようだ。車内で阪急バスのカード「hanica」を購入する。カードの名称を考えるのも後発は大変だ。先発したイコカ、スゴカなどは秀逸である。

 01.三田駅北口から阪急田園バスに乗車

 02.阪急バスはハニカカード、下は神姫バスカード

15分余り乗車し、「羽束川」バス停で下車する。今日は武庫川最大の支流である「羽束川(はつかがわ」遡行の初日である。この川の本流との合流点の直ぐ上流に神戸市の水がめである干刈ダムが立ち、大きく細長い水源地が谷間を埋めている。湖畔の近くにはまともな道が無く、橋も無いので合流点から5km余り上流に有る池に架かる最初の橋から遡行を始めることにした。バス停から歩道の無い狭い県道68号を東に進むと直ぐに最初の橋「普明寺橋」が朱色の欄干が青い水面に映えて見えてくる。橋の際には近畿自然歩道の木柱が建っている。湖畔と西側の山を越えて道場駅までが自然歩道に指定されているようだが、地形図に示された破線の道は今まで何度も騙されてきたので極力歩かないようにしている。ダムは大正時代に建設され、代替の道などは補償する考えの無い時代で、遡行始まって以来初めて川沿いに道が無い。
橋を見た後県道に戻るが、歩道の無い狭い県道に竹藪の笹が路肩まではみ出し、これを避けるため車道に出て歩くがすれ違う車に冷や冷やしながら歩く。先日の有馬川の時といい、兵庫県の道路管理はまともに現地を見ているのか疑問である。

 03.干刈水源地に架かる橋からスタート

 04.歩道の無い県道に覆いかぶさる笹藪

下車したバス停の際の狭い山道に入って行くと、関西学園のキャンプ場との看板が建っている。この敷地内の路を歩いて行かないと2kmほど大回りとなるので、立ち入り禁止とも書いていないのを幸い山道を登る。地図に記載された路が無くなり、直ぐ上から聞こえてくる車の音を頼りに市道めがけて雨上がりの落ち葉の濡れた斜面をよじ登って行く。やっとの思いで市道にたどり着くと有刺鉄線の柵が行く手に有る。少し隙間の広い所を探し、四つん這いになり、有刺鉄線の間を忍び足、忍び手で潜り抜ける。汗と冷や汗がどっと噴き出てほっとする。これなら急がば廻れであった。
市道を北に向かい、坂を下ると伊丹市の野外施設が広がり、やっと水源地沿いの有刺柵も無くなり、川沿いの道と土手が現れる。今日は朝方の雨も止み無風快晴の絶好の遡行日和となった。青空の下北摂独特の立派な屋根を持った家々が映える。川は本来の姿を取り戻し、緩やかにサワサワと心地良い水音を聞かせてくれる。ちろちろ、ちょろちょろ、さわさわ、しゃわしゃわ、ざわざわ、ごうごう、滔々など日本語には川の流れを示す多くの擬音語、擬態語があるが、この水音はなんとも言葉に表しにくい音である。

 05.無風快晴の絶好の天気

 06.川はサワサワと流れる

土手の上の車の通らない路を真っ直ぐ北に快調に歩く。下里橋まで来ると川の向こうに此方を見つめているような目が目につく。人面魚ならぬ人面倉の換気用の穴とその上のひさしが目と眉に見える。これは傑作でカシャ。

 07.人面倉の目がこちらを見つめている

やがて川から少し離れた西側を走っていた県道37号が東側に移る高平橋に着くと、直ぐ近くのゲートボール場にベンチが有るのを発見。周りに桜が木陰を作り、トイレも備わった絶好の休憩場所である。今日は今年最後の遡行なので岡山駅ではりこんで購入した「豚トコTON」弁当を食べる。これはネーミングと言い、内容(焼き豚、ソテー、カツの3種類)と言い岡山駅一と思っている。次は「いいとこ鳥」かな。烏が近くの電柱のテッペンで「俺にも食わせろ」と鳴いているが、こちらはとことん食べ尽くすぞ。

 08.絶好の昼食場所のゲートボール場

 09.今日は岡山駅弁の「豚トコTON」だ

20分間といつもより長い休憩を終え遡行を再開する。烏は恨めしそうにこちらを見送っている。左岸側の土手から再び右岸側に移ると間もなく、川を挟んだ谷間の山裾に二つの神社が対峙したように見合っている。目と鼻の先に神社が有るのも珍しい。まるで源平の合戦のようである。西側の神社は「高売布神社」、東側は八幡神社と地図に書かれている。

 10.方や○○神社

 11.此方△△神社

300mから500mの狭い谷間が南北に長―く一直線に続き、田が広がる。川はこの間を悠然と流れている。狭い谷間に集落が切れ目なく続き、北摂独特の入母屋屋根の立派な家が目につく。通り過ぎた土手路を振り返ると、この別天地の谷間の入口の渓谷の西側にこの川の名前と対を成す「羽束山(H=524m)」が門番のように特異な姿で聳えている。谷間が広がると、東から低い山並みの彼方から支流が合流してくる。

 12.羽束山(H=524m)は尖っている

 13.低い山波の彼方から川が合流

柳の木の下に優れたデザイン、図柄の河川美化の柱が建っている。兵庫では珍しい運動である。たしかにこの川の水は綺麗で、神戸市が目を付けた川である。田中地区に入ると、これまで多くの立派な入母屋民家を見て来たがこれぞぴか一の黒一色のシックな屋根が迫ってくる。この谷間では入母屋屋根が大きさ、形、色、妻の紋章が覇を競っている。

 14.兵庫のここでも河川美化運動が

 15.この端正な屋根がぴか一だ

土手から谷間の西側の山裾の道を進むと南側の谷間の向こうにまるで山の字を形にしたような山が見える。地形図で読むと「大舟山(H=653m)」と有る。高千穂の峰をぐっと小さくしたような山容である。次の橋に向かうと橋の袂に大きな石灯籠が建ち、橋の名前は「燈籠橋」。山の名前とこの燈籠から推定すると、かつてはここまで舟が上がって来たのだろうと思う。

 16.この山「大舟山(H=653m)」から山の字が出来たのダ

 17.燈籠橋の袂に燈籠が有る

神姫バスが県道37号から西側を並行している県道309号に移る三舟橋の路面はひどい状況であるが、橋から見える大舟山は端正な姿を見せている。橋の直ぐ上流の土手にはここ小柿地区が川を守っているとの告知板が日に輝いている。播磨地区の川も真似をしてほしいな。

 18.三舟橋から見た大舟山は端正

 19.地元住民が川を守っている

バスの乗車時間が迫ってきたので残りの橋を急ぎ足で診ていく。最後の橋を終え小柿バス停に向かうと、今度は漫画チックな幼児の目のような目が現れる。今度はビックリしたような目である。バス時刻の5分程前に神姫バスの回転場に到着。直ぐ傍にあの屋根を持った民家があり、南側の見晴らしの良い景色が広がるバス停である。時刻通りに発車し三田駅に向かう。今年はこれまでにいたしとうございます。

 20.今度は幼児の目が見つめている

 21.神姫バス小柿バス回転場は環境抜群

本日の歩行距離:12.8km。調査した橋の数:22。
総歩行距離:5,443.9km。総調査橋数:8,905。
使用した1/25,000地形図:「武田尾」(京都及大阪11号-4)、「木津」(京都及大阪11号-3)